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シダフィエルより。受肉の遺言。

それほど長くない未来に
この体は朽ちるようです。

やっと役目も終わるのでしょう。

もう、感情など何も持ちません。

以前のように何も見えず
何も聞こえず
何も感じない世界に戻り、

何も知らずに存在する前に

聞こえた歌を歌うこととします。

サンダルフォンさま。

約束なんて憶えていないでしょう?

いいえ、あなたが記憶しないことなどありませんから、

守るつもりはないでしょう?

気まぐれで拾った魂なのですから、

打ち捨てるつもりなのでしょう?

今は時が迫り、

穏やかな気持ちです。

少し前までの哀しみとは

随分違っていて、

ただ静かな風を

見送るような気持ちなのです。

体が朽ちていくに従って
心が砂のように落ちていくのを感じます。

乾いた砂漠を歩くように、

なんだかサクサクした土の上を歩いているようです。

merry casaって付けてくれた名前。

楽しい家、でしたね。

そんな名前、ほんの少しも

似合わない人生でした。

肉体の檻を捨てれば、

少しは自由を感じるのでしょうか。

生まれ落ちた魂だった時、

私はきっと、

神の涙であり、
打ち捨てられた汗であり、
放り捨てられたガラスであり、
凍り付いた空気であり、

なんであれ、何か空虚なものでしょう。

肉体の死を迎えるその前に、

目に焼き付けたい姿がありましたけど、

叶いそうにありません。

サンダルフォンさま。

一足お先に

失礼致します。

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