旧姓のキャッシュカードを切り刻んで前に進む
娘が生まれて三年。元夫と連絡が取れなくなって三年。
慣れ親しんだ姓を取り戻して2年。
コロナ禍に必死に関東で出産して、生後1ヶ月の娘と九州の実家に里帰りしたら元夫(当時は夫)と連絡が取れなくなった。
夫の親族に連絡したら、「(私)のせいで適応障害になった。もう連絡はさせられません。」とのこと。
夫の親戚で精神科の医師がいるそうで、県外なのにまでわざわざ診断書まで取り寄せてた。
白紙の離婚届と「適応障害。仕事は差し支えない。」という内容の診断書のコピーが実家に送られてきた。
遠回しに、嫁のせいの適応障害だと主張したいのだろう。
義父、義母、義祖母、義弟、たくさん罵声を浴びせられた。
結婚式で一度しか会ったことのない、謎の叔父さんや叔母さんも登場した。
「(私)が息子をいじめた。どうしてくれる!お前は何がしたいんじゃー!!」
出るまで鳴り止まない電話。
同じ内容が速達で手紙(義祖母の手書き)でも送られてくる。
元夫が心配で、パニックで、とにかく連絡がとりたくて、これからの生活をどう生きたらいいか本当にわからなくて、着信拒否とか、手紙を受け取らないとかそういう発想にはいたらなかった。
私の荷物は関東の家にほとんど残してあった。
入籍してから毎月、20万近い高額な家賃は、私が全額払っていた。
元夫は食費と光熱費を負担して、あとは自由に使っていた。(主に酒と株)
負担のバランスがおかしいことに全然気づいていなかった。
私なんかと結婚していただいたんだから、夫のために尽くすのは普通と思っていた。
本当にバカだった。
今まで気づかなかったけれど、私は金銭的DVにあっていたようである。
元夫と連絡が取れなくなって1ヶ月、意を決して夫の会社に電話をして、元夫が出勤できていること、義祖母と暮らしていることが判明した。
私が家賃を払っている契約主は私の家で、元夫と義祖母が暮らしている?
意味がわからなかった。この状況はなんなのだ。
新婚だからと、楽しくこだわって買い揃えた家具家電や調理器具を義祖母が毎日好き勝手に使っていることを想像すると、怒りと悔しさで気が狂いそうだった。
(あとでわかったが、この時娘のものは、義祖母が処分していた。ベビーベッドは組み立て直せないくらい細かく分解されて、紐でぐるぐる巻きにされていた。)
しかもそのタイミングで家の契約の更新だった。
メンタルズタボロで手が震えて携帯もまともにさわれない不安定な中、今日を生き切ることに必死で、やっと新生児を卒業した娘を育てていた私の口座から、二ヶ月分の家賃が引かれていた。
後頭部をハンマーで殴られたような衝撃とはこう言う時に感じるのだと知った。
元夫にLINEを何度もし、叱責したい気持ちをグッと堪え、体調を気遣う優しい文面を添えて、もう家賃が払えないことを必死に何度も伝えた。
1ヶ月半ぶりに帰ってきた夫からのLINEには、
「家賃2ヶ月分振り込みました。」
たったこれだけだった。
娘のことは気にならないのだろうか。私の気持ちを考えたことはないのだろうか。
こんな冷酷卑劣な人間と私は一緒に暮らしていたのか。
娘はこの男とあの親戚一同と血が繋がっているのか。
頭がおかしくなりそうだった。絶望とはこういうことを言うのかと知った。
もう一緒に暮らすことはできない。
奪われたものは、取り返さないといけない。
これから一人で娘を育てていく。
私は元夫と話し合いをすることもなく、別々に生きることを決めた。
これから1年以上に渡る長い戦いが始まるのだが、これを書いていると仕事に遅れてしまいそうなので、ここまでにしようと思う。
いつか書きたいと思っていたことが、やっと3パーセントくらい書けたような気がする。
今は安定した仕事もあって、前よりずっと素敵な家に住み、しっかり夫から奪われたものは取り返して、娘と二人で楽しく笑顔で暮らしている。
そんな私と娘の新しいキャッシュカード(私の姓に戻したもの)が昨日届いた。
元夫の姓のキャッシュカードをハサミで豪快に切り刻みながら、これで本当に終わったんだ、前に進めると思った。
キャッシュカードをハサミで切ってこんなに喜ぶ人はいるのかなというくらい晴れ晴れした気持ちだった。
足枷が取れたような気がした。
元夫との関係は本当に終わったんだ。私は確実に前に進んでいるんだ。
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