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リスボンの地元民に出す毎日の日本の定食

お昼の定食は、開店から今日まで、ずっと同じスタイルでやっている。

日替わりで、

肉の定食
魚の定食
ベジタリアン定食

そして

寿司定食、刺身定食、天ぷら定食、黒豚の豚カツ定食に、漬け丼定食

途中で、寿司はメニューから外そう、とか、日替わりではな週替わりにしよう、とか色々変えようとしてみたけど、お客さんの反応を見たら、やっぱりすぐにこれに戻るのだ。

1週間のメニューを書いていた頃

こちらは、日本にいた時よりも、ベジタリアンの人や、肉を食べない人が結構多い。そして、日本食レストラン=新鮮な魚がある店、というイメージが根付いている。だから、肉、魚、ベジタリアン定食の3種類がきちんとメニューにあるのは、結構大事なことだ。

定食の内容は、メインの料理と3種類の副菜、ご飯、味噌汁。

メニューのデザインは全て雄一氏が手がける

ご飯はスペイン産の「みのり」というブランドの日本米。毎朝、朝一番に、定食用のお米と、寿司のシャリ用のお米(また違うブランドのお米)を洗って仕込む。

味噌汁は、かつお出汁ではなく、毎日大量に届く魚たちのアラで取った出汁で作る。かつお出汁のような上品な味ではないけど、特に鯵などの青魚から出る旨味がたっぷりで、そのうちにこの味噌汁のファンが増えてきて、ちょっとした名物になった。

副菜の3種類は、季節やその日に入った野菜で変わるけど、胡麻和えやきんぴら、ミニサラダ、和物、根菜のオーブン焼きなど。

メインの肉料理で定番だったのは、生姜焼き、角煮、鶏の唐揚げ、焼き肉風炒め、親子丼などが代表的なメニュー。

魚料理は、鮭の西京焼き、幽庵焼き、かき揚げ、カニクリームコロッケ、ミックスフライ、エビチリ、などなど。

ミックスフライ定食

ベジタリアン料理は、これは食材の関係で、結構バラエティを豊かにするのは難しいけれども、揚げ豆腐のきのこ餡かけ、豆腐ステーキ、野菜炒め、野菜のかき揚げ、あたりが多かった。

これ以外に、やっぱり寿司定食、刺身定食、漬け丼や海鮮丼定食は、安定してよく注文が入る。やっぱり魚を食べにきている人が圧倒的に多い。

2016年の寿司定食の寿司。当時は裏巻きも。魚の名前を知らない人が多かったので、絵も用意していた。

うちに来ていたお客さんは、近所で働いているスーツを着た人がとても多かったけど、場所柄、観光客が多い日もあったし、それから意外と多かったのは、リスボン在住の外国人のお客さん。店の隣にある情緒ある旧市街地、アルファマ地区は、特にフランス人やイタリア人に人気がある地域らしく、そういった国の常連さんも本当に多かった。

週に何回も足を運んで来てくれるお客さんたちを見ていると、私たちの店や料理が、彼らの日常の生活の一部になっていることが本当に感慨深くて嬉しかった。特に保守的と思われているスーツを着ているようなポルトガルの男性たちが、同僚とおしゃべりしながらうちのご飯を食べている姿や、しょっちゅう食べに来てくれているお年を召したご夫婦の姿なんか見ていると、開店してから何年経っても、「国際的な風景だなぁ」とか思いながら、しみじみと眺めてしまう。

こんな素敵な風景を見れることになるなんて、料理を始めた頃は想像だにしていなかったな!

世間がコロナの状況になって、テイクアウトしか販売できなくなり、その期間を経てまた店を再開しても良いということになった時、店にお客さんが戻ってきて賑やかに食事をしている風景を見ると、本当にジーンと目に涙が溜まった。これはきっと、世界中の飲食店や商売をやっていた人たちも同じ思いをしたのではないでしょうか。

毎日のお昼の定食をするということは、その人たちの人生の中の、日常の生活に少しだけ入れてもらえる、という大きな醍醐味があると感じた。


これってとても素敵なことですよね?

焼豚定食


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