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小説『衝撃の片想い』第二部【再会】⑤「虐めの決着」2

【あらすじ】エボラ出血熱の亜種に感染した末永葵を治療するために、阿武隈川の上流の小屋にいた友哉は、末永がセラピストになった悲惨な経緯を聞く。だが、テイレシアスと末永は、執拗に友哉を狙う。かつてルワンダ共和国で、家族を殺されたツチ族の女が、殺し屋になり、テイレシアスに入信。友哉を殺しに阿武隈川にやってきた。一方、都内に一人、残った涼子は学校の虐めで孤立していた頃を思い出してしまう。
孤独、孤立、差別、虐め…。
RDの誤発射が涼子を襲う。しかし、赤い殺人光線が向かった先は…。自殺願望がある女性の哀しみを進化した脳で止めるリュウ。涼子との命をかけた愛の対決。

◆(8月10日、時系列の間違いを直しました)

阿武隈川の上流の近くにある廃屋に、末永葵がいた。
「あなたは誰を一番愛しているの?」
友哉の光を使った治療と栄養剤、血清で、末永のエボラ出血熱は快癒している。ソファベッドの上に座った末永葵は、セラピストの目をしていた。いや、女の顔をしていた。パジャマ姿で、だが、痩せ細っているからか色気は無くなっている。
「美を愛する男は、個人を愛さない。すべての美しい者を愛す。ただ、遠くに行ってしまう女には興味がない」
「プラトンの時代みたい」
「ゲイにはなれなかった」
「プラトニックにも。あなたは女を犯し続けている悪い男。で、誰が一番愛しいの?」
「そんなにやってないって、人並みだよ。なんでそんなことを聞くんだ」
「ソバットからの命令よ」
「ソバット? ああ、あの…。なんであのデブが俺の女のことを聞く? そんな嘘で、なんでも喋ると思うのか」
「ボスは若月だけど、暴力のトップにいるのはソバット。ふんわりと浮いた存在で、ひょっとすると彼がボスかも知れない。ううん、わたしがボスになる時間もある。若月と寝ている時とかね。少なくとも、ソバットが切れると、若月は殺されてしまう。あなたは超人だけど、彼は傭兵のような男、その仲間も」
「あっそう。日本のお巡りさんも強いぞ」
「なに、その余裕。桜井真一は、群馬県に出張中」
「スマホを取り上げたのに、情報の交換はどうやって、やっているんだ」
錆びれた箪笥の引き出しに手をかけると、
「そこにはわたしの下着が入ってる」
と言った。
「俺が買ってきたやつだ。下の町のスーパーで」
ショーツやブラの間に、紙きれが数枚、隠されていて、友哉たちの行動に関する情報などが詳細に書かれていた。
「変態ねえ。目ざとくそこを見つけるなんて。一度、穿いたのもあるのよ」
友哉は彼女の話を無視して、玄関の扉を開けて、地面を見た。犬の足跡がある。
「若月は犬も訓練しているのか、日本にそんな神経質な男がいるなんて驚いた」
末永葵の臭いを追いかけてきた訓練された犬が、様々な情報を運んできていたのだ。背中に背負ってくるのだろうか。
友哉が、リングの赤い光を元にトイレに向かう。
「その和式のトイレもなんとかならないの? 昭和じゃないんだから」
トイレの小窓に小型の発信機があった。PPKでそれを壊した後、トイレから出た友哉は、
「兵隊がやってくるようだな」
と言った。
「誰も来ない。エボラの亜種が怖いから」
「それもそうだ。だが、もう治ってるぞ」
「治っても、きっとわたしは生涯孤独よ。エボラに感染した過去は消えない。セックスの過去や癌の過去、万引きの前科、自己破産の過去…。大衆はなんて厳しいんだ。人の過去を決して許さない」
「日本一のセラピストが嘆いていたんじゃ、俺にも励ます言葉が作れないな」
苦笑いをしてしまった。
「宮脇利恵は男たちと遊んだ過去があって、絶対に、あなたが一番愛しているのは宮脇利恵じゃない」
「好きな女に順位を付ける悪趣味はない」
「そんな男はいない。人間は自分の子供にさえ、順位を付ける」
「悪いが、俺と親しくなった人たちに俺の性格を聞いて回ってくれ。俺は唯一無二。どこの人間とも考え方が違う。黙れ。恋人に順位はつけない。もう一度言う。黙れ」
「……」
末永は大きく深呼吸をした後、
「暴力的な男の言葉には屈しない。あなたの一番は松本涼子か奥原ゆう子だけど、奥原ゆう子を命がけで守った様子はないから、結局、松本涼子かな。彼女に以前に会った時には利恵があなたの最愛の女だよって教えたけど、あのアイドルが好きなのか。ソバットに知らせる必要はなかったね」
と言った。
