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作品の完成形に責任を持つ映画監督として知っておきたい編集の基礎知識3選

 編集とは?ザックリと説明すると、映画で使われる編集は撮影したいくつかもの動画(カット・クショット)を繋げていき、映画へと近づけていく作業のことを言います。
 今回は編集をする人間としてこれは知っておいた方がいい、と思う基礎知識の紹介をしていきます。

①映画の最小単位は?

 と聞かれて、分かりますか?答えはカット/ショットです。東京映画映像学校(映画・映像 業界用語辞典)に記載されているカットの定義を転載します。

映画やビデオ作品を構成する映像上の要素として最低単位が「カット」。つまり撮影に於いてカメラのフィルムがスタートして止まるまでの状態。文章に例えると「単語」または「段落」に近い。このカットが複数集まって構成されるのが「シーン」。表現として最小限の意味が伝えられるひとかたまりなので「文節」にあたる。さらに、シーンが集まって一つの物語として成立するのが「シークエンス」。つまり「章」となります。ドラマの台本上には例えば“S3C5”などと書かれ(シーン3 カット5と読む)撮影時にカチンコに表記して撮影や編集時に利用する。なお、実際には、シークエンスがいくつも積み重なる事で作品が成立している。

 この文章を読んでもやっぱり見ないことには分からないので下に私が好きな映画の一部分を載せます。ここで問題です。このシーンのカットはいくつか分かりますか?

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答え:2カット

1カット目

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2カット目

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という感じで画面が切り替わるポイントまでカットと呼びます。映画監督が撮影現場で「アクション」を言ってから「カット!」と言うまでの部分が「1カット」というわけです。
 もう1つ問題を出してみます。こちらは96時間レクイエムの1シーンなのですが、何カットありますか?ちなみにこの動画事体の尺は7秒です。

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ガチで数えたい人のためにYouTubeのリンクも貼っておきます。







答え:15カット(!?)
 1度、動画を通常再生しながら数えることを試みたのですが、無理でした(笑)7秒間の間に15カットなので1カット平均0.21秒の計算です。カット同士の感覚を短くすることで「緊迫感」を演出するという効果はありますが、「これはさすがに刻みすぎだろ」と思ってしまいます。1カットが短すぎて後半、何が起こっているのかが分からなくなったというのが正直なところです。

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(無駄にカットを刻むとスタッフから嫌われます)

 仮に緊迫感を演出したいのであれば、ここに至るまでのシーンでカットの感覚を長めに取るなどの緩急の「緩」を用意する必要があります。これを編集のリズムと呼ぶのですが、ヒッチコック監督の「サイコ」のシャワーシーンがとても良い例なので別の機会に紹介と解説をしようと思います。
 「無駄なカットを作らないため」「観客に自分が意図する感情を植え付けたい」と考えるのであれば、撮影をする前に編集をしなければなりません。

②Shoot for the edit(編集を見越した撮影をする)

 「撮影をする前に編集をする」とはつまり頭の中で映画の完成形を考えておき、それに基づき撮影を行う、ということです。逆算思考が得意な方からすれば当たり前に聞こえますが、商業映画の撮影現場でもこれができていないところがあります。
 私が制作進行を経験した「かぐや様は告らせたい」という映画でも撮影をしたのに本編でそのカットが使われていない、ということがありました。その場で良いと思ったカットが後になって、やっぱり不要になる、ということもあります。
 ただ、1カットを撮るだけでも数十人のスタッフのエネルギーと時間を使うわけです。したがって、できるだけ無駄なカットは避けたい、というのが監督としての私の思いです。
 しかし、頭の中で映画の完成形を考えてから撮影をする、と言ってもなかなか難しいです。そこで必要になってくるのが絵コンテ・ストーリーボードです。

③ビジュアルで自分のビジョンを伝える

 絵コンテは監督としての自分のビジョンを伝える上で非常に重要です。言葉だとどうしても発する側と受け取る側に乖離が生まれてしまