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げげげの鬼太郎

  米子市の北にある境港は漫画家水木しげるの出身地だ。先月からJR境線米子駅には「霊」番ホームができ、境港まで行く境線についてTVやラジオのローカルニュースとして流れた。
このニュースは東京でも放映されたと教えてくださる方がおられ、少し驚いた。地元では、げげげの鬼太郎の話題は「あっ、そう」くらいにしか受け取られていない。けれども、話題にすぐとびつく私は、ピクニック気分で境線に乗りどんな町なのかを見ようと出かけていった。
 米子駅から16駅、乗車券は320円で購入。所要時間は40分。快速電車では20分ほどで米子-境港間を走るらしい。鬼太郎とその仲間のイラストがかかれた1両のワンマン電車、距離によって料金が変るが、途中乗ってくる人は学生かお年寄りでほとんど定期券利用者だった。ちなみに米子から境港まで車でいけば25分くらいだ。
といいつつ、白状すれば私は一度もげげげの鬼太郎の漫画を手にしたことがない。どうもあの「妖怪」というのが怖くて、苦手だから。境港まではほとんど無人駅だったが、終点の境港駅は近代的な建物で隠岐行きのフェリーの船着場もある。さっそく水木しげるロードを記念館まで歩く。道の両脇には2,3メートル間隔でオブジエ風の石に妖怪のブロンズ像が飾られている。私が聞き知っているのは「鬼太郎」「ねずみ男」「砂かけばばあ」などだが、妖怪がこんなに存在するのかと呆れるほど飾られている。ひとつひとつ丹念に見ながら歩くと、この先どうなるの?という変な気分になってくる。
 週末のこともあり、観光客がとても多い。それも若いカップルや赤ちゃんや幼児を伴う若い夫婦。皆楽しそうにブロンズ像を覗き込み、おしゃべりしあっている。店は軒並み鬼太郎グッズを売っている。土産物店だけではなく、酒屋や履物やパンや薬屋が、である。例えば薬屋には鬼太郎グッズの横に車酔い止めの薬=いっちゃあ悪いがもっと車酔いしそうだ。かと思うと酒屋ではねずみ男や鬼太郎のラベルがはられた地酒や地ビール。これまた一口飲めば妖怪のごとく酔うかい?なあんてダジャレを言いたくなる。そうそう「妖怪のお守り」も売られていた。いったい何から守ってもらうのだろう??
漁師町、水産加工業、日本海かに水揚げナンバーワンの境港が、この水木しげるロードでは妖怪の町に化けている。
 ふーーーむ、このような町おこしの企画をし実施決断をした市長さんは、凄いものだと感心した。ぶらぶら歩いて20分あまり、記念館に到着する頃には妖怪にも慣れてくるから不思議だ。考えてみれば今年の正月明けから、世界には多くの妖怪が出現した・・と思いつく。六本木とお台場にはホリ・・・、という妖怪。境港から船でいけば簡単に到着する北朝・・・のキ・・総書記という名の妖怪。そういえばどこぞの国の結婚したての皇太子様もよく見ればちょっと妖怪に似ていないか・・・企業協賛で次々に妖怪のブロンズ像を作り町中飾る構想だと聞くと、恐れ入ってしまう。やっと記念館に入るとここもまたとても賑わっていた。そして水木しげるご本人の等身大人形と向き合った。彼は大正11年生まれで戦争を体験し、漫画家として世に出たのは40代になってから。おどろおどろしい妖怪の世界を具現化した彼は(こういっては失礼だが)にこやかで明朗な感じのオジサマで「水木しげるワールド」と名づけた独自のスペースを創造していた。
 帰り道に家族の顔を思い出し、鬼太郎やねずみ男の顔の形をしたパンなどを買ってしまった「土産物買い妖怪」となった私を発見し、一人くすくすと笑いながら境線に乗り込んだ。
ゆうこの山陰便り No.12

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