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2020年のエイプリルフール・リリースは必要だったのか?

2020年4月1日は、昨年の同じ時期とは全く違う心持ちで迎えている人が多いと思います。得体のしれない病原体がひたひたと迫りきて、私たちが愛してやまない人が命を奪われていく。そんな時期に、「人をだまして楽しむ」というエイプリルフールは控えようというのは、世界的なムードになっていました。

しかし、残念ながらそのムードを理解できない企業は多く、エイプリルフールを使って注目を集めようという行為が行われました

そもそも、ニュースリリースを出すということは、メディアに取り上げてほしいということ。そう、本来のエイプリルフールの楽しみから外れた目的のためのものです。ここ数年ネットでバズらせ、それがメディアに取り上げられて露出を稼ぐという仕掛けで春のPRの定番になっています。

エイプリルフールネタを毎年掲載している「ねとらぼ」ですが、やはり時勢を読んでエイプリルフール関連記事はぐっと減らしています。内容も例年とは違って

エイプリルフール、コロナ影響で“自粛”の企業も Google、キングジム、セガなど(2020年4月1日 12時20分公開)

というエイプリルフール記事自粛の話とネットの話題のもののまとめぐらいで、記事枠をエイプリルフールネタで埋めていません。

ざっくりと調べたところ、私に直接届いているエイプリルフールネタのニュースリリースは3月18日の1本のみ。あとは、登録しているメディア宛に一斉に送られるリリースメール配信会社を使ったものでした。これは、受信する側がジャンルを選んでいるので、総配信数は不明ですが、私が受信したのが3社のリリースメール配信会社からで80本超と、実は増えています。これはリリースメール配信会社であるPR TIMESからが9割でした。

IT系の情報発信のコンサルティングしている方も「この時期にエイプリルフールネタをやろうってところあるの?」と反応があったのですが、これが実情です。

私はそもそもエイプリルフールのニュースリリースを配信するのは反対派です。エイプリルフールって業務外で遊ぶのが楽しいのであって、業務のスキームを使うのは間違っていませんか。PR TIMESがエイプリルフール関連のニュースリリース配信を無料にした初年度、何の工夫もルールないまま無料で行われ、記事執筆のノイズとなったことは月刊誌「広報会議」でも書かせていただきました。今年はそういったメールを排除する設定が加えられたようですが、このご時世にエイプリルフール・リリースを配信することを推奨するのってどうなのよ?

ある飲食系のPR系の方が「PR TIMESは推奨していない」と投稿されているのを信じていたのですが、どうやらそれは誤解で、まったく真逆の推奨派だったようです。ただ、一部エイプリルフールの嘘ではなく、実現したい夢を語る的な企画「April Dream」になったようですが。

PR TIMESでは2015年より、4月1日にエイプリルフール"ネタ"のプレスリリース配信を無料とし、企業広報の発信機会として大切にしてきました。
おかげさまでエイプリルフールネタの配信は年々増加しております。
一方で、その状況における課題や葛藤も膨らみ、行動を重視して真実を伝えることをミッションに掲げる当社が、本気で追求すべき発信機会とは何かを思索し続けてまいりました。
本年の4月1日はご参加いただく企業の方々が、実際に企業が叶えようとする夢を発信いただく、"April Dream"リリースをご配信いただきます。
本件について、3月18日 11時30分に当社プレスリリースより情報発信させていただいております。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000975.000000112.html
これまでのエイプリルフール(ウソ)についても例年通り、ご配信承ります。

そう、残念ながら「ウソ」の配信も無料で受けているんですよね。

ニュースリリースから実際の記事になるのはわずかなので、空気の読めないリリースが一般の方が受け取ることはありません。もちろんハッピーな気持ちにしたい意図もあるのかもしれませんが、本当にがっかりしています。

いま、世の中で「中止」「延期」「自粛」ラッシュですが、私たち取材する側も同じです。それでも、いまこのなかで自分たちに何ができるのかを必死に考えています。そんななか、平時のフォーマットで何をやろうというのか。

もちろん、純粋に「この雰囲気のなか、楽しんでほしい」という趣旨で、「これは嘘でした!」とだますのではなく、楽しいネタを提供したところもあります。ただ、こちらも「不要不急の外出を控える」というものを外れているので、炎上を防ぐためにはわざわざ記事にすることは選ばないトピックでした。それでも「採算度外視で楽しんでもらいたい」という覚悟で実施されたようです。

リリースって、「企業からのラブレター」っていいますが、エイプリルフール関連のニュースリリースを受け取るのは「企業からの不幸の手紙」のように感じてしまいました。そしてそういう仕掛けをしてまでエイプリルフールをビジネス利用すべく、ニュースリリースを送る必要はあるのでしょうか?

エイプリルフールのニュースリリースは来年以降はなくなり、本来の「いきなり始まって、みんながそのアイデアを楽しむ」というものになること。そして、それを大きな心で楽しめる状況になっていることを願っています。

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以前に月刊誌「広報会議」にて「PRされる側からみた広報・PR」の記事を執筆したところ、「こういうことを知りたかった」「ただ前例に従ってやら…

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