![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/145769322/rectangle_large_type_2_e4a9ec04623d01a95d9461e5a5ee8851.jpeg?width=800)
目撃者
先生はわたしの10個上だ。
あの頃を小学生とか中学生とかで過ごした先生はどんな記憶を持っているんだろう。
歳上のひとに対してはよくそんな興味が湧く。想いを馳せたくなる。わたしが物心もつかない過去の出来事として見た映像をリアルタイムで見ているのだ。
「恋心とは懐かしさ」(九龍ジェネリックロマンス)とはよく言ったものだ。
何年か前には先生と同じ時に生きたかったと思ったこともあった。
でも今は。
歳下のひとに対しては10年の差なんてあってないようなものとうっかり感じてしまうけど、逆はまるで遠い。歴史の目撃者みたいに思ってしまう。
きっとそろそろわたしも歴史の目撃者になる番なのだろう。
あの頃から今まで、目まぐるしく時代は変わったよ。歴史的な地震にだって遭ってしまったし、幼い時にお姉さん達に憧れて書いたあの文字や文体は今では「レトロ」と持て囃されている。
だけどわたしにはまるで昨日のこと。時が止まっているかのよう。わたしにはいつまでも新しくて、「恋心みたいな」懐かしさを感じない。
でもそんなわたしの目が誰かの恋心を満たすことがあるのなら。
どうぞいつでもいらしてね。
先生に頼まれたおつかいをこなして久々にたくさん話した日の帰路。わたしのイヤホンからはわたしの恋した時代の曲が流れてきて、日没の薄明かりの中こんなことを考えながら遠回りして帰った。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?