「ゆう子はただのストーカーなんでね。で、涼子をどうするのか。あいつはかまってちゃんだから、あんたらがつけ狙うと逆に喜ぶぞ」
「あなたがテイレシアスに屈服しないかぎり、一生、松本涼子に付いて回る。わたしは伝言係り。そっちも誰がリーダーか分からない。あなたが率先して悪党を倒している様子もないの。今年に入って、女児誘拐殺人事件が二件あったけど、北海道と愛知県。犯人は捕まっていない。福岡のコンビニ強盗で、女性が二人死んでいるけど、あなたが駆け付けた様子もない。だけど、東原欣二って連続殺人魔はあなたが捕まえた。警視庁に謎の美人占い師と一緒に潜入した男がいて、桜井真一と行動していた。その美人占い師。身長が160センチくらい。細身、膝上のスカートに黒いタイツ。宮脇利恵っぽい。パク・ミケンジョを殺したのも当然、あなた。だって、パクの遺体があった山の近くの温泉旅館にあなたと松本涼子が泊まってるんだもの。これは確定。奥原ゆう子は、わたしと若月の前には現われたけど、事件の現場にいる様子はない。ま、黒幕がいたとしても中心人物はあなたのようだから、あなたに伝えてるのよ」
「黒幕は手を汚さないとしたら…」
「奥原ゆう子? まさか、愛らしいあのアイドルちゃん?」
「あんたの嫌いな大衆じゃないか。つまり人間」
「…」
末永葵は友哉から目を逸らし、
「悪である人間があなたを動かしている? 含蓄のある台詞を言うけど、あんまり面白くなかったわ」
と言った。
「少年時代から大衆に嫌われていたんでね」
やや自虐的に言った。母親は一般的な考え方は持っていない個性的な人間だったが、クラスメイトにも教師にも嫌われていた。友人は、在日朝鮮人の浦川夕子と少年の友哉を抱きたがったゲームセンターにいた店員の大人の女とその女の男だった。
「奥原ゆう子と桜井真一は、一緒に群馬県の方に出かけた。なんの仕事かしら。あなたはここ阿武隈川。都内には、ソバットたちと松本涼子だけが残っている」
末永が気を取り直してそう言った。
「仕事じゃなくて、温泉で遊んでるよ。涼子を狙っているようだが、あいつにはオタクが千人以上ついてるから、無駄だと思うぞ」
「オタク? アイドルオタクがソバットたちと戦えるの?」
末永が腹を抱えて笑ったが、すぐに疲れが出たのか息切れをしていた。友哉の言うオタクとは、トキの仲間たちのことだ。
――こうなると思った。かわいそうに、ソバットたち。もし、リュウが涼子の護衛にきたら。…うわ、怖すぎる
友哉が笑いを堪えているのを見た末永が、「何がおかしいの?」と言い、目を吊り上げた。
「まあ、怒るなって。涼子の心配はしていない。屈服ってどうしたら屈服になるんだ。指でも詰めるのか」
「あなたの資産をすべてテイレシアスに渡して、その不思議な銃も東京湾に捨てる」
それを聞いた友哉が徐に、PPKを小屋の隅に投げると、それがあっという間に彼の手の中に戻ってきた。
「すまんね。捨てても戻ってくるんだ」
葵が言葉を失った。
「涼子を狙うのか。昔、女を最後に愛そうと決意したことがあった。その時の女だ。やめておけ、俺が本気になったら、エボラどころじゃなくなる。ソバットなんか秒殺だ」
「…」
末永葵が、大きく息を吐きだし、神妙な顔で友哉を見た。
「秒殺。あのソバットを…」
「俺の仲間でもソバットは秒殺される。涼子を狙っているなら、犬もいないし、ソバットに連絡はできないな」
「あの男は、元軍人で義勇兵になった後、海外のテロリストと繋がっている。この世から消えてくれた方がいいかもしれない」
――ほう、確かに常識的な言葉も作る。利恵をカウンセリングしていた頃は真面目に働いていたし、それほど悪人じゃないな
「松本涼子は、今は愛してないの?」
「俗に言うと、裏切られた。だけど、複雑だ」
「複雑だと思って、自分を慰めているのね」
「セラピストなんだろう。もう少し、優しくしてくれないか」
「健康だったら、ベッドで優しくしてもよかった」
「いくらで」
「やり方によるかな」
「断るよ。気を遣ったセックスは楽しくないんでね」
「それが男性本意」
「男性本意にしてほしいって女をなるべく抱いている」
「女は嘘を吐くから。男性本意のセックスでいいと言ってもそれは嘘。後で怒り出すわよ。宮脇利恵みたいに」
「テイレシアスは今日で終了だ。俺はしつこいのは嫌いでね。利恵への侮辱は聞き飽きたし、涼子を狙う話も俺を怒らせている」
「やっぱり松本涼子が一番好きなのね」
「あいつは心が弱い。今の利恵もそうだが、あいつは昔から弱い。そんな心が弱い女の子が俺の近くにいるから、守っているだけだ。それが長く続くと愛と言うらしい。これを飲んでほしい」
