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ミュンヘンでの暴行事件、そして発砲①

2017年6月13日(火)、この日は、私にとって忘れられない日となった。

私は質問家マツダミヒロさんに会うためにミュンヘンに向かった。
11日に偶然アメリカの知人より、ミヒロさんがドイツにいるということを知り、直接彼にコンタクトを取り、次の日には飛行機のチケットを購入していた。
ミヒロさんのことは、私のお世話になっている美容師さんから話を聞いたことがあったくらい。正直彼のことをよく知っているわけでもなかったが、どうしても行かなくてはという気持ちが膨れ上がった。

旅慣れている私だが、ドイツ国内をひとり旅するのは初めて。家族を置いてひとりで飛行機に乗って出かけることも初めてだった。

ミュンヘンでの9時の朝食会に間に合うように、朝3時半に起き、真っ暗な中空港に向かった。「ママなのにいいのかしら?」という罪悪感はあっとう間に消え、久々のひとり旅は思った以上にワクワクしていた。飛行機から見る朝の光が最高にきれいだった。

ミュンヘンに到着し、街に向かうために電車の駅に歩いていく。
すべてが時間通りでうまくいっていた。しかし、実際はそうではなかった。


8時04分 ミュンヘン国際空港からHerrschuing行きS8に乗車
空港から乗りこむ観光客たちが冗談を言ったりして、和やかな雰囲気が旅をますます楽しいものにしてくれていた。

8時17分 38歳ドイツ人男性がIsmaningより乗車
同じコンパートメントの斜め前に座った彼は、イヤホンで何かを聞いていた。ローカル風の彼に、行き先確認のために話かけようかと思ったが、イヤホンをしていたので聞くのをやめた。

8時18~19分 背後から突然男性が現れ、目の前のドイツ人男性を暴行
話かけるのをやめたのと同時くらいに、私の後ろから男性が現れ、瞬く間に目の前のドイツ人男性は顔を殴られ、蹴られ、血まみれになっていた。
イヤホンを聞いていたので、向かってきた男性に気づきもしなかったのであろう。まったくの無防備だった彼は、訳がわからないまま、サンドバッグ状態。今までにもケンカを目撃したことはあったが、あんなに力強く、誰かがひたすら暴行を受けているのを見るのは初めてだった。
私はとにかく、その場から逃げることを選択した。少し体がふれて怖かったが、進行方向左側のドア前に逃げることができた。

のどかだった車内が、一瞬にして緊迫した空気に包まれた。

「とめに入れ!」と叫ぶ人、「警察に電話しろ!」という声も聞こえた。
ケンカをとめに入った人が男性に「何か問題があるのですか?」「突然人を殴ったりしてどういうことですか?」と犯人に英語で話しかけていた。

同じころ、私の隣にいた女性が、警察に電話をかけていた。

犯人は被害者と引き離され、ケンカをとめに入った男性の横に立っていた。
暴行を受けた男性は、血だらけのまま放心状態だった。

8時21分 電車は次の駅Unterföhringに停車
警察の到着を私たちは待っていた。
しばらくして、2人の警官がやって来た。犯人と暴行を受けた男性はホームに降ろされ、男性警官が事情聴取をしていた。女性警官は、私と被害者が座っていた現場を検証していた。

ケンカをとめに入った男性が、犯人のポケットからこぼれ落ちた小銭をホームに持っていったりしていた。

15分ほどで警察の車内での調べも終わり、私たちを乗せた電車はミュンヘン市街に向けて出発した。
ゆっくりと走りだす電車の窓越しに眺めていた、警察に電話をした女性と女性警官の姿は今でも覚えている。
恐怖で張り詰めていた空気は緩み、乗客の誰もが安堵に満ちていた。

しかしこの事件、これが終わりではなかった。
事件の始まりにすぎなかったのだ。
ミュンヘン市街に向かう私たちには、その後ホームで巻き起こる恐ろしい事件が待っていたことなんて知る由もなかった… (続く)

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