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ポルトガル飲食店のまかない事情

この店では、どんな賄いが出されて、どんな風にたべられているんだろう?

て、皆さん、気になりませんか?

私はいっつも気になります!店をやっていた時は、新入りの子が来たら、絶対「前の店ではどんな賄いを食べていたの?誰が作ってたの?」とかよく聞いていました。

だって、賄いって、結構その店の考え方とか、システムとか個性が出ると思うのです。

ちなみに、私の店では、料理人チームがスタッフ全員分を昼と夜用意していました。賄いに関しては、私は思い入れがとても強いので、後日ゆっくり書こうと思いますが、最終的に落ち着いたのは、料理人の間で当番制にして、営業時間前に、皆で食べるという感じ。

いつも食事しているテーブルに予約が入っている時は、カウンターで賄いを食べる時も。

今までポルトガルの色んな店に、イベントや研修でお邪魔してきいましたが、それぞれ違っていて楽しいです。

先日まで研修していたベーカリー、ISCOでは、朝ご飯は、もちろん美味しい焼きたてのパン!それぞれ自分の好きなタイミングで好きなようにコーヒーをいれ、好きなパンをとって食べるという感じでした。これって、自分で売っている商品の味を知るためにも、その商品について色々とお客さん作り手と日常で話せるから、めちゃくちゃ大事だと思います。自家製のハムとこだわり抜いて選ばれたサンドイッチ用のチーズもあるので、それでサンドイッチだって勝手に作って食べたりしてました。 

週末、夜にもディナーの営業があるときは、近所の馴染みの食堂で美味しいカレーなどをスタッフの誰かが全員分買いに行って、皆で店のテーブルを囲んで食事していました。もちろん自家製パンもお供に!ISCOには料理人が1〜2人しかいないから、これも潔くて良いのかも。

パン職人リーダーのジョアナは元々料理人で、料理することに対するハードルが高くない。ある日皆でパンを成形している時に、「あ!お昼に何を作って食べるか急に思いついた!クロックムッシュ食べたい人?!」と店のチーム全員に聞いてまわって、全員分のクロックムッシュを作り、パンの捏ね台を皆で囲んで熱々のオーブンから出てきたやつを頂きました。こうやって全員でテーブルを囲んで食べるのって本当にいいな、とつくづく思う。ちなみに私はずっと飲食店をやっていたから、早食いな方だと思っていたけど、みんなはさらに食べるのが早くて、結局私が一番食べるの遅かったのには驚いた。。


このベーカリーISCO以外では、去年の11月に、コインブラという街のホテルに、日本代表ラグビーチームの食事を作るという仕事で、約1週間ホテルに泊まり込みながら、ホテルの厨房の一角を借りて仕事をしたことがあり、そこでの賄いも夢のようだった。

朝食の準備もあったので、朝5時に厨房に入り、5時半くらいになると、ホテルのビュッフェ用のパンが次々と焼き上がるのを横目に仕込みする。すると、早番の厨房のおばちゃんたちに手招きされて、「カプチーノ飲むかい?」と聞かれ、コーヒーをいただきながら、「どれでも好きなのお食べ」と焼きたてのミニクロワッサンや、オムレツを毎日頂いた。

お昼になったら、ホテル専属の厨房チームの皆さんに、「今から皆でお昼ご飯に行くけど、一緒に行くか?」と誘ってもらい、地下の社員食堂に案内してもらった。社員食堂は、ホテルの従業員全員が食事をする場所で、これは厨房チームが用意する。ビュッフェの調理の時に一緒に多めに作ったものだったり、社員用に別に作ったものだったりしたけど、きちんとスープ、サラダ、メイン、デザートまで用意してあって、それぞれビュフェスタイルで自由に取って食事できる。この時のラグビーチームの仕事は、私と助手の夫の2人体制で、朝から夜まで休む暇なくぶっ通しの仕事だったので、これはものすっごく助かった!しかも味も優しくて美味しいポルトガル料理。胃に沁みた。

ホテルの食堂で頂いた賄い。鶏の串焼きとパスタ、野菜スープ

こんな感じで、場所ごとにまかない事情は色々と変わってくる。こういうのを覗き見するのがとても楽しくて好きだ。一つ、素晴らしいことだなぁと思ったのは、誰も携帯を見ながら食事なんてしないこと。皆仲間と顔を合わせて、おしゃべりを楽しみながら食事をする。食べ物の感想も言い合う。これってものすごく大切で、素敵なこと。私は自分の店で、携帯をチェックしながらご飯を食べている従業員や、仕込みに追われてちゃんと一緒にテーブルを囲んで食事できていなかった料理人たちを厳しく注意したり、根本的にそれを直したりできなかったこと、これは今でも一番悔やまれて反省している。

これからも、色んな店の賄いを覗かせてもらいながら、綴っていこうと思います! 

Tasca Komeの厨房で賄いを用意しているところ。約2年前。


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