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【書評】痴漢を弁護する理由

書評というほどしっかりしたものではないですが、すごく面白い本だったのでご紹介させていただきます。

なんと小説です!!
刑事弁護をしている弁護士さん達が書かれたもので、痴漢事件にまつわる小説が2本入っています。

まず、小説が小説として普通に面白いです。勉強のためとかでなく、小説として読んでいただいて十分面白いと思います。
被害者目線、容疑者目線、弁護士目線、検察官目線、容疑者の家族目線…と場面場面で一人称の人が変わるので、様々な思惑が交錯します。
この書き方に、芥川龍之介の『藪の中』とか、湊かなえの『告白』などが思い出されました。

そして、私がこの本を手に取った理由は、私自身、クリニックで痴漢事犯の方々の治療に当たっているので、タイトルが私の考えを代弁してくれているように思ったからです。

実際、2本ある小説のうち2本目の方は、妻子もいて、大企業に勤めているごく“普通”の人が痴漢を繰り返してしまうという話です。性犯罪が単なる性欲に基づいた犯罪ではないことや、依存症である場合には治療を要することなどが、小説を読む間に理解できる構成になっていました。
(私が元々勤務していた刑務所での処遇が意味ないような書かれ方をしている点だけは不本意ですが。)

もう1つの小説は、痴漢冤罪をめぐる話で、こちらの方がいかにも法律家というか、司法の実態が伝わってくるテーマでした。
刑事ドラマなんかだと、警察や検察官は主人公にされますが、弁護側ってなかなか取り上げられないと思います。せいぜいやっと捕まえた犯人の味方(つまり憎まれ役)くらいの描写…?
しかしながら、公平な司法のためには欠かせない方々です。

難しいことはさておき、面白くてあっという間に読めてしまうので、是非手に取ってみてください。

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