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読書記録 誰かが足りない

読書記録 誰かが足りない
宮下奈都さん、双葉社、2011年

題名のなんとなく意味深な感じ、もしやサスペンスかスリラーか、とも思ったけれど、表紙の落ち着いた装丁からまたまた、謎めいて表紙をめくってみました。

これは、読書の記録です。本の主要な登場人物やアウトライン的な物語の展開の手前の概略までを書いています。

また後から自分で読んだ時に、「あー、そうだった」と思いだすためです。


◎あらすじ
ある町のおいしいと評判の小さなレストラン、「ハライ」。そこを訪れて、料理を味わいたいと思う人達6人の予約者の物語。

その中から2つのエピソードを中心に記録します。

予約4
僕は高校生。母と姉、妹の4人家族だった。
ある時、母が笑顔で自分は病気でもうすぐ命が尽きることを告げ、その通りに半年もたたず、亡くなってしまった。

もっと深刻な顔で話してくれればよかったかもしれない。

あまりに、あっけない母の死を受け入れられなかったのかもしれない。

僕は、母の病気以来、人の顔が信じられなくなった。
人に会うのがいやなり、部屋にこもるようになった。

ただ姉の結婚式にビデオカメラを手にすれば、外に出ることができた。それから、カメラが手放せなくなった。僕には、ファインダー越しの世界が全てだ。

その僕の家に高校生の妹の友達という、篠原さんが遊びにきた。妹がいなくても遊びにくるようになった。

予約6
留花は小さい頃から、人より匂いに敏感だった。
ずっと以前、親戚の法事に行って、叔父の強い匂いが気になり、言ってみたが、他の人は気にならないらしい。しばらくして、その叔父は疾走した。

留花は自分の性質がちょっと怖くなったが、その後も同じようなことが、あった。

ある時、一人の匂いのする青年に声をかけて、ベットボトルでお茶を飲んだ。助けたいと、思っていたけど、それくらいしか、出来なかった。
数日後、その青年が現れて、、、。



◎感想
予約4の僕は母が生きている時ですら、そこに居続けるのが、ギリギリだったのだろう。

思春期、自分は何ものなのだろう、自分はどこへ行ったらいいんだろう、誰もが悩み、葛藤する時代に支えがなくなってしまって。

元々、強い自我を持っていたり、母の代わりにしっかりと、自我を支えてくれる人が現れてくれたら、と思う。  

妹やその友人の篠原さんとの関係性がどのようになっていくのか。

そして人は誰か隣にいる人がいれば、自分で自分を支えられるように変化、成長していけるのだろうか。


予約6の留花は、自分以外の人のemergency call 助けて!という声なき声が、匂いという形で聞こえてくる。でもその時、一瞬どうしたら良いのか、わからない。

最後、勇気を出して声をかけて、ちょっと立ち止まってその青年の思いを少し聞けたことは、小さなことに見えるが、青年にとっては大きな意味があったと思う。

他の人の思いに気づくことができる、そしていざという時に、小さくてもいいから何かアクションを起こせる。それは小さなことだけど、難しい。

今、私は誰かを思い、何かをしたいと考えて生きている。悩みながら、模索しながら、充足の場所を探している。

それが、実は生きていくことそのものかもしれない。

私も、今ゆるやかに残された時間は、そんな生き方をできたらいいと思うけど、、。





◎今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました😊





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