「無限の猿定理」に反抗して、ランダムな文字だけで物語を作る
みんなは、「無限の猿定理」という言葉を知っておるかな?
Wikipediaにはこう書いてあるのじゃ。
これだけだとよくわからんのう。
これは数学などで例えとして使われる言葉で、「サルにタイプライターを適当に打たせて、めっっっっっちゃ長い時間をかければ、いつかランダムな文字がたまたまシェイクスピアの『ハムレット』全文と完全一致するんじゃね!?」
=どんなに低い確率でも、永遠に繰り返せばいつかは成功するよね!
という意味なのじゃ。
図にするとこういうことじゃの。
「無限」に「猿」が文字を打つことで、いつかある文章や物語と一致するものができる「定理」で「無限の猿定理」ということじゃな。
当たり前じゃが、普通に考えてサルがランダムに文字を打ち続けても何かの物語と一致する文章がたまたまできることはほぼありえないのじゃ。
例えば「ハムレット」の冒頭100文字と一致する文章ができるまでの時間を確率的に計算すると、1秒間に10万文字打っても、100億年の1無量大数倍の1000京倍の時間がかかるそうじゃ。
完全一致だけでなく、”何かしらの意味が通る文章”がたまたまできるのですら、天文学的な時間がかかると言われておる。
つまり、「確率が低すぎると、実質不可能なのと同じ」という皮肉を込めた言葉なわけじゃな。
ん?ワシが誰かじゃと?
ほっほ。申し遅れたのう。
ワシは「文系なのに理系もちょっとかじってる雰囲気を出してマウントをとるおじいさん」じゃよ。
「〇〇のふしぎ」みたいな科学の本で、子供たちに解説している正体不明の博士がいるじゃろう?
それだいたいワシじゃ。
大人はもう誰も構ってくれないからの。
「無限の猿定理」については面白い話があってのう。
20年前に本物の猿にタイプライターを延々と打たせて「無限の猿定理」を再現するという酷い実験があったんじゃが、あれ実は最初ワシがふざけて言ったらほんとにやってて笑っ…ん??
スッ
ゴッ
いっつっっっっっっっ!!!!!!!!
俺「おサルさんがかわいそうだろうが!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ずっと聞いてたけどよ、なんで不可能って決めつけんだ?
誰が決めたんだよそんなの。
おれ、そのハムレットってヤツのことよくわかんねーけどさ、たまたますぐにできるかもしんねーじゃん。
おい約束しろ。おれがこの「無限の猿定理」を実証してやる。
そしたらこんなもんは嘘っぱちだと認めろ。
そして二度とおサルさんにこんなことさせんな。
要は「ランダムな文字がたまたま全部物語になっている」
それができりゃいいんだろ?
おれがおサルさんを救い出してやる。
物語ができりゃ文句ねえんだよなあ!!そうだよなぁあぁぁあ!!??
「はい、それでいいです」
ぉし!!!よし!!言ったな!!
ここで待ってろ!!すぐ作って持ってくっから!!
おサルさん~~~!!!待っててね~~~!!!!!!!
「………。」
「帰ろう。そして暖かいスープを飲もう」
というわけで、ランダムな文字列から物語を作ることにしました。
「無限の猿定理」では、”全ての文字が完全に一致している”事が重要です。そのため今回は、以下のルールで物語を作ります。
①:完全にランダムな文字から作ること
②:飛ばし飛ばしではなく、連続した文字を使用すること
③:タイトルもランダムな文字から作ること
ここから以下の流れで作成していきます。
まず、ひらがなをランダム出力するプログラムを作成しました。
出力した結果がこちら。
この中から、まずは物語のタイトルとなる単語を探していきます。
ちなみに例として、「ハムレット」の5文字が揃う確率は75の5乗なので、23億7304万6875分の1です。
わかりやすい物語がいいので、「桃太郎」的な童話がいいですね。
「〇〇たろう」とかがあったらいいかも。
さて、無意味な文字の海を漂うこと106万2917文字目、ついにそれらしい「たろう」と出会います。
出ました!「あてじたろう」 当て字太郎??
名前を当て字で読んであてじたろうなんでしょうか。
どんな物語か全く想像つきませんが、ここから先の文字を抽出してみます。とりあえず250文字くらいでいいでしょう。
はい、まったく意味が分かりません。
無理やりにでも日本語として読めそうなところを探していきます。
よくよく見ると、あてじたろうの次にある「れきぬじき」は「歴ぬ時期」と読めます。
無理やり考えると、「歴の無いほど古い時期」と解釈できそうです。
そうやって、無理やり区切って意味を解釈していけば、物語ができそう!頑張ります!
完成しました!
かなり無理やり読んだ部分もありますが、童話っぽくできたと思います。
せっかくなのでAIに絵を描いてもらい、絵本風にしてみました。
以下、「区切った文」→「無理やり読んだ文」→「絵」→「意味を解釈した文」
の順番でご覧ください!
