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詩集 春暁

春暁



.1 詩と向き合って


色を乗せると 冬花でも薫るかのようで
まるで音のしない森を右足なしで歩んでく
 
ふとした時に遠のく背中を薄目に認める
あたしはあたしが大事だから
 
「大丈夫」
 
言った誰かは遠くへいって
いまは隣に 言葉が一つ
だから あたしも 頬を緩くいってしまう
 
絡まったままのDNA
湯切りを忘れた白い肌
切り裂く胸は爛れた花弁
一夜と誓う十五の紅
 
崩れた心 割れた手足を繋ぎ支え
逃げる山羊 怯える羊を眠りに誘い
月を大地へ引き寄せ交わす
 
それができると知ったいま
あたしは何を望むだろう
 
夢の話をした君の話
森に迷い込んだ髪飾り
 
星を追って抜け出して
息を引き取るその一間を
 
今は待っている
 
2023.3.11 詩と向き合って


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