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『THERE WILL BE NO MIRACLES HERE』を観賞してきました。

誰かの「美意識」が詰め込まれた作品やアートに触れることで、自分の中の感性に"奥行き"が出てくるように思えるので、最近は特に、気になった芸術は意識的に楽しむようにしています。

でも、せっかく体験しても時間が経つとどんどん記憶から抜け落ちていってしまうので、簡単にnoteに書き留めておこうと思います。

今回行ってきたのは『THERE WILL BE NO MIRACLES HERE』という、写真家の藪田修身さんがMr.Childrenのレコーディング風景を撮影された、インスタレーション作品。

私はこの「インスタレーション」の意味をよくわかってないままチケットを買って、実際行ってみるとちょっと思ってた感じと違ったので(笑)、今改めてその意味を調べてみました。

インスタレーションを一言でいうと、展示空間を含めて全体を作品とし、見ている観客がその「場」にいて体験できる芸術作品のことをいいます。

☝︎ググって一番最初に出てきた記事から引用。

ふむふむ。「体験する芸術」という感じらしい。

イベントページの説明にも、

<ご来場にあたって>
ご来場の際、お客様が普段使用されているデバイス(MP3 、 iPhone etc..) およびイヤホン・ヘッドフォンをご持参ください。
会場内では、お客様の好きな音楽を聴ききながらインスタレーション作品をご鑑賞いただきます。

って書いてあって、主催者側からは特にBGMは設定していないので、自分の好きな(ミスチルの)音楽を聴きながら楽しんでねって感じなのね、と思っていました。

これはおそらく、飛沫感染のリスクを下げるための工夫でもあるのかなと思います。みんなイヤホンしてたら、誰かと一緒に来てもしゃべらないもんね。

「レコーディングドキュメンタリー」

時間を区切っての入場で、占いの屋敷みたいな薄紫のカーテンを通って暗い会場内に入ると、壁に写真がどーんと、数秒ずつスライドショーのように投影されていました。来場者はそれぞれイヤホンをつけて、静かに、流れていく写真を思い思いに見つめています。

私はてっきり、"写真展"のように壁にパネルとかに入れられた写真がたくさん飾られていて、それを来場者が自分のペースで歩きながら眺める展示のような感じかなと思っていたので、外から見て「すごい狭そうな会場だな??」と思ったけど、そういうことだったのか〜〜〜〜!と納得。

最初、このスライドショーはよくあるイントロダクションみたいなものかなと思って、チラ見してさっさと次に進みそうになったけど、あぶね。「これ」が、まさに今日私が見に来た作品そのものだったわけです。

新しい。800円ってやけに安いなと思ったけど、省スペースなせいでしょうか笑。アリですね。おかげさまで気軽に行くことができました。

写真は左右に分けて同時に2枚写されていて、それぞれ違うものが流れていました。ずーっとみてたら結局内容は同じなのかもしれないけど、ちょっとそれも確信が持てなくて、最初は貪欲に両方見てました(笑)。

でもやっぱり一つに集中したほうがシーンの繋がりがわかるなぁと思って、しばらくしてからは自分の正面に流れる写真だけ集中して見るようにしました。

写真は2019年から2020年にかけて、ミスチルの4人がロンドンとロサンゼルスのスタジオで、現地スタッフと思われる人たちとレコーディングをする様子が、ごく当たり前の日常のように切り取られていました。

会場内に掲示されていた藪田氏のコメントでも解説されていましたが、写真は本当にその場にいる人が"ざくざく撮った"って感じの自然なものがほとんどで、いい感じのやつを選んだり、編集したりはしていない「生っぽい」感じでした。

見た人がありのままに感じられるように、「あえて選んでいない」とのこと。そしてフォトグラファーの藪田氏自身も人間だから、時間とともに「いいと思う」ものは変化していくので、意図的にそうやって主観的な選択を排除したそうです。

「聴く音楽によって」感じることが変わる

で、自分で音楽を持ってこいとのことでしたが、私は今音楽を買ってDLして自分でプレイリストを作ったりしないので、Spotifyにある誰かが作ったミスチルのプレイリストを最初はイヤホンで流してたんですね。

それはそれでよかったんですけど、目の前にはここ1〜2年の、「今の時代」にアーティストとして作品を作っているミスチルの4人の姿が映し出されているわけで。

まだ彼らも若くて、もっと青くさくって、音楽を作るときに心に描いているものも、今みたいに社会とか世界とか未来の子どもたちとかじゃなくて、たぶん自分たちが売れることとかモテることとかそういう「ベクトルが自分に向いてる」モチベーションでやってた頃に作られた(いや、実際は知らんけど(笑)。まぁでも20代のアーティストってみんなそういうもんじゃん??)彼らの曲を聞いてると、なんかちょっと違うな〜って感じてきて。

だって『君がいた夏』のレコーディングしてた頃なんて、絶対わざわざ海外のスタジオ行ってないと思うしね笑。

そこで、SpotifyからYouTubeに変えて、2020年の紅白で初めて聞いた『Documentary film』を流すと、すごくしっくりきました。

あーこうやって彼らの音楽は生まれているんだなーって、作品を作って生きている人間の"生き様"を、まさにドキュメンタリーとして垣間見ることができたように思えました。

物販には写真集の見本があって、そこにも藪田氏のこの作品に関するコメントが掲載されていたのですが、「空き時間にロンドンの街を散歩していると、前日に聞いた『Documentary film』の素晴らしい演奏が頭から離れなくて。自分なりに、彼らの素晴らしいレコーディングを人々に見てもらえる方法を考えた」というような主旨のことをおっしゃっていました。

うーんいいですね。とてもよい作品体験でした。

そして『Documentary film』という曲自体も素晴らしいです。昔好きだったけど、最近のミスチルあんまり知らないな〜って人も、聴いてみたらきっと「あぁやっぱりミスチルの音楽、いいな」って感じるんじゃないかなと思います。

「奇跡の1枚」はないかもしれないけれど

アーティストらしい演奏中のかっこいい様子や、記念にスタッフ全員で最終日に撮りましたって感じのみんないい顔してる写真とかもいっぱいあったけど、私が見たなかで(1時間弱は会場にいた気がするけど、たぶん全部は見れてない。多すぎる!)一番好きだな〜と思った写真は、スタジオの建物の前でミスチルの4人が立ってるやつです。

それも、ジェンさんと田原さんとナカケーさんが3人で、横になった桜井さんを抱えてみんな笑ってるやつ(笑)。

40すぎたおっさんたちが、楽しそうに仲良くやってるのって、なんかもう微笑ましいですね。こういう彼らの関係性とか、共有している楽しさとかもぜんぶ、あの音楽の血となり肉となっているのでしょう。だってアーティストは、見るもの・出会うもの・感じること、すべてが作品のインスピレーションだもんね。

藪田氏も「『奇跡の1枚』みたいな写真はないかもしれないけど、見た人がそれぞれお気に入りの1枚を見つけてくれたら」とコメントされていました。

私もかつてファンクラブに入っていたくらい好きだったのに、最近のMr.Childrenの楽曲は全然追えてなかったのですが、またライブができる情勢になったらチケットをゲットして生で彼らの音楽を聴けるように、情報をチェックしておきたいって思いました。

端的に言うと音楽聴きながら写真見ただけですが、とてもエネルギーを充電できたよい休日となりました。


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