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なぜいまコミュニティの形成が、企業にとっても、ユーザにとっても重要なのか?

SalesforceやLEGO、最近ではNotionなど、これらの成功している企業に共通している特徴があります。それは熱心なファンが世界中に存在し、彼らがボランティアで製品をサポートをし、アピールし、ときには製品作りにまで関わってしまう「コミュニティ」があるということです。

製品が素晴らしいという理由だけで、勝手にコミュニティが出来上がるわけではありません。企業は戦略的にコミュニティを設計して、ファンを巻き込んでいるようです。では、いったいどうやって無償で「ありがたい」ことをしてくれるコアファンを生み出しているのでしょう。

そのヒントがジョノ・ベーコンの著作「People Powered」に事細かく書かれていました。このほど翻訳版を読みましたが、具体的なコミュニティの設計の方法が書かれていて勉強になりました。今回は、自分が所属しているコミュニティの実体験と紐付けて、特に印象に残った箇所をご紹介します。

コミュニティが重要な理由

企業側

広告よりもインパクトがなさそうだし、効果が出るのは時間がかかりそうだし。本当にコミュニティ作りは企業にとって、重要なのでしょうか。この本では企業から見たコミュニティが持つ価値を5つのカテゴリに分けて紹介されていました。

1.  コミュニティは利用者と企業が一体の関係を作る
2.  コミュニティは見込み顧客は口コミ、マーケティングとユーザの成功をつなげる
3.  コミュニティは利用者のサポートと教育をする
4.  製品・技術開発をするコミュニティ
5.  ビジネスの価値を広げるコミュニティ

「People Powered」より

上記の1の例として、本では世界中に膨大な顧客基盤があるSalesforceをあげています。Salesforceは多くの機能を正しく使ってもらうために2005年に社員とユーザがつながるコミュニティをつくりました。

当初はただ製品ドキュメントを提供するために作ったのが、そのうち最新情報を提供するメディアとなり、機能について話し合うディスカッションの場となり、ついにはコミュニティが成長してユーザみずからグループを組織はじめる場となったとのことです。会員数は2014年に100万人を突破。いまではユーザと企業が一体になって、製品を高めていっているようです。

また、上記の5の例として思い浮かんだのは、Appleのコミュニティです。Apple製品で不具合が起きた時にユーザが集まるサポートページで質問すると、すぐに詳しい人が解決策を答えてくれます。

Apple製品の活用方法を解説したYoutubeもたくさんあります。昔は日本の製品を買うと分厚いマニュアルがついてきていましたが、Apple製品を買ってもマニュアルはついてきません。検索すれば、ユーザ自らが使い方をガイドしてくれるからです。Appleはそこに多くのコストをかけなくても済んでいるんですね。

ユーザ側

では、ユーザから見たコミュニティの価値とは何でしょうか。なぜそこまでコミュニティに、無償で貢献してくれるのでしょう。

自分で選んだインターネット上のコミュニティグループやミートアップを介して経験を積み、自分のキャリアと履歴書を作っていることを理解している。

「People Powered」より

ユーザは、コミュニティで貢献することを通して、あらゆる会社の人たちとコラボーレーションができます。これはひとつの会社だけで経験するよりも、何十倍もスキルが身につき、成長できる可能性をもたらしてくれます。製品への愛だけではなく、コミュニティ活動が自身にプラスの効果がもたらすから貢献しているんですね。

自分自身もあるweb3関連のコミュニティで活動していますが、今まで知り得なかった業界や年代、国籍の方たちとのコラボーレーションできるのは刺激的で濃い体験です。たった数ヶ月でも数年に値するようなスキルや知識を習得できた感じがしています。

コミュニティのタイプは3つ

コミュニティとひとくちに言っても、多くは3つのタイプに段階分けされると解説されていました。

1.  コンシューマーモデル
共通の興味を持つ人たちのグループ(ファンクラブみたいなもの?)
2.  支援者モデル
共通の関心を持ち、ユーザ同士で製品の解説や本を作り、製品のためにはたらくグループ
3.  コラボレータモデル
ボランティアがプロジェクトチームの一員となって、能動的に作業するグループ