友哉が、以前にトキの仲間からもらったターサを末永に渡した。
「毒?」
「君を殺す意味がない。ここまで連れてきて」
「そうね」
末永はターサを飲むと、
「なんか体が軽くなってきた。なんの薬?」
と聞いて微笑んだ。
「俺が調合した栄養剤だ」
と嘘を吐く。
「そうか。ありがとう。でもごめんなさい。もうすぐ、あなたを殺しに強い女がやってくるはずよ」
と末永が言ったその瞬間、小屋の扉が銃弾で撃たれた。薄い木の扉が蹴られて開くと、45口径を持った女が現われた。口に煙草をくわえたままで、余裕綽綽だ。しかも黒人である。
「なんでそんなに素早く避けるの?」
友哉が椅子の後ろに隠れて、銃弾を避けたのを見て、口惜しそうに言った。
「おい、ノックもしないのか」
「わたしが呼んだの。アフリカのルワンダで友達になった女。殺しのプロよ。タチ、この男は強いけど、女には手を抜く。撃ちまくって」
葵に銘じられたタチと呼ばれた黒人の女が、友哉に向かって三発、発砲した。友哉は、自己をプロテクトしておらず、PPKが吹っ飛んだ。一人になっている涼子を助けに行くために力を温存していたのだ。リュウのような凄腕が来ているとは限らない。
PPKは偶然、ゴミ箱の中に入ったが、そこから再び、友哉の体のどこかに戻ったことは友哉しか知らない。しかし、友哉はPPKを握らずに、口を真一文字に結び、タチをじっと見ている。
「こんな弱い男にテイレシアスやパク・ミケンジョがやられているのか」
煙草を吐き出すように口から捨てたタチは、銃口を友哉の胸に向けた。さっと背を向けた友哉が小屋の窓に身を投げるようにして飛び込む。窓ガラスの破片が飛び散った。タチが追うようにして銃を乱射した。そして窓際に走った。
「命中したはず」
と言った瞬間に、タチは首をホールドされていた。背後に回った友哉が、裸締めをしている。
「ゆっくり小屋を一周してきた」
タチが友哉の足を踏みつける。ヒールの付いた革靴だ。しかし、友哉はひるまない。肘打ちで友哉の腹を突くが、友哉の頑丈な体には効かない。そして、首に巻きついた細い手首が彼女に呼吸をさせない。
「末永さん、俺は正義の味方じゃないし、女も殺せる。特にこんな凶暴な女なら躊躇がない」
「どこで訓練された…日本人なの…」
「その台詞も聞き飽きている。最初はへっぴり腰だったが、修羅場をくぐってきたんでね。おまえは格闘技もやっているようだが、少々、動きが遅いぞ。つまりダイエットしろ」
タチが持っていた銃を床に落としてしまった。もう失神寸前だ。その次の瞬間に首が折れる音がした。
末永葵が悲鳴をあげた。
「わたしの友達を!」
「次はおまえだ。堪忍袋の緒が切れた。心臓が止まるまでレイプしてやろうか。男性本意がレイプなんだろう?」
友哉が、タチの首から腕のホールドを取ると、タチはその場に崩れ落ちた。


温泉から帰宅したゆう子が、マンションのリビングでAZの修理を懸命にしている。
と言っても、さかんに話かけているだけで、時折、子猫を撫でるように擦ってもいた。そこに利恵がやってきた。
「利恵ちゃん、体調はどう?」
ゆう子がそう訊くと、
「病院で告知された。本当は余命半年のはずなのに、なぜか、まだまだ長生きできるって」
と小さな声で教え、ゆう子が「良かった」と言うと、無言で頷き、AZが置いてあるテーブルの前にすっと座った。少々、真顔で、それが挙動不審に見える。
「ヤシさんという方から、わたしのスマートフォンにメールがあるのが分かりました。きっと、こっそりやってきたトキさんの仲間が今、開いたのね」
ゆう子にスマホを見せると、
『利恵さん、AZに何かあった時はお願いします。AZの中におられる方は、利恵さんの愛が必要です。ヤシ・マリガン』
と書かれてあった。
「利恵ちゃんの愛?」
ゆう子が目を丸めた。
「友哉さんに聞きました。皆を、怖いウイルスから助けたそうですね。それで死んでしまったと」
と、AZに話しかける。
「わたしのような女が、あなたを助ける理由が分かりませんが…」
利恵はゆう子の左の薬指にあるブルガリのリングに右手を近づけて喋っていた。ゆう子は、呆気に取られている。
「あなたはきっとトキさんの世界で罪を犯した人…」
すると、AZの角がうっすらと光った。緑色だった。
「死んでいたはずなのに…」
「仮死ね。リクさんたちが心配してますよ」
と言い微笑んだ。ゆう子にはその微笑みが、まさに女神のそれに見えた。
「AZの中にいるあなたは、あなた自身のコピー。あなたはトキさんの世界でのんびり生きていますね。それで罪を償ったつもりですか」
