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果たして小麦だけが悪者なのか?

ある日、私はイタリアに住む従姉妹と3 週間のグルテンフリー生活を始めることにした。私たちの体質は似ており、お互いにアレルギー体質。

これはその実体験に基づく記録だ。※あくまで個人的な感想・体感です。

□グルテンフリー期間中に食べなかったもの

1. 小麦製品全般(パン、焼き菓子、麺類揚げ物など)

2. 小麦を使用した加工品(調理済みハンバーグや一般的なカレー、揚げ物など)

ただし、オーツ麦、醤油や味噌のような発酵食品、原材料に小麦成分とだけ書かれているようなものはOK とした。オーツは小麦とタンパク質の構造が違うという面で、醤油や味噌は発酵過程でタンパク質がある程度分解されているという点から、また小麦成分については微量だという点から良しとした。

□グルテンフリーで得られた効果

【私】

アレルギー(酒さ)によるかゆみと湿疹が日に日に消えていった

マスクをつけ始めてから次から次へととめどなく生まれていた顎ニキビが全部消えた

主に下半身の脂肪が落ち、むくみも改善(特にサイズを測ったわけではないが体感として)

頭がすっきりして寝起きのだるさが緩和

【従姉妹】

特にこれと言った改善点は感じられなかったが、

強いていうならば肌のオイリー感が少しなくなった気がする。

以上


これは私の予想を覆す結果であった。なぜならば日本在住の私の主食は米であり、2 年前に半年間のグルテンフリーをした際あらゆる不調が改善された経験のある私は、ゆるいグルテンフリー生活もしていたからだ。反対に、イタリア在住の従姉妹の主食はパスタやパンなどの小麦製品であり、特に摂取制限もしていなかったため彼女には劇的な変化があるはずだと勝手に思い込んでいたのだ。そして、この結果を受け浮かんだ疑問とその疑問についての調査結果が衝撃だったのでシェアしたいと思う。


【日本とイタリアの小麦の違い】

□小麦の自給率

まず、日本とイタリアの小麦の自給率と輸入量について調べてみた。

表A

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まず、表A を見てわかるようにイタリアでは38%(2017)、日本では84%(2019) の小麦を輸入に頼っていることがわかる。なんと、日本に存在する小麦のほとんどは輸入されたもの。では、日本は一体どのような国から小麦を輸入しているのだろうか。これは農林水産省のHP に記載があるのでご覧いただきたい。(表B)

表B

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日本の小麦輸入量は年間500 万トンを超え、そのうちの99% がアメリカ、カナダ、オースラリアからの輸入である。一方イタリアの輸入元は不明だが、アメリカ、カナダ、オーストラリアからの輸入がないことは明らかである。なぜならば、EU は世界で最も農薬への規制が厳しく、アメリカ、カナダのような国からは輸入できない上、EU 圏にはフランスという小麦大国があるからである。フランスの小麦輸出量はEU 一であることから( 表C)

表C

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イタリアの小麦は主にフランスから輸入していると考えるのが自然である。そしてこのことから日本とイタリアでは食されている小麦の産地が違うことがわかる。ではなぜEU ではアメリカ、カナダ、オーストラリアの小麦を輸入することができないのか。それはEU では認められていない除草剤グリホサートが使用されているためである。それでは、グリホサートとはどのようなものなのか。その説明をする前に我が国日本の小麦輸入元であるアメリカ、カナダ、オーストラリアにおける輸入時の残留農薬検査について表D~F をご覧いただきたい。

表D

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表E

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表F

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表G

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表H

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□輸入小麦における残留農薬の検査

まず、最も輸入量の多いアメリカ産から見てみよう。表D より、グリホサートの基準値の上限は30mg/kg で定量下限基準値は0.01-0.02mg であること、また77 件の検査対象中、グリホサートの定量下限値を超えているのが75 件だということがわかる。この表には検査対象の残留農薬の正確な数値は明記されていないがEU で禁止されているグリホサートの基準値が日本では2018 年に5mg/kg( 表F) から30mg/kg へと引き上げられていることからかなりの量が残留していることが予想できる。また、グリホサート以外にも数値の高い臭素とは殺虫剤である。輸入時に虫の混入があると入国できないため、大量の殺虫剤が撒かれるのである。カナダ産(表E)についてもアメリカ産とほぼ同様であり、オーストラリア産(表F)はグリホサートにおける下限値以上の検出件数は27 件中6 件と少なくはあるが0ではない。一方フランス産の小麦はどうだろう。( 表G)グリホサートの使用率はゼロである。ここで、グルテン以外の小麦の問題点が浮上してきた。私が得られたグルテンフリーの効果はグルテンを摂取しなかったことのみならず、これらの残留農薬を摂取しなかったことで得られているということも大いにあるのではないだろうか。もちろんグルテンは消化に悪く腸の炎症の原因となることも事実、また品種改良が繰り返された現在の小麦に含まれるグルテンの量は古代小麦に比べかなり高いことも原因のひとつかもしれない。だがこの農薬の毒性たるやグルテンの比ではないだろう。

