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ひとりでも、初心者でも、だいじょうぶ。楽しきかな、「月釜」の世界。

月釜つきがま とは、お茶室で開催される、毎月決まった曜日におこなわれるお茶会のこと。季節ごとに趣向が変わり、お茶会らしさをじゅうぶん堪能できるものの、1時間程度で会が終わるので気軽に参加できるお茶席です。

気軽にという点でいうと、特に最近は若いお茶人の方が開催する「お茶の経験はなくてもどうぞ」という参加しやすい月釜が増えているような気がします東京周辺でいくつか参加しましたが、実際に未経験に近い初心者の方が参加してました。しかも、たいていみなさん、おひとりで20〜40代の方々。

これって昔にはなかった傾向では…。少なくとも以前自分がお茶をやっていた頃(6年ほど茶道から離れていました)にはなかったぞ!

どうやら若いお茶人の方々が増え、その方々を中心にお茶業界も変革が生まれているみたい。この潮流をForbes Japanでは、カルチャープレナーとして紹介していますね。今までの枠にとらわれず、純粋に「お茶」とその空間を誰もが楽しもうという流れが生まれつつあるんだなぁと思ってます。

そこで今回は、若い・初心者・ひとりでも、参加しやすい、特におすすめな「月釜」をご紹介をします!よろしければ行ってみてくださいね。


清白茶会(すずしろちゃかい)

ひとつめは武井 宗道さんの月釜「清白茶会」。SOTOさん(宗道さん)のお茶会に参加したのは、執筆されているnoteの記事を読み、その理論的な語り口に興味を持ったのがきっかけです。

今年の春に初めて月釜に伺い、その後も何回か参加しています。SOTOさんのお茶会は、毎回あっという驚きと発見があり、とても楽しい。

古書も研究されていて、茶会を構成する要素ひとつひとつに対してのSOTOさんの掘り下げ方がすごいんです。それぞれを洞察したうえで、独自のクリエイティビティを持って茶会を組み立てられるので、新しさを感じつつも、しっかりと根っこで支えられている安心感もあります。そうか、これが守破離ということなのかしら…。

毎回、茶室に入るのが楽しみ。

ひと席5名ほどの定員で、毎回その場に居合わせたお客さまとの一期一会も楽しみのひとつ。夏に開催された「三味線とお茶の会」では、昔デザイナーとして活躍していたという素敵なおばあさまと一緒になり、昔の話を聞きながら三味線を聞き、お茶を飲みました。

そう、、SOTOさんのお茶会は、新しい試みもされているのに、昔にタイムスリップしたような気持ちにもなるんです。だからいつも茶会のあとは、別の世界に行ってきたような、充実感とスッキリ感があります。不思議。

▼ SOTOさんのお茶会情報

日月(じつげつ)

ふたつめは「日月」さんです。インスタに投稿されている写真の数々から、その世界観はじゅうぶんに伝わるでしょう。

初めて参加して感じたのは、「美しい!」のひとこと。設えも、お道具も、お点前も、すべて。わたしが参加したのは、夏の暑い一日でしたが汗がスーッとひくほど、爽やかな気持ちになりました。

▼ 日月さんのインスタグラム

小田原の松永記念館のお茶室がまた素晴らしいのです。広間と小間の両方でお茶をいただきましたが、この空間でいただくと、より一層しっかりとお茶と向き合える気持ちがします。

日月さんの月釜は、毎回人気なのでインスタで告知を見てもすぐに埋まってしまいます。東京からだとちょっと遠いですが、一度足を運ぶと人気の理由がきっとおわかりになるかと思います。

お茶との付き合いかた

月釜に参加すると、あらためてお茶との付き合い方を考えるきっかけにもなります。

すこしお茶から話が飛びますが、「13歳からのアート思考」という本に「美術館に行って何を見てますか?」という質問が載っていました。

作品を見る時間よりも解説文を読んでいる時間が長くはないですか?と。

私自身、美大生だったころはそうでした。

美術館を訪れることは多かったにもかかわらず、それぞれの作品を見るのはせいぜい数秒。すかさず作品に添えられた題名や制作年、解説などを読んで、なんとなく納得したような気になっていました。

いま思えば、「鑑賞」のためというよりも、作品情報と実物を照らし合わせる「確認作業」のために美術館に行っていたようなものです。

「13歳からのアート思考」

ギクッ。わたしもじっくりと解説文を読むタイプで、なんなら「なるほどー、書いてあるとおりだわー」なんていう感想まで持っていました。

この姿勢はアートだけでなく、お茶との付き合い方にも言えることだと思っています。お茶会に行って、型通りの説明を聞いたときに、「なるほどー、たしかにお道具は立派ですねー」と、なにも感じず、なにも考えず、型通りの反応をしていないだろうか…。

本来、「型」とは感覚を自由にするもの。でも、自分は茶道の「型」に乗っかるだけで良しとして、思考も感覚も止めているのではないだろうか。そんな疑問をこの本を読んだときに持ちました。

作品とのやりとりには、2種類あると言います。

  1. 背景とのやりとり - 作品の背景が投げかける問いとのやりとり

  2. 作品とのやりとり- 作品そのものと鑑賞者とのやりとり

引用「13歳からのアート思考」

ふたつの方法はあれど、どちらも重要なのが、ほんとうに自分の感覚を持って、やりとりできているのかということ。背景やアーティストの情報を知っただけでは、やりとりをしているとは言えません。

同じように、茶道の型をたくさん覚えたり、道具の背景を知るだけでは、お茶とやりとりしていることとは違う。ついついお稽古でいろんなお点前を練習するので、それが目的となってしまう面があります。でも本質はそこではないんですよね。

素晴らしい月釜に参加すると、そのやりとりの大切さを気づかせてくれます。SOTOさんのも、日月さんのも、帰り道はいつも爽快感。楽しいし、爽やかな気持ちになれるし、本質にも立ち戻れる。そんな大事な場として、月釜に参加させてもらっています。

みなさんもぜひ行ってみてくださいね!


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