利恵の微笑は消え、ほんの少しAZの中心を睨んだ。
「あなたはとても強い男の人。ヤシさんがそう言っていました。けれど友哉さんには勝てません。友哉さんは、人に謝ります。女性にも。そして、わたしやあなたほどの罪は犯していないのに、孤独の道を選んだ男性。そんな責任感の強い男性を愛さなかったわたしと、無責任なあなたは気が合うようです。一緒に死んだふりをして、残りの人生を気楽に生きますか」
利恵の言葉にAZが反応した。
文字が浮かんできた。
『利恵さん、私は利恵さんの守護神に選ばれた男。だけど、利恵さんを助けに行かなかった。私は晴香様の守護神になると思っていた。トキ様は私を信じてくれなかった。守護神という言葉にも抵抗があった。トキ様の先代から急に女神を崇拝するような取り組みが生まれた。理由は分かっていた。欧州の女たちを殺すのを止めさせるためだと。けれど、私には抵抗があった。私はその頃若かったけれど、欧州の凶暴な女たちは殺されて当然と思っていたし、私自身が神のように言われるのも嫌だった。RDを操れる者を神格化することになった時に、
いつも教育の場でリクに負けていた私は自動的にリクの上に立ってしまった。リクよりも、私の方がRDの扱いが上手かったのです。リクにすまないと思った私はソドを倒しに一人で地中海に向かった。そこは女たちがソドとソドの側近たちを囲んでいる快楽の世界だった。私がソドにRDを向けた時、女たちが邪魔だった』
「女を殺したのですね」
『はい』
「わたしも男性を死なせたことがあります。やっぱり一緒ね。このまま、遊んで暮らしますか」
『謝らないと、リクや皆に。そして、あなたにもお礼を言わないといけない。だけど、利恵さん、あなたに会うのが怖い。新宿の公園ではあなたが絶対にいて、私にはRDもなくて、私はただ謝るだけで殺されていく、それでヤシたちが私に幻滅する。また、幻滅させてしまう。仲間たちを』
――未来とシンクロしている? そんなバカな。
ゆう子が首を傾げるが、AZの言葉がすべて過去形ではないことから、ゆう子は、
――膨大なテキストデータだけじゃなかった。脳が強いこの時代の人間とはトキさんの時代の人と話ができるんだ。それが、友哉さん、利恵ちゃん、涼子ちゃん、わたし…。RDがないから助けられないのは、予測できたことで、あの新宿公園の事件ね。罪を犯してRDを没収されたトキさんの世界の強者。例のナンバー3か。そう、シンゲンさんのことなんだ。
ゆう子は、
――RDをトキさんに取り上げられたということは、言うとおり殺人罪か
と肩を落とした。
利恵が眉を顰め、
「けっこうです。あなたのような力だけが強くて、プライドだけ強くて、なんの愛も持っていない男性に助けてもらうのは不愉快です」
と言った。
『利恵さんに嫌われたら、もう私の居場所はなくなる』
「わたしやあなたに、居場所なんて贅沢な踊り場はありません。わたしの居場所は、友哉さんの心の中。彼の傷ついた穴の隙間です。あなたの居場所はどこ?」
「トキ様や多くの人を失望させた…」
「ではその人たちの心の隙間を埋めるため、復活するのです。罪を償うために、勇ましく、そして冷静に走るのです」
利恵のその言葉にAZが弾けるようにして消えた。ゆう子が、「あ、戻った」と言った。再び、ゆう子がAZを呼ぶと、AZはゆう子の手のひらの中に現れた。
『リュウ、台場だ。涼子さんは台場にいる』
そんな文字が大きく浮かんだ。それはエメラルドグリーンに光る力強い指示だった。
「それでいいの」
利恵がそう笑うと、ゆう子が「まあ、さすがだよ、利恵ちゃん」と言って、そっぽを向いた。

台場にある公園でグラビアの撮影をしていた涼子は、カメラマンから、「松本さん、笑顔が足りないよ」と言われて、
「オトリ」
と、カメラに向かってそう言って笑った。カメラマンがきょとんとした。
「すみません。お手洗いに行きたいんですが」
「ちょっと休憩にしようか。涼子ちゃん、調子が悪いみたいだし」
涼子が台場の公園の公衆トイレを見ると、スタッフたちが「行ってらっしゃい」と明るく笑った。
女子の方に入ろうとしたら、そこに男が倒れていた。息はある。
「テイレシアスの方?」
恐る恐る訊くと、
「妙な男に優しく撃たれた。なんだ、あの男は。俺は絶対に死なないらしい。だが、動けない」
「誰だろう。だめだ。ホテルの方に行こう」
近くのホテルに駆け込むと、地下駐車場にまた男が二人、倒れている。トイレに入ろうとすると、そこには肩を撃たれたソバットが倒れていた。
