節分の恵方巻き in ポルトガル

「ちょっとぉ!!喋ったらだめよ!最後まで食べてからね!」

おしゃべり大好きなうちの従業員のブラジル勢や、ポルトガル人たちは、夜のサービスが始まる前に、厨房のチームから出される恵方巻きを、その年の恵方を向きながら食べていた。

こみ上げる笑いを堪えて、お互い目くわばせしながら必死で食べている。そして日本人スタッフたちも、そんな同僚たちの様子が楽しくて、笑顔いっぱいの顔でなんとか恵方巻きを食べ終える。

うちの店のチームは年によって違うけど、日本人が私を含めて3、4人、その次に多いのがブラジル人で、その他にポルトガル人やウクライナ人がいる。

そもそも節分に恵方巻きを食べるというのは、どうやら元々関西の風習らしく、うちの店の関東組はいまいちピンと来ていないらしい。関東組でさえそんな感じなのに、他の国の子たちは「節分」という存在も知らない上に、恵方巻きの一本をしゃべらずに、皆で同じ方向を向いて食べないければいけないという、その奇妙で摩訶不思議な日本の風習に、面食らったに違いない。ちょうどそのタイミングで新しく仲間入りしたフタッフなんかは、これは風変わりで変な店に来てしまったと思っていたことだろう。

大体、恵方巻きという文化自体が日本でも比較的新しいという。でも私や夫は小さい時から恵方巻きを食べて育った。だからやっぱりこの儀式は私たちがここリスボンで店をやっている限りは続けたい。だってこれは、うってつけの楽しく伝えられる日本の文化だから。

こんな感じで、何か季節の行事やイベントを行うたびに、チームの皆にその説明をして、さらにうちのお客さんたちにその説明をしてもらう。お客さんたちも、うちに来ると、少し日本の文化に触れることができる。だから、私も伝えるために改めて調べたりして、とても勉強になる。日本みたいに四季がはっきりとしていないポルトガルだから、こういうことで、日本の四季を思い出して、日本人スタッフ同士で思い出を語り合ったり、想いに耽ったりもある。意外と海外にいる方が、日本の文化に対して積極的に触れ合ったりするのだ。

店で食べていた恵方巻きの中身は、海老、干瓢、ほうれん草、胡瓜、卵焼き、たくあんなどだったと思う。いわゆる太巻きだ。一本丸々というのはちょっと食べきれない人が多いから、これの半分を1本として食べていた。小さい時は苦手だった甘辛い干瓢も、今は美味しいと感じる。日本人以外のスタッフたちは、美味しいとか美味しくないとかいう好みよりも、この摩訶不思議な、きっとポルトガルでもここでしか体験することがないであろうこの行事に参加していることが興味深くて、笑いを堪えながら頬張っている、という感じである。

その日は夜の一品料理のお品書きにも恵方巻きを加える。説明をすると、せっかくだからと興味を持って頼んでくれるお客さんもちらほら。ただ、せっかく予約して楽しみに恋人や家族、友人と来てくれているのに、食べている間は話をしてはいけない、というはちょっと申し訳ないというか、なにかお客さんも食べることを戸惑うと思うので、本当に希望する人以外は、いつも通りに10貫に切ってお出しする。

そういう感じで、ポルトガルの店でもすっかり毎年の慣しになっていた、節分の恵方巻きでした。

あ、でも豆まきは店の掃除が大変だから、「鬼は外!福はうち!」と心の中で念じるだけでした!

これから食べます!

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