山ペンギン 43 泉に行こう。
「しばらく泉に帰ってなくて。」
いや、アンタそこ、職場じゃないんですか?
泉の女神が3日ほどうちのアパートに居座ってから突然そう言い出した。
3人(女神、オレ、イマド)でもまあまあ狭いのに、そのうちの一日はさらに主任が酔いつぶれて寝てしまい、そこにお菓子目当てのまるがりたさんが来て、駄菓子を二袋ほど平らげていった。
後からトリ2人がやはり追いかけて来て、たしなめられて強制送還にはなったが、彼らもしばらく居座ったため、オレは押入れから問答するはめになった。
そのトリのうちのタカさんが
「イマドさんの認識迷彩、どういう仕組みなんですか?」
とかイマドを宇宙人扱いで質問していて、なぜか女神が
「ペンギンの姿を人間と認識させるのではなくて、ペンギンのまま違和感を脳から消してますよね。」
と答えていた。
じゃあなんでオレは違和感感じてるんだ?
「認識迷彩は効果ない奴いるんだよ。」
イマドが話し始める。
「今までのお客さんとかにもいたけど、誰も驚かないから、自分が変なんだろうか、って悩んでたね。」
そう言えば、コンビニに入ってくるなりギョっとした顔でそのまま出ていった人とか、「ペンギンなんですか?ペンギンなんですね!」と妙にはしゃぐ人がいた。
どちらにしても現実を自分なりに受け止めてはいたが…。
「とりあえず、私、職場に戻ります。」
さすが神。即その距離は移動出来るんだな。
「あ、でも終電逃したので今日は泊めて下さい。」
なんでやねん。
なんとなく翌日、オレと主任も泉に向かうべく山を登った。
イマドはなぜかトリたちの宇宙船を見学に行くのだそうだ。
「宇宙バスのイカを見たいなあ…。」
「イカではないんですけど、足が多めで、血液が青い頭足類なんですよ。」
イカじゃねえか。
「神経繊維がそのままコンピューターなんです。」
それ、計算士っていうんじゃないだろうな。
「いえ、オリジナルの生物からは、遺伝子を組み替えて作った有神経繊維コンピューターのクローンなので生命体に見えるだけですよ。」
生命体そのものじゃねえか!!!
当の女神は泉を見て。
「変わり無いみたいです。
じゃあ帰りましょう。」
…どこにだよ。
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