「あ、一番強い奴がもうやられてる」
「松本…涼子…。貴様、何者だ」
「わたしは涼子様」
屈託なく言う。まるで真剣みがない。
すると、
「涼子様とは言いにくいですが…」
と言いながら、銀色のスーツを着た男が現れた。RDをソバットに向けたまま、精悍な顔つきで、目はぼんやりしていて、どこか物静かな青年だ。
「おまえはいったい何者だ。その銃はなんだ?」
ソバットが銃口を彼に向けると、そこにRDの赤い光が命中し、銃は粉々に吹っ飛んだ。
「リクの親友のリュウです。敵は後…」
さっと振り返ると、またRDの閃光が走った。ソバットの部下が右肩を撃たれた。
「殺すのは好まない」
「リュウさん? あなたが…」
やる気がなさそうなリュウを見た。
「私が分かる? さすがAZと話ができるだけのことはありますね。リナもあなたを意識している」
そういうと、涼子を愛しそうに見つめた。涼子も、リュウを女の顔で見た。
――聞こえる。わたしの話をしている二人の声が…会いたかった。リクさんに会えなかった。せめて、リクさんが信頼しているリュウさんに会いたかった。リクさんを説得して、リクさんを私の守護神にしてくれたリュウさんに…
涼子は不意に、
――会いたい。リクさんにも…。行きたい。トキさんたちの世界に
と思った。
「おまえら、どこの組織だ」
ソバットは痛みで顔を歪ませていた。
「隠れた国家だ」
「こ、国家…」
「そのトップにいる方の親友が友哉様だと思ってもらいたい。友哉様を殺すために人質を取るなら、友哉様に関わっているすべての女と娘の晴香様を同時に人質にするくらいじゃないと、貴様らには友哉様をコントロールできない。友哉様は冷静で凶暴で、愛も持っておられる」
「凶暴で愛に殉じる男なんて気持ち悪い」
涼子がいつものように口を尖らせながら言った。
「涼子さんを都内に残し、遠方に出かけたのはわざと。末永葵という女は、友哉様に気があるのかもしれない。彼女の狙いは、理屈が通用しなくなった利恵さんではなく、まともに見える涼子さん。涼子さんを狙うなら仕方ない。テイレシアスを一掃するために、我々が手を貸すことになった」
「エボラ出血熱みたいなのから救ったら、当然惚れちゃうでしょ。だから、許すぞ。なんとかセラピスト」
涼子が誰ともなしに言う。新幹線の中でも、涼子は末永葵を「なんとかセラピスト」と呼んでいた。
「リクも友哉様も、俺に行くように言った。その理由が分からない。こんな原始的な銃しか持っていない男のことで…。…おまえは勝手に病院に行け」
リュウが涼子の腕を掴み、ホテルの地下駐車場から出た。
「わたしはリナから目を離したくない。友哉様にお伝えください。もうこちらの時代のいざこざに巻き込まないでほしいと」
「まだこの時代に留まれますか」
「全然、体力を使ってませんので。ご自宅まで護衛します」
「そのRDを貸してくれませんか」
「は? なぜですか」
「さっき、わたしを痴漢した男がそこにいるの。ちょっとそれで撃ってみたい」
「いいですよ」
リュウが簡単に了解し、涼子では操作できないRDを渡し、ようやく眼光を鋭くした。
――なるほど、本当に涼子さんが自殺未遂を派手にする日だったのか。こちらの時代の悪党しか現れないから、リクの計算違いかと…利恵さんの脳腫瘍が悪化。告知をされたのを悲観して友哉様と無理心中をまたしようとした。歴史はタイムパラドックスで変わり、利恵さんの脳腫瘍は完治したが、涼子さんの自殺願望は消えていない。俺になんとかしろって話か、リク…さすが涼子さんの守護神だ
リュウが公園の一角を見たら、ベンチの上に目付きの悪い男が座っていた。涼子もその男を見ていたから、リュウが、
「わたしが注意してきます。RDは涼子さんには撃てませんよ」
と言って歩き出そうとした瞬間、涼子が、RDの銃口を自分に向けた。リュウは顎を引き、上目遣いで、じっと涼子を見た。
「この銃には欠陥がある。自殺できるってこと」
「涼子さん…」
「動くな。わたしには自殺願望がある。ずっと昔からあるから、けっこうな願望よ。皆、わたしを嫌いだって言う。きっとあんたもだ。涼子班にはわたしのアンチがいるってエンゼルさんも言ってた。シンリさんはわたしと一緒に食事をしてくれなかった。わたしに対する虐めは一生続いている。利恵さんは女神で、わたしは嫌いか。嫌いなのに守っているって義理か。なるほど、学校の教師と同じか。いい加減にしろって。わたしは自殺するか、わたしを籠の中に閉じ込めたあのひとを殺すことしか考えない。そう改めて決めた」
