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椅子の座面を貼り替える

白木の家具に囲まれた家で暮らすこと、テーブルとベッドの生活…
それはザ昭和の狭い日本家屋で育った若い私の夢でした。当時眺めていた雑誌nonno に、カントリー調のインテリアや雑貨が載っていて、それはそれは素敵に思えたのです。

だから、結婚したら白木の家具を揃えたいと思っていました。が、現実は重い和ダンスを嫁入り道具として持たされたのです。大人げないのは重々承知ですが、親のエゴだと今でも恨んでいます。
ただ選ぼうにも、雑誌で見た白い家具など地元の家具屋にはなかったことも事実です。私の欲しい家具は東京にしかないのかと、タンスに囲まれた狭い通路で、大きく落胆したのを覚えています。
今なら地方でも、ニトリや無印良品に当たり前のように白木の家具が置いてありますが、当時は本当に遠い存在だったのです。

そんな落胆の中、唯一鏡台だけは、イメージとは違うけれども白木の物があったのです。
飴色に経年変化していますが、今でも私のお気に入りで、これは手放す気はありません。

ただ、椅子の座面のモスリンの布はさすがにくたびれて、破れ始めました。替わりの椅子を探してみましたが、思うような椅子は見つかりません。ならばダメ元で座面の貼り替えをしてみようと思いつき、材料の布とウレタンと不織布を購入してみました。

作業は、椅子本体にねじ釘で留めてある座面を外し、タッカーで留めてある古い布を座面の板から外すことから始めます。椅子の貼り替え作業で一番根気がいるのが、このタッカー外しだと思います。専用のタッカー外しという道具があれば、少しは作業が楽だとは思いますが、私は千枚通しとマイナスドライバーとペンチと根性で乗り切りました。親の仇のように打ち込んである無数のタッカーをひとつひとつ外すのは、気の遠くなるような作業です。しかし、進めるうちに、留めてあるタッカーが少なくなるのが目に見えてきて楽しくなります。
頑張れ私。根気だけはあるんじゃ!と、心の中で叫びながら地道に作業を続けます。

そうこうしてやっと古い布が取れたら、新しいウレタンと布を座面の板にタッカーでばちばちと留めていきます。
意外にできるものですね。座面は新品になりました。細かいところは目をつぶりましょう。座面がきれいになった分、椅子自体が古びているのが気になるようになりましたが、そこも目をつぶりましょう。

この勢いで、汚れていたダイニングチェアー4脚の座面も貼り替えました。
コツがつかめた頃におしまい。