デザインの敗北はほんとに敗北なのかあ

ラフォーレ原宿の看板の一件でテプラが注目され「テプラとラミネートにデザインは敗北した」という話がまたまた浮上している。あれ、浮上しているのは業界だけ?(笑)
有名デザイナーがデザインしたコンビニのコーヒーサーバーがテプラの注意書きだらけになったことから、「テプラによるデザインへの侵略」みたいなことが話題になり、今度のラフォーレの件で再燃した感じか。
かいつまんで言うと、デザイナーがどんなにカッコいいデザインをしても、その上からテプラで注意書き貼られちゃったら一巻の終わり、みたいなこと。

もう何年も前にどこだかの保育園が有名建築家に設計してもらってコンクリート打ちっぱなしのカッコいい保育園になったのに、オープンしてみたらヒヨコちゃんやウサギちゃんのシールが貼られ、コンクリの柱には怪我防止のファンシーカラーのマットが巻かれ、建築家が怒ったとか怒らないとかいう新聞記事を読んで失笑したことがある。

たまに、敬老向けイベントとかのポスターのキャッチコピーが全部英語で、さらに曜日もFRIとかSATとかなってると「年寄、意味わからないから来ねえよ」と思ってこれも笑っちゃうことがある。
さらに会場案内の文字が8ポイントくらいでグレーで「誰も読めませんね」と思う。

で、一番がっかりするのは新しくできた病院。もう、入り口とか待合室とかかっこよくてスタバとかディーンとか入っちゃってて天井高くて。なのにいきなりの貼り紙。「整形外科」っていうかっちょいいサインがあるのにその下にパワポで作った「整形外科はこちら」が貼ってある。なんならヒヨコちゃんを描いてある。

なんてことを書いてるとお前はデザインとテプラ(いや、テプラに象徴されてるだけで私はテプラは好きだけど、進化してるし)のどっちの味方だ、って言われてしまいそうだけど、どっちの味方でもないね。どっちの気持ちもわかるもん。
デザインやアートのことなんて全くわからない人、たくさんいますし。それでも生きていけますし。
というか国土の90%くらいのものデザイナーかかわってないでしょう。日常の90%くらいのもの、デザインなんて施されてないでしょう。
だからね、デザインの「敗北」なんて言っちゃだめだと思うのですよ。
敗けるからには勝った相手がいるわけで。ノンデザインセンスの人たちは勝ったなんて思ってないですよー、気づいてすらいないから。
デザインやアートはわかる人にわかってもらって、そういう人にちゃんと対価をもらえばいいの。

ただこれからのデザイナーに必要なのは、カッコいいだけじゃなくて現実に見合う親切さみたいなものを持ち合わせることだろうなあ。英語を使うとカッコいいんですよ。ローマ字って文字の間が詰まっているのでカッコよく見えるんですよ。でもさ、一流のデザイナーなら日本語でかっちょよく誰にでもわかるデザインしたらそのほうがカッコいいんだよー、おーい!
でさ、カッコいいサインシステムでも読めなきゃ終わりだし。駅員さんや看護師さんやコンビニ店員さんが「もう、何度も聞かれてうんざり」って思わないようなサインシステム作って、そこで力発揮してくれ!

それと発注者が悪いなあと思うのは、もうほんとにオリエン下手。病院なんて掲示物だらけになるのわかってるんだから「ものすごく掲示物多いんですが」ってオリエンしないと。保育園作るときだって建築家に「子どもが暴れます」ってオリエンしないと。それで「そんなのできません」って言われたら他探せばいいだけ。でも、子ども受けするホスピタリティのある設計ってできたと思うけどなー、あの先生なら。

それからも一つ。ノンデザインセンスの人が作った貼り紙は見ずらいです。それはデザイナーが8ポイントで作っちゃった説明書きよりも見ずらいです。つまりね、書体選ぶセンスも大きさや文字詰めのセンスもスペースのセンスもないわけで、それをね、パワポやワードというアプリのおかげで「できた」と思っちゃったらだめよ。
仕事中に絵を描いているの楽しいだろうけど、本来の仕事してくださいね。


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