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「美白」をめぐって

黒人差別を糾弾するBLM運動と共に注目されている「美白」の概念についての記事を読んだ。

https://digital.asahi.com/articles/DA3S14598625.html?iref=com_rnavi_rensai_2

3人の論者の立ち位置は微妙に違う。

ケイン樹里安氏は、差別の問題は、それを助長しかねない言葉だけを駆逐すれば解決する問題ではない、しかしその言葉が実際に誰かを差別の標的にする行為の引き金となる以上、言葉は重要である、として、日本人の大多数が、自分がその大多数に属するからこそ気づきすらしない問題を厳しく指摘している。

眞嶋亜有氏は、明治以降、日本人が経験してきた欧米に対する葛藤を含んだ憧れとそれに伴う自己醜悪視、そこに内在しうる白人至上主義に触れながらも、現在の日本人にとっては昔のような「白人幻想」は崩壊しているとして、むしろ「美白」という言葉が炙り出す女性やマイノリティーに対する差別の問題に注目を促している。

齋藤薫氏は、「美白」というのは日本独自の概念で、紫外線が肌に与えるシミなどの悪影響が広く知られ始めた時期にスキンケアへの需要から生まれたものであって、白人の憧れから生まれたわけではない、純粋な美容概念として生まれた美しい言葉だから大切にすべきという立場だ。

私自身も、20代後半まで、つまり日本にいた頃は、何が何でも日焼けしないために頑張っていた記憶がある。夏でも長袖。ゴミを出しに行くだけでも洗濯を干すだけでも、日焼け止めを塗らずには外に出ない。だいたい周りの人もそうしていたし、雑誌にも「美白」の文字が躍っていたし、特に白人への憧れを意識的に持っていたわけでもないながら、メディアの提供する「美」のモデルを受け入れていた。
知る限り先祖代々日本生まれ日本育ちの私は日本におけるマジョリティであり、日本にいれば見た目や出自については誰に差別される心配もなく過ごせるグループに属している。そしてメディアの言葉遣いや広告はこのグループを対象に据えている。私の信奉していた「美」のモデルについても然りだ。

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