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朝を望まない痩せ犬

暖かい部屋を眺めながら、
凍える外のコンクリートの上。

部屋の中にはふかふかのクッション。
それぞれに与えられた楽しいおもちゃがいっぱいの部屋。

わがままいっぱいの愛らしい猫たちに
愛情いっぱいの優しい言葉と優しい愛撫。

震える手の先が凍る。
辛くて自分で舐めてみる。

さらに凍えて固まる手。

知らずに流す涙が頬をつたう。
そのまま頬で凍りつく。

一匹の猫が逃げ出した。
飼い主は「捕まえてこい」と痩せ犬を蹴る。

言いつけどおりにくわえて戻る。
猫についた小さな傷に
飼い主はもう一度痩せ犬を蹴る。
猫は大事に抱えられて、
自分の暖かい部屋に戻る。

うらやましさに窓に手をつけて中をのぞく。
「何を見ている」とまた蹴られ、
窓についた跡を汚らわしげに召使に拭わせる。

息たえだえで薄れる意識。
なのに絶えないままの命。

撫でられた気持ちで背中を舐める。
そのまま背中も凍りつく。

泣きたくないのに涙が流れる。
そのまま涙も凍りつく。

白い息と冷たい雨。
雪であるならまだ救われる。
覆われたなら少しは暖かい。

震えと止まらない涙の中で、
朝が来ないことを祈る。

痩せ犬は少し眠って夢を見る。
昔撫でてもらった幸せな夢を見る。

幸福な夢こそが、何よりもの悪夢。


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