People Powered

本ではコラボレータモデルの例として、Kubernetesとうオープンソースプロジェクトがあげられていました。ボランティアを含む2000人以上の開発者がプロジェクトにコミットし、480回以上のリリースをしたそうです。参加する人が増えれば増えるほど、プロジェクトの改善に貢献する人が増え、少ない時間で多くの改善を得ることができたとのこと。企業にとってこれほどありがたいことはないですよね…。

ユーザのタイプ

この本の面白い箇所は、コミュニティに参加するユーザ(メンバー)をグループ分けし、それぞれのグループに対して企業が行うべきアプローチを詳しく解説している点です。

1. カジュアルメンバー
  コミュニティに入ったばかり。参加頻度はバラツキ。
2. レギュラーメンバー
  コミュニティに長期にわたり持続的に参加している。
3. コアメンバー
  コミュニティのリーダーシップを取る。

People Powered

コアメンバーともなると、コミュニティに多大な時間を使い、献身的に働いています。自分が所属しているコミュニティにも、コアメンバーといえば顔が思い浮かぶメンバーが2,3人いますが、コミュニティをよくするために多くの時間やスキルを費やしているようにみえます。他メンバーに与える影響力は計り知れないです。

ただ、それぞれのグループの人数は、コアに進むにつれて非常にすくなっていきます。100人のコミュニティではコアメンバーは1人ぐらい。そのため、企業側としてはスムーズに移行できるよう、環境を整えることが必須のようです。他に、都度都度、インセンティブを設けるのが重要とも書かれていました。

例えばweb3のコミュニティでは、設定されたタスクをこなすことでコミュニティ独自のトークンがもらえるようにしています。ゲーム感覚でタスクをクリアしていくだけで、コミュニティへの貢献度が高まり、自然とコアメンバーへの階段を登っています。ここの仕組み作りは企業にとってももっとも大事なところでしょうね。

ステップアップ実践例

カジュアルメンバーからレギュラーメンバー、さらにそのさきのコアメンバーに移るために、メンバーとしてどのように貢献していけばよいのでしょうか。ここからは本の内容ではなく、コミュニティへの貢献の方法を実体験としてお話します。

ステップ1: わからないことをシェアする

特にIT系のコミュニティであれば、入会後にシステム的な手続きが必要な場合があります。自分はweb3のコミュニティに入った当初、Metamaskの接続や設定に手間取ったものです。オンボーディング資料を見てあれこれ試してもわからなかったら、まずはコミュニティ内で質問するのが一番です。

「こんなこと聞いてもいいのかな?」と最初は躊躇しますが、良いコミュニティであれば、誰かがすぐに答えてくれます。この第一歩のやり取りがあるとないとでは、次へのアクションに進む気持ちの余裕がずいぶんと違う気がします。

ステップ2: 他の人がわかるようにする

自分がわからなかったことは、これから新しく入ってくるメンバーもわからない可能性もあります。質問をして解決したら、今度は自分の体験をテキストや画像や動画にして、他メンバーへの役立つ資料に変換させましょう。こうしてコミュニティに還元をすると、メンバーからさまざまな嬉しい反応が返ってきます。このことで貢献を実感でき、自信につながります。

ステップ3:得意分野と結びつけ、提案をする

ここまでのステップを踏めば、貢献の楽しさを知っているので、レギュラーメンバーとなっているはずです。もっと貢献したいと思ったら、いままで自分が身につけたスキルを使って、コミュニティがよりよくなるための自分ならではの提案をしていきます。

例えば新しい機能の開発や仕組みの改善、イベントの企画などです。コミュニティの醍醐味はコラボレーションです。提案をして、多くのメンバーと協同作業することで、コミュニティが持つ価値が増大します。ここからだんだんとコアメンバーへの階段を登っていくのではないでしょうか。(自分はまだレギュラーの入り口付近にいるので、あくまでも予想です!)

まとめ

さて、ここまで本の紹介と自分の体験をご紹介してきました。本の内容は企業側からみた視点が主でしたが、コミュニティに参加している側として読んでもじゅうぶんためになる内容でした。

本noteで紹介したのは、ほんの一部です。ぜひ一度、本を手にとって👇、読んでみることをおすすめします。

そして、もしまだコミュニティに参加したことがないのであれば、好きなゲームやアーティスト、あるいは勉強したい分野のコミュニティを、DiscordやSlack、facebookなどで探してみてください。きっと人生を豊かにする体験が始まると思います!

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