読書記録 たんぽぽ団地
重松清さん著、新潮社、2015年
図書館で重松清さんのコーナーを見ていたら、読んだことのない本の中で、この本が目に止まり、手に取ってみた。
たんぽぽ団地。
私は団地住まいをしたことはないが、東京くらしが長い中、団地の近くに住んでいる。
同じ形の窓でもカーテンや植木が少しずつ違う。
そんな箱型の団地が何棟も並んでいる。
一階は庭付きで、カタバミやコスモスなどの季節の花が何気なく咲いている。
真ん中にある公園で、小学生だった息子が友達と遊んでいたりしたな。
それから、仕事帰りに団地の建物の隙間から、綺麗な夕陽を見つけて、思わず自転車を止めて見入ってしまったこともあったな。
そんな団地を舞台にしたお話。
◎あらすじ
お話の始まりは、映画監督のインタビュー記事だ。
その監督は、団地を舞台にした映画を作ろうとしていた。
✴︎✴︎✴︎
小学6年生のワタルは、児童劇団に入っていて、
ドラマや映画に出ていた。
みんなワタルの演技を上手いと言ってくれたが、
地味な脇役が多かった。
しかし、そんなワタルにも、主演のチャンスがやってきた。
団地を舞台にした、少年ドラマの探偵だった。
そう、時代は1973年、少年ドラマが全盛だった。
ドラマの撮影は、当時の団地住民の明るく親しみのある協力を得て、ワタルの大切な思い出となった。
そして、お話は時空たつまきによって、2014年の現在と1973年を行き来する。
◎気になった箇所
✴︎✴︎✴︎
229ページ 久しぶりに団地に帰ったワタルくんに、先生から
帰る場所があって、待ってくれるひとがいるうちは、どんなに長いお別れでも、挨拶は『さようなら』じゃなくて『行ってきます』と『行ってらっしゃい』なのよ。
✴︎✴︎✴︎✴︎
125ページ
負けていないはずなのに勝てないことは、たくさんある。ほんとだよ。いまはわからないと、思うけど。勝ち星を積み重ねるよりも、負けそうなところを引き分けに持ち込む技を磨いたほうが、幸せになれるんだよ。
◎感想
これは、色んなメッセージを含んでいるお話だ。
そしてそれが、謎解きのようでもある。
お話の中で2人の女の子の出会いがある。読み進めるうちに、一見、嫌だなと思った人も、色々な場面で見てみると、また違った見方ができる。そして、嫌だなと思ったところが、ちょっと自分と似ているかもしれない、と思うと、なんだか憎めなくなる。
そして、人生には全て上手くいく時もあるが、上手くいかない、思い通りにならないことも多い。
でも、終わりにすることを選ばなければ、まだまだやれることはあるじゃないか、そんなメッセージを含んでいるのかなと思えた。
そう、一度仕事を手放しても、好きなことを突き詰めていけば、もしかして次のステージが待っているかもしれないなんて、ポジティブな思考ができるようになった自分に微笑んでしまう。
◎最後まで読んでいただき、ありがとうございました😄
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