□遺伝子組み換え作物とラウンドアップ

では、グリホサートとはどのような農薬なのかに戻る。それは、アメリカのモンサント社(現ドイツのバイエル)が1970 年に開発した除草剤ラウンドアップの主原料である。簡単に説明すると、除草効果がきわめて高い上に安価な除草剤で、主原料であるグリホサートに耐性のある遺伝子組み換え作物とセットで使用されることがほとんどである。その健康被害は発ガン性をはじめ多岐にわたり、訴訟による賠償も起きているほどである。そしてこのグリホサートという農薬は、高い発ガン性と健康への悪影響の懸念により現在EU では使用、輸入が禁止とされている。それにひきかえ日本の現状はというと、先ほども少し触れたが、2018 年に輸入時のグリホサートにおける残留農薬基準値が5mg/kg から30mg/kg へ引き上げられたのである。(表H)また、表I は、グリホサートの使用量とセリアック病患者の推移を示したグラフである。この表を見れば、グリホサートの使用量が増えるとともにセリアック病の患者数が増えていることがわかる。ここで私と従姉妹のグルテンフリー生活における効果の違いは、グルテンをフリーにしたことよりも、輸入小麦による残留農薬の摂取をフリーにしたことの方が大きかったのでないかという仮説に行き着いた。

表I

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□グルテンと古代小麦

では小麦によるアレルギー症状の悪化や体調不良は全て残留農薬に原因があったのだろうか。それについてはイエスと言いづらい。なぜかというと、品種改良により小麦のグルテン含有量が増えたことも確かな事実だからだ。だが、小麦不耐症でない限り輸入小麦の摂取をやめるだけでもかなりの健康効果が見込めるのではないだろうか。また、さらに言えば国産でできる限り農薬がかかっておらず、グルテン含有量の面から品種改良のあまりされていない小麦を選ぶことでさらに効果は見込めると考える。では品種改良されていない小麦とはどのようなものか。それは古代小麦と呼ばれる貴重な小麦である。古代小麦は染色体の数により3つに分けられており(表J)一番現代小麦に近いものが21 対42 本の染色体を持つ古代小麦で、もっともポピュラーなスペルトである。(これは現在の小麦と染色体の数が同じ)次に、染色体14 対28 本の二粒小麦でエンマーと、カムットがある。このカムット小麦は古代エジプトで栽培されていたと言われており小麦アレルギーの人が摂取しても70% がアレルギー反応を起こさなかったとのこと。そして、一番古いとされているのが染色体7 対14 本の一粒小麦アイコーンである。これについては小麦の原種であり、品種改良をされていない小麦である。これらの小麦は現在の小麦と比べグルテンの量も少なく消化にも良いとされるため国産の古代小麦が手に入るのならば、そちらにシフトするのも良策だろう。

表J

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□最後に

そして日本において目をつぶることのできない問題として食料自給率の低さがあると考える。小麦に限らず、野菜にせよ穀物にせよ自国の自給率が上がれば私たち国民はもっと健康な人生をおくれるのではないだろうか。もちろんすぐに解決できる問題でないことは承知の上であるが、私たち一人一人の心がけで変えていくことは可能であると考える。具体的にいうと、このような状況下においても貴重な素晴らしい作物を育てている農家さんはたくさんいる。私たちがそのような農家の作物を消費することで、農家を守り、持続していけるよう助けとなれるのではないだろうか。また、自宅で家庭菜園を始めるのもいいかもしれない。この小さな積み重ねで日本の食料輸入量が縮小していき次の世代、次の次の世代までもが健やかに暮らせる国であって欲しいと強く願うばかりだ。その上で、手に取る人のことを思い、食べた人の健康を願いながら素晴らしい作物を育ててくださる農家の方々は日本の宝ではないだろうか。


長い文を最後まで読んでくださりありがとうございます。

この記録が一人でも多くの人の役に立つことを祈って。


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