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「晴れたら」前日譚

それなりの長さ生きてきて、人生の中で5本の指に入るような「好きな街」は既にほぼ決まっている中で、たった1日でその全部思い出すのがしんどくなってしまったら、やっぱり新しい「好きな街」を開拓するしかないのだろうか。

こんなに短い期間でどうして全ての好きな街が侵食されてしまったのか。
共通点の多さ、そういった偶然の類、沢山聞いた話、加えて無駄にいい記憶力、あと大人になってしまったがための機動力の向上。近年は本当に好きな街を散々訪れた。そして行く先々で、考えていたり、関わってみたり。感情と思考と五感はあまりにも結びついているので。
間接的には、そういった理由。勿論、直接的に想い出が存在してしまっている場所もある。

これ以上失うものはない。そう思いながら、僅かに残る糸のような希望が、こんなに痛くても手離せない。少しでも離れたら、時間は残酷だから。あっさり、摩耗させてしまうから。
そう考えると、失うものはやはりあるんだろう。

1年くらいどこか遠くの未だ思い入れのない街で暮らしてみたら。
新しい「好きな街」を開拓する。片手間ではできないことだ。今持っている全てが私にしんどいことを思い出させるならその全てを捨てないといけないし、当然誰かと連絡を取ったら逆戻り。
そしてその街を好きになれたら、楽になれるんだろうか。

そもそも、楽になりたいんだろうか。
楽になった先に何があるんだろうか。

思い切りがつかないということは、思いの外失いたくないものが多いみたいだ。

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