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回想散文1-6 いつも緊張しているこども


はっきりとした時期は覚えてないがこれも小2かそこらだったと思う。

手指に水泡のようなものができ、皮が剥けてしまうことがあった。特に痛かった記憶はないが親が心配し皮膚科に連れて行かれた。
その地元で評判のよかった初老の女医さんは母親に『恐らく汗疱(かんぽう)だ』と言った。
汗菅に汗がたまって炎症が起き水膨れができてしまう病気だが、その原因は諸説ありはっきりとはしていない。小さな子供は汗腺が細いので起きやすかったりもするらしい。ストレスが要因になるケースもあるためなのか、先生には
『この子はいつも緊張して生きてるんやね』と言われた。

あの先生は元気だろうか。インターネットで調べたら今は息子が後を継いでいるようだ。

子供なので先生のいうような『緊張』の自覚はなかった。

足先には今でも汗疱ができる事がある。あの時だけ手だったのは子供で汗腺が細かったせいなのか、自覚なき緊張が強い頃だったのか。
病院で出された青色のワセリン(調べたらただのワセリンではなくワセリンを基材にした治療薬のようだ)を手に塗って眠るのが私のルーチンに組み込まれた。


当時のわたしは今よりよっぽどきっちりとルーチンワークを決めてこなすタイプだった。


汗疱の時期はワセリンだったが、冬は冬で手が乾燥しやすかったのでケラチナミンクリームを塗り、母親のフェイスクリームをもらって頬に塗り、最後に夜用の白い手袋(100均で購入)をつけて保湿しながら就寝していた。
7歳そこらの子供がせっせとナイトルーティーンをこなす様は滑稽だったのだろう、母親に『入念やな』みたいな事を言われて揶揄われた記憶がうっすらとある。当時は当たり前じゃないかと思いムッとしていた。

潔癖症とまではいかないが手もしょっちゅう洗っていた気がする。また前髪が顔にかかるのがどうしても嫌で常にヘアバンドやカチューシャで上げており、はっきり言ってダサかったのだが周りになんと言われてもやめなかった。『あれ、前髪がある方がいいな』と自分で気づいたのは小5か6ごろで、アルバムを振り返って見るとその数年間なんでこんな髪型をしているのかと不思議に思う(それもあって子供の頃の写真が嫌いだ)。


つまりは強迫観念が強く視野の狭い子供だった。医者の言う『緊張』は当たっていたのだと思う。


ただ決めたルールをきちんとこなすことには生きづらさに付随して一種の達成感というか、喜びや安心感があった気もする。


(つづく)

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