「エンゼル氏なら、あなたを守るために、この時代で言う牢屋にいます」
「え?」
「パクと手を組んで、あなたと友哉様を殺そうとしたジュールという男が、部下に罪をかぶせ、自由の身になったのを見て、エンゼル氏が殺した。その殺人罪で牢屋にいます。彼は捕まる前に、私に言った。涼子さんを守ってほしいと」
「え…」
「リクは私に、今日、行くように命じた。偉そうにね。…そう、あなたのその病気を治すためです」
じりじりと詰め寄るリュウ。しかし、ゆっくりと離れて行く涼子。波のない台場の砂浜に、波の音が聞こえた。それは屋形船が作った波の音だった。
「信じない。わたしを守ってる人なんかどこにもいない。あの人も今はセラピストの所にいる。利恵さんの守護神はたぶんAZの中の人。大事なことは利恵さんに教えている。わたしの守護神は現われない」
「リクなら、涼子さんを助けにいきましたよ」
「…う、うん、ごめんなさい。知ってる」
涼子が項垂れた。
「わたし、病気なんだね。今度はリクさんのお友達のリュウさんが来てくれたんだ」
「利恵さんの守護神も利恵さんをきちんと守れずに…。それに比べたらリクは涼子さんをしっかりと守りました。シンリは食事には応じなかったようですが、リクがすぐにシンリを向かわせたんですよ。自分の命の危険を顧みず、シンリを涼子さんの傍に行かせた」
「会いたい。死ぬ前に…」
「死ぬ前?」
「……」
「自殺はさせません。そして、すみません。リクとは会えません。この時代には一回しか来られないんです」
「だったら…」
涼子は孤独に鳴く捨て猫のような顔で、
「あなたが、わたしをリクさんとエンゼルさんがいる時代に連れて行って」
と言った。
「え?」
ずっと冷静でいたリュウが、目を剥いた。

友哉が末永葵に近寄ると、彼女は、
「こんなやせ細った女を犯して楽しいの?」
と、震えながら言った。
「謝れ。治療してやったのに、恩を仇で返すような真似をしやがって」
「ご、ごめんなさい」
彼女はパジャマのボタンを外し、裸になろうとしている。すると、友哉が葵に近寄り、ボタンを嵌め直した。
「服を着たままやるのが俺の趣味だ」
「す、すみません」
慌てて、パジャマの上下を整える。
「どうした。あそこが濡れてないか」
「濡れてな…。いいえ、濡れてます」
「なぜ、俺を殺そうとした?」
パジャマのズボンの方に手をかける。そのまま下着ごと引き摺り降ろされるのかと思ったのか、それを手伝うために葵は少し、腰を浮かした。
「あなたが好きで…」
「好きだから殺すって、俺はその愛情表現に疲れている」
「宮脇利恵のような女に夢中になるなんて…」
「そうか。久しぶりにもてた」
月明かりに照らされているタチの顔が、よく見ると生気があることに、葵は気づいた。黒人だから気づかなかった。ただ、眠っているだけだった。
「今の俺はスカート捲りしかできない少年だ」
タチは目を開けると、拳銃を探そうとしてさかんに手で床を探った。
「タチ、やめて。佐々木友哉は良い人よ」
「苦しかったか。ごめんよ」
友哉が右手を伸ばして、タチを起き上がらせた。
「首が折れた音は、俺がこのリングで作った擬音だ」
「さっき、セックスの会話が聞こえていた…」
タチがそう呟く。
「俺は調子に乗って、男に暴力的になった女は嫌いだ。だから一度はお仕置きする。それから、自分からは人を攻撃しない。君が扉をノックして挨拶をすればもう少し優しくした」
友哉が古時計が置いてある箪笥を見て言った。町のスーパーで、山小屋に籠っている末永葵の着替えを大量に購入してある。
「服フェチだ。女の裸体に触れると…」
友哉が口を噤んだ。
「あんた、セラピストなら守秘義務があるか」
葵が頷くと、
「泣きそうになるんだ。だから、コスプレが好きなんだ」
と、友哉は言った。
「タチが帰ったら、抱いてもらいたいけど、シャワーがない」
風呂はなく、だが清流のような川が近くを流れている。葵はそこで体を洗っていた。エボラのことが気になり、桶で水を汲み、体を洗った水は森の中に捨てていた。
「泣けばいいのに…」
友哉の顔を見て言う。末永葵はセラピストに戻っていた。
「俺は泣かない。泣いても、母も父も戻ってこなかった。男が泣くことに意味を見出せない」
「地獄を見てきた子供なのね」
「地獄を見たのは、交通事故に遭った時、見舞いにきた友人が娘のことで泣いた時だ。長い話になるから、これは説明できない」
「そう。泣いた方がいいわよ。脳が休まるから。わたしは、生きている意味が分からないほどの地獄を味わった。ずっと泣いていた…」