「あてじたろう」
→「当て字太郎」
あてじたろう
「れきぬじきぶぃしのぽしたつぴしきぷ」
→「歴ぬ時期、武士の落としたるPix〇v」
「むかしむかし、歴も無いほど古い時代のこと。武士が道端にPix〇vを落としてしまいました」
「にがをへぎらいぎりびぎじぶゆつたら」
→「逃がしを毛嫌い、ギリ『ビギジブ』言うたら」
「あてじたろうという若者が、そのPix〇vを盗みました。しかし武士に見つかってしまいます。Pix〇vを逃したくないあてじたろうは、自分が拾ったのはPix〇vにギリ似ている『ビギジブ』であると言いました」
「をなじらつがめじしはばいげ」
→「同じ奴掴めし、死阻むなら行け」
「武士は、それなら私の持っていたのと同じPix〇vを掴んで持ってこい。死にたくなければ行け。と言いました」
「きしぇぅうざ」
→「きしょぉ。うざ」
「あてじたろうは思わずキショい、うざいと言ってしまいました。」
「うけてめろでろぽぅぼくぬもげぶつ」
→「受けてメロンで6本、僕にもげるほどぶつ」
「武士はその言葉を受けてメロンで6回、あてじたろうを首がもげるほどの勢いでぶん殴りました」
「くまへざろる」
→「苦間膝lol」
「それが苦しすぎて、しばらくの間あてじたろうは膝を曲げてしばらく動けなかったらしいです(笑)」
「げみもんなよいづぬほどあずみぼこざぬみき」
→「下民者がよ、夜出ずる程あずみブックオフ在庫抜き」
「武士はあてじたろうのことを下民の者だと吐き捨てるように言いました。そしてPix〇vを取ってくるまで毎日、あてじたろうの立ち読みしている漫画『あずみ』をブックオフの在庫から抜いてやると言いました」
「ぉしとぐはでたべわまほけたじぁぬわろくよぉて」
→「おし、と愚は出た、敏腕魔法使いケンタじゃあな笑いよって」
「よおし、と愚(と書いてあてじたろうと読む)は張り切って出かけました。と見せかけて、自分が立ち読みしているのは『敏腕魔法使いケンタ』だと言って、じゃあな笑、と笑いました」
「ぅずぼこきふじうぇぼうがかわりらえがめえほほぽあ」
→「渦ボコで来た富士の上、貌が変わり裸絵(らえ)がメッ、頬ポワ」
「あてじたろうは武士に渦が巻くほどボコボコにされて、富士山の上の方まで飛ばされてしまいました。殴られすぎて風貌が変わり、裸絵(らえ)、つまり体のシルエットが完全にダメになったあてじたろう。頬がポワっと赤くなるほど怒りました」
「づうぷむいんとじにさむずへさびいぷばばのすわよへつぃはらぽぅ」
→「ズームインとじいさんズ、へ寒い、ブハハ伸すわよ、へつい腹暴」
「近くを通ったじいさんの集団が、あてじたろうの姿をじろじろ見て、ズームイン!と言ってニヤニヤ笑いました。あてじたろうが寒い、つまらないと返すと、じいさんはさらにブハハと笑って、お前のような小僧は伸すわよ、と挑発しました。あてじたろうはついカッとなって、じいさんの腹に暴力をふるいました」
「はかぎずしろゆらすへわよぇめせぅぺてば」
→「破壊寿司、路揺らす。兵は弱め、しょっぺえってば」
「一方その頃、街では巨大ロボット『破壊寿司』が道路を揺らしながら侵攻していた。対抗する兵士は弱く、しょっぱい戦いになっていた。」
「ぷれあげぇほあづばとぎぎぃぎらずぁ」
→「プレイアゲぇ本熱いバトル、ぎぎぃギラずら」
「あてじたろうとじいさんのプレイ(殴り合い)はアゲアゲで本当に熱いバトルになっていました。のちに観客は、じじいが『ぎぎい』と呼べるほどギラギラしていたんだずら、と語ったそうです」
「づりとざしぇばしきずたぎつでぴへろ」
→「ズリ、とザ・シェーバー氏気づいた傷でぴっ、疲労」
「ズリ、というパンチの感触で、あてじたろうは気づきました。戦いの相手は、伝説のボクサー『ザ・シェーバー』氏だったのです。彼のパンチは鋭すぎて、あてじたろうは切り傷を負っていましたが、血をぴっと拭いました。お互いに疲労が溜まっていました」
「せばさにばぽめてちぷと」
→「背ばさっ、に場褒めてチャンプと」
「激闘の末、『ザ・シェーバー』が背中からばさっと倒れて、あてじたろうは勝ちました。場の観衆は、あてじたろうがチャンピオンだと褒め称えました」
「ばをぬじれみえれろはたさそてし」
→「場を覗いてみろ、旗誘ってるし」
「ボクシング場を覗いてみてください。そこにある旗には、時に愚かだと笑われようと、ボクシングへ熱く向き合い続けたあてじたろうへの尊敬を込めて、『愚』の文字が入っています。愚(あてじたろう)を称える旗は、今も挑戦者を戦いに誘っています」
いかがだったでしょうか。
なぜかボクシングチャンピオンが誕生してしまいました。
しかしランダムな文字から物語ができたのは事実!
「無限の猿定理」を覆すことができたと言っていいでしょう!
これを持ってあのジジイに突き付けてやるぜぇ~~~~!!!
お!いたいた!ちゃんとさっきの場所で待ってるじゃねーか!
おーい!!できたぞ~~!!!
あれ?
ん?
寿司になってる。
あっ、そうだ、すっかり忘れてた、この世界は、
寿司に侵略されていたんだった。
ある日突然現れた巨大ロボット「破壊寿司」の群れ。
それに攻撃された生物は寿司になってしまう。
あらゆる生物が寿司に変わっていく異様な光景に耐えられず、私はランダムな文字を読むことで現実逃避していたのだった。
物語が完成し現実へと引き戻されてしまった今、私はただ茫然と寿司の侵略を見ていることしかできなかった。
寿司寿司寿司寿司。この世には「す」と「し」の文字しか存在しないかのように、世界が寿司に飲み込まれていく。
どこからか、地響きと共に寿司酢の饐えた臭いが近づいてきた。
まもなく私も、寿司になるのだろう。
願わくばこの手記が、誰かに届くことを願って。
~貫~
※画像作成:bing、いらすとや
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