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トスカーナ・オリーブの夢 3

何かを、「つくる人」になりたい。

それが小さな頃からの憧れであり、魅力的に思える仕事(コト)だった。
勉強はしたくないけれど、大学へ行くのなら、そういう何かをつくる事に関わることを学びたいと思っていた。
気がつけば、促されるように、建築の道に進んでいた。
同じ、建築の仕事をしていた父ちゃんの、請け売りだった。
それでも、案外、楽しくて、素敵な仲間達に囲まれた学生時代は、私の人生の宝物といえる。

その後、大学を無事に卒業し、ゼネコンの設計部に身を置く。
毎日は忙しく、流れるように時が過ぎていった。
大きな仕事はやりがいもあったけれど、もっと、自分のスケールに近い縮尺の仕事をしたいと思うようになる。
思い切って辞めるのには勇気がいったが、あの時決意しなかったら、今も建築に携わっていたに違いない。
辞めた勢いで、イタリアに飛んできたのだった。
忙しくなったら、ゆっくり海外なんて来れないだろうと思ったから。

半年から1年。
気が済んだら帰ろうと思ったあの日から、もう20年が経とうとしている。

人生というのは、どこでどう、流れが変わるか分からない。
何かをつくりたい…思いは、胸のうちの奥底の方に、ポツンと取り残されたまま、
毎日は過ぎてゆく。

時が、コロナで覆われ、全てが停滞してしまったかのような、そんな中、
取り残されていた奥底から、ふと、湧き上がるものがあった。

何かをつくりたい。

「何か」が何なのか、わからないまま、
田舎暮らしに憧れ、オリーブに惹かれる。

思いは、それぞれが「点」であって、それが繋がるなんて思いもしない。
そんなある日、心の友から誘いがあった。

「田舎の売り出し物件、見に行かない???」


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