葵がなんとなく呟く。
「大学生の頃、お父さんが覚せい剤で逮捕されたの。上野の安っぽいラブホで女から手に入れたのよ。お母さんは離婚して鬱になって、友達は皆、いなくなった」
友哉が葵の隣に座ると、タチは二人の正面に胡坐をかいて座った。
「自殺しようと思っていたら、学生食堂で知らない学生が話しかけてきた。相談事があるって。彼女は、わたしの父親のことを知らない一年生だった。なんで、わたしにって聞いたら、真剣な目で外を見ていたからって」
葵が、窓ガラスが割れた窓の外を見た。夕闇中に満月が見えた。少し欠けているが、眩しく光っている。
「彼女は大学ってお酒とセックスとゲームの話しかないって、嘆いていた。わたしはアドバイスしたの。何を言ったか覚えてないけど、アドバイスが的確だったらしくて、彼女は一週間後に、わたしにお礼を言いに、また食堂にやってきた。誰かが、末永は覚せい剤をやってるかもしれないから、買いにきたのかって言った。そうしたら彼女、その男子学生を殴ったの」
「いい女だ」
「今は結婚して一児の母親よ。わたしは彼女との出会いがきっかけでセラピストかカウンセラーになると決めた。それからずっと男は嫌いで、セックスは対等にやって、恋愛もしなくて成功を収めた。やっと好きな男が出来たら、恐怖のどん底に突き落とされた。また地獄がやってきた」
「エボラ出血熱の亜種か」
「そう。こんな不幸。いったい、なんの因果応報か分からない。徳を積んできたのに…」
「徳を積んだら不幸になるのは、旧約聖書に書いてある」
「『ヨブ記』? それをセラピーで言っても患者は救われない」
「アオイ…」
タチが話しかけた。
「エボラなら、この男が治してくれた。これからは派手に暮らせないかもしれないけど、もう地獄は終わったよ」
「あんたもあんただ。親友の病気を治療している男を殺しにやってくるのか」
「エボラが治ったアオイを監禁して、レイプしていると聞いたから…」
「ごめんなさい。嘘を言って、タチを呼んだの。さっきの話に戻っちゃう」
「やれやれ…。都内の涼子が心配だ。いいか。5月2日、俺には重大な仕事がある。それまではここにいてほしい。街中を歩く勇気も君にはまだないはずだ」
葵は黙って頷いた。そして、
「本来女は、世間に溢れたよくある言葉じゃなく、男性の行動力で口説かれる。若月もあなたも、よく動く男なの…」
と言った。

「あなたがリクさんの親友なら、それなりにわたしを愛しているはずだし、強いはず。知ってる。脳が進化した人たち。あの人の子孫…」
涼子をトキの時代に運べば、リュウは死ぬかもしれない。涼子もただでは済まない。極端に老いる可能性もある。リュウは、その計算が出来ていないと、涼子に説明した。
「わたしがトキさんの世界に着いたらおばさんになってもかまわない。わたしはわたしを一番愛している男性を見たいだけだ」
「それは友哉様です」
「違う。あのひとじゃない。リクさんでもないかもしれない。だったら、リュウさんでもいいの。わたしは寂しいんだ。…リングを光らせるな!」
リュウの左手の指を睨んで言う。RDの銃口は自分の喉に押し付けていた。
「わたしの脳をハッキングするなよ。わたしは父親まで裏切って泣かせてしまった。顔だけで、なんのとりえもない取り返しのつかないバカ女。反省しても反省しても答えは一つだけ。わたしは生まれてこなければよかったってこと」
「なんて言いましたか」
リュウが声を震わせた。目は、そう愛する者を疑うような絶望的な光を浮かばせていた。それは涙だった。
「そ、そんなことばかり言ってるから、友哉様の小説のヒロインに疑いがかかったんですよ」
「なによ、それ」
「『また妻に会いたい』、です。あれが涼子さんの事を書いたのか、妻は架空の人物なのか、我々の世界で大いに揉めました」
「知らないよ。そんなの。強いて言えば、あれはわたし」
「そうですよ。それはもう判明しています。そもそもエンゼル氏が涼子班を増やすように、トキ様に直訴したのに…。シンリには偉そうに言っていたのに、それを躁鬱って言うんですよ」
「悪かったな。説教すんな。十秒待ってやる。決めろ」
「利恵さんは悪女かも知れないけど、殺意はない。涼子さんは誰に対しても殺意と憎悪がある。その違いです」
「わたしはアイドルだ。誰にも殺意なんかない」
「友哉様があなたを好きだと言っても、エンゼル氏が好意を持って帰ってきたと言っても、リクが守護神として助けに行ったと言っても、信じない」
「信じない。皆、口だけ。かわいいって言うだけ」
「わかりました。連れて行きます。来なさい」
リュウが手招きをした。
「死んでもいいの?」
「仕方ありません。涼子さんを死なせるわけにはいかないので」
「わたしの代わりに死んでも後悔しないの?」
「涼子さんを死なせたら、リクにもリナにも失望される。だったら死にます。さあ、来なさい。ああ、けっこう疲れてきました。もうすぐ時間切れで消失します。この手を握るだけでトキ様の時代に行けます」
リュウが右手を伸ばした。
「何を言ってるの? 頭、おかしいよ」
「わたしたちトリプレックスは、涼子さんを愛しています。だからです。単純なことです」
「え? 愛してる? トリプ…」
「リク、シンリ、わたしです。まだいます。エンゼル氏…そして、あなたの後ろに」
リュウが視線を波打ち際に投じると、そこに友哉がいた。
「おい、ターサだ」
「はい!」
リュウがポケットから出したカプセルタイプの錠剤を友哉に投げると、友哉はそれを受け取って、口の中の放り込むようにして飲んだ。カプセルからは圧縮されていた栄養水が弾けるように口の中に広がった。阿武隈川から自分を転送してきたのだ。友哉は、トキの世界の栄養水で体力を一時的につけた。
「ごめんなさい。あなた。なんだか、今日、死にたくて仕方ないの」
「涼子?」
----友哉様、任せて下さい
リュウがチラリと友哉を見た。
涼子がRDを持つ手に力を入れると、涼子の喉にはあたらず、だが赤い光線が地を這うように奔った。それを見たリュウが、
「こい。こっちだ」
と呟いた。RDは一度は涼子に向かったのに急にカーブをしてリュウに向かい方角を変え、槍のように変化してリュウの胸を狙った。
「ええ?」
涼子が悲鳴に近い声を上げたその瞬間、友哉のPPKが火を吹き、リュウの体にRDが命中する瞬間に、迎撃した。
――友哉様、今です
リュウの指示で、友哉の平手打ちが、涼子の頬に飛んだ。風船が割れたような音が、台場に響いた。涼子がRDを落とした。
リュウが涼子の足元に落ちたRDを静かに拾った。
「すみませんでした。油断しました」
「死ぬ気かおまえ。哀しみをコントロールする能力があるようだな。帰って、ゆっくり休んでくれ。名前は?」
「リュウ」
「君か。トキは漢字で朱鷺。君は?」
「琉球の琉です」
「リナは安定しているか」
「え?」
「俺たちのせいで不安定だと思った」
「大丈夫です。リナを感じるとは……」
「この世の喜怒哀楽は女のためにある。帰ったら、もっと遊んでやれよ」
「はい。後はよろしくお願いします」
リュウは消失する時間だったようで、言葉の途中ではもう消えていた。
涼子は泣きながら、
「ありがとうございます」
と頭を大げさに下げた。
「一回、殴ってほしかった。本気で」
「あの男、優しい顔をして、ぶん殴れって俺に命じた。俺にはおまえを殴れなかった。あの男に感謝するんだ」
「リュウさん…。わたし、彼を死なせかけたのね。すみません。あのひと、すごい。何者なの?」
「スリーアイランドの自殺防止担当のトップでトキの側近。たまに温泉の穴を掘る係。そしておまえと同じ、我儘な女が恋人だ」
「彼女がいるのね。なんでそんなに詳しいの?」
「今、彼の頭の中を読んだ。夢でも見たことがある。UKの副作用対策で泥まみれで温泉を掘っていた」
「おかしい。一人で?」
「リクの命令らしい」
そう教えると、涼子がかわいらしく笑った。
「撮影に戻れるか。夕闇を背景にしたいみたいで、スタッフが探してたぞ」
「無理。鼓膜が破れた。手加減って言葉、知らないの?」
「本気で殴ってほしいって今、言ったじゃないか」
「うん。本気で遊んでほしかった。本気で抱きしめてほしかった。本気で怒鳴ってほしかった。ずっと、わたしに対して、あなたは本気じゃなかったもん」
「すまん。壊れそうな少女だったから…」
友哉が緑色に光るリングを、涼子の左の頬に充てると、
「気持ちいい。痛みが消えていく…」
と呟き、涼子は、倒れるように友哉の胸の中に入った。
「気持ちいい。何もかもが…」
友哉に強く抱きしめられた涼子は、
――わたしも感じる。リクさんの愛、エンゼルさんの愛、リュウさんとリナさんの笑顔。
そう思い、最後まで生き抜くことを自分に誓った。

もう、わたしは自殺なんかしない。ありがとう、リュウさん。

『虐めの決着』 了



普段は自己啓発をやっていますが、小説、写真が死ぬほど好きです。サポートしていただいたら、どんどん撮影でき、書けます。また、イラストなどの絵も好きなので、表紙に使うクリエイターの方も積極的にサポートしていきます。よろしくお願いします。