さよならGoodBye #13
第13章 そして1か月が経った
山王男坂の事件から1か月が経った。井上課長は、未だに意識不明の状態だった。
副島孝司は、事件の後、会社にも出社しておらず、警察も彼の行方を追っていた。
そして何故か安野由美も会社をずっと無断欠勤していた。
「田島君!田島君!何?ボーっとしてるの?」
その声は、 井上課長の後任の吉森課長だった。
「あっ!吉森課長・・・」
「田島君は、安野さんと仲が良かったんでしょ?なんか聞いてないの?」
「いえ、自分は何も聞いてないです・・・」
「そうか?そうなんだ・・・なんか情報があったら教えてね・・・彼女やばいよ・・・」
「やばいって?なにがですか?」
「聞いてないの?」
「いえ、何も・・・」
「聞いてないんだったら良いけど・・・」
彼は、何か言いようのない不安を払拭する事ができなかった。
そしてその夜・・・
「ピンポーン」
「え?何?」夜も11時を過ぎようとしている時にドアの向こう側から変な声が・・・
「え?誰?ピンポーンって何?」
そしてまた、「ピンポーン」
「誰だよ!」彼が、玄関のドアを開けると、そこには有島洋子が・・・
「ピンポーン!」何故かニコニコ顔の有島洋子・・・
「何?何?何で俺の住所知ってるんだよ?誰にも言ってないのに!」
「わては、なんでも知っておま!」変な関西弁を話す有馬洋子・・・
「分かった!分かった!とにかく中に入ってくれよ」彼は、隣の部屋の里佳子に悟られないように慌てて洋子を部屋にあげるのだった。
「で?なんの用なの?」
ベッドに勝手に横になっている洋子に彼は尋ねた。
「晃君さぁ、、、孝司から聞いたんだけど、共犯者なんだよね?孝司怒ってるよ!」
「な・なに言っちゃってるんだよ」
「えっ違うの?えっ?えっ?えっ?」洋子は週刊誌を読みながら素っ頓狂な声を上げるのだった。
「おい、勝手に読むなよ!」彼は、洋子が読んでいた週刊プレイボーイを取り上げた。
「なにすんだよ!晃っち!」
「誰が、晃っち!なんだよ!ふざけやがって!出て行けよ!」
「晃君、やばいよ!大麻草植えてるのバレてるから!」
彼は、あせった。なんでこいつは、そんな事知っているのか?確かに彼のアパ―トと隣家の間の1メートルほどの隙間に有島洋子から
もらった鳥の餌を撒いたら大麻草がいつの間にか生えていたのは事実だった。
しかし、誰の目にもつかない場所に生息している大麻草を何故、こいつが知っているのか?
「何いってるんだよ!どこにそんなの生えてるんだよ!」彼は苦し紛れに、そう返すしか言い返すしかなかった。
「そんな事言うなら良いよ!孝司がそのことも警察にチクる様に私に言ってたからね!」
「そんじゃそういう事で!バイチャ!」
「おい、待てよ!」有島洋子は、彼の呼びかけを無視し足早に帰って行った。
呆然とする彼がひとり残った。
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