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手書きの効能

A 丁寧に書いた手書きメッセージ
B 走り書きの手書きメッセージ
C タイプされたメッセージ
の中で、受け取った相手に気持ちが伝わる順番は?

答えは、A、C、Bの順番です。これは以前にテレビのニュースで見たものです。どこかの大学の調査結果とか、そんなものだったと思います。これを見て「いつか社内研修に取り入れてみよう」と思い立ち、実験(笑)してみた時のお話をシェアいたします。

最後に勤めた会社で社員トレーニングを担当していました。会社は社歴の長い社員が多かったのですが、一方で、中途入社の人も毎年数名いました(私が在籍中の4年弱の間のことですが)。社歴が長い人たちの間では圧倒的な人間関係が出来上がっていたり「こんなものだよね」と慣れてしまっている独特のカルチャーやそこの職場の中での常識、のようなものが存在します。そんな目に見えない空気とか社風のようなものが、外から新しく来た人たちにとっては違和感の種になったりもします。そんなことが積み重り放置されると、せっかく苦労して採用した貴重な人材なのに「早期離脱」なんてことにもなりかねません。最近は新卒新入社員だけでなく、中途入社社員の職場への定着・リテンションも人事の重要課題のひとつ、なんですよね?

それで、私のいた職場でも入社1年以内の人を対象にフォローアップ研修をやりましょう、ということになりました。昔取った杵柄で、私が企画とファシリテーションを担当し、半日のワークショップを実施。そこで活用したのが冒頭の、手書きのメッセージ効果。

中途入社の場合、同じ日に入社ということはないのですが、同じ年度の人達を“同期”として括り、一緒に参加してもらいました。そうはいっても、すでに数か月一緒に仕事をしてきているのでお互い知っている同士の感もありつつ、アイスブレイク兼ねて改めて自己紹介をし、入社の動機とか、以前はどんな仕事をしてたの?なんて語ってもらいます。

それから社会人になってからの人生の振り返り、入社してみて感じたこと、違和感も含め正直ベースに、なんてテーマでグループごとに話し合いをしてもらうと「え、それを思っていたの、私だけじゃなかったんだ?!」と大いに盛り上がります。そういうガス抜き、もこの場の狙いのひとつなので。

半日なので、あっという間に時は過ぎるわけですが、そうやって短い時間の中でも日常業務からしばし離れ、いろいろ集中して語り合って(職場で寡黙な人、仕事上は話す機会が少ない人が雄弁になったりするのも面白い)リラックスしたところで、クライマックス! 参加者一人一人にサプライズのプレゼントを渡します。それは、直属上司からの手書きのメッセージカード。

これについては、以前の会社でもやったことはなかったので、いわば、私の実験でもありました(今だから言えますが…(笑))。結果は、予想を超える反響。参加者は20代後半から40代まで年齢はいろいろでしたが、男女問わず、もれなく、感動していました。中には涙ぐむ人までいたりして。「僕のこと、すごくよく理解してくれている!」と歓声を挙げた男性もいました。嬉しさのあまり、その場で他のメンバーに「ほら!」と公開する人もいれば、「こんな大事なもの見せられない!」とジャケットのポケットにしまい込む人もいて、そのお互いの反応にまた笑い合ったり。

この仕掛けは、サプライズにすることを死守。参加者には当日まで絶対にばれないように、上司にカードをこっそり渡し、研修前日までに確実に回収。肝心な中身については冒頭の手書きメッセージの効果を説明した上で「必ず手書き。メッセージの内容は、その人が入社してくれてよかったこと、助かっていること、貢献してくれていること、評価していることなど、ポジティブなことだけに絞って!」と申し渡しました。上司のみなさん、根が素直な良い人たちで、忠実に指示通りに書いてくれました。その結果、受け取った部下の人達の笑顔や涙、となりました。ちなみに、カードはしっかり封印されたものを回収しているので、事務局の私もメッセージの内容は見ていません。二人の間だけのこと、っていう親密な感じも良かったのかも(!?)。

協力してくれた上司の方々には、もちろん、受け取った人たちがどんなに喜んでいたかその場での反応を、きちんと報告しました。それを聞いた時のマネジャーの達の嬉しそうな様子に、私も嬉しかったです。

最近、家に居るので昼間に放送されている「徹子の部屋」をよく観るのですが、この番組でも時々、同じことをされています。ゲストの奥様や旦那様、あるいはお子さんに手書きのメッセージを書いてもらっておいて、サプライズで番組の中で渡すのです。ほとんどの方が感動されていますよね。

私は字が下手なのと、文章をたくさん書くので、パソコンの前はワープロを愛用していましたし、今も極力パソコンを使いたいほうです。それでも、会社員時代は、回覧文書のメモなどは、下手でも必ず手書きを心がけていました。字の下手さ加減で私からの回覧だと主張する、みたいな(笑)。

うちの娘はご近所に住んでいますが、たまに、わざわざ可愛い絵ハガキ(稀に自分でイラスト描いたり)に、聖書の御言葉を手書きして送ったりします。先日、彼女の家に行ったら、私の手描きイラストのハガキがパソコンの上に置いてありました。

どっぷりIT時代に生きているわたしたちですが、いえ、だからこそ、ますます人が手を掛けた、心をこめたものが、手書きのメッセージに限らず、喜ばれ貴ばれるのではないかしら、と思ったりします。

さて、あなたの手書きで、誰を喜ばせましょうか?

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