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山ペンギン 29 普通の日

そろそろ夏服だ。

イマドを見るのが暑苦しい。

コンビニの制服は年中半そでだが、気温が上がって来ると生地が少し変わって来る。

また、今年からTシャツも導入されているが、それで仕事をしていると、私服でレジにいるように思われることも多い。

イマドの制服は特別性で、前のボタンを止めなくてもいいことになっている。

入れ替えと言えば、商品の入れ替えも激しく、最近は毎日、主任がオレの家に来るようになった。
もちろん、入れ替えで棚落ちした商品の整理を兼ねてだ。

食生活がある意味「潤って」いる。

「もう、毎日売れ残りでご飯よねー」
ご飯、という言い方がフレンドリーでいいが、はっきり言ってもう飽きてきている。

大体、「冬」商品のあまりなので、暑苦しい商品が多い。
おでんとか、肉まんとかは冬の定番商品。
基本的に商品は「夏」と「冬」で大きく分けられる。

特にホットドリンクの余りを室温レベルで買ってきたものはキツい。

冷めた「ゆずレモ○」や「はちみつ○モン」、「濃厚ココア」はかなりキツい。
かと言って、この時期、加熱して飲むのはもっとキツい。

高級中華風肉まんの室温版をはちみつなんとかで、飲みこみながら、
「主任はなぜ、コンビニで働こうと思ったんですか?」
と以前から気になっていたことを聞いてみた。

「それは、24時間開いてるからよ。」

もうちょっと深くたずねたかったが、どんな回答が返って来るのか不安になり、軽くうなずいてスルーした。

「夜働くのも好きだし、昼間休みがある解放感も好きだから。」

主任にしてはまともな回答が返ってきた。

「僕がコンビニで働くようになったのは。」

イマド、お前には聞いてない。

「私がここに現れるようになったのは。」

女神さま、あなたにはもっと聞いてない。

「オレくんはどうしてコンビニで働いているの?」

主任が気になっているオレは、一瞬どきっとしたが、
「昼間学校に通ってるからです・・・」

が事実だ。
面接時にオーナーにも主任にも伝えたが、すっかり忘れられている。

「そうか・・・。」

なぜしんみりと聞く。
時給がいい夜働けるのも魅力だが、最近は講義のない昼の時間帯にずいぶんシフトを入れられている。

イマドのおかげで、ブラックとまでは言えないレベルにはなっているが、かつて、夜シフトの11連勤のときは、講義をまともに聞けなかった。

最近は夜のシフトが多く、疲れるなりに働きがいがある。

地域のともし火、それがコンビニ。

こんな日があってもいい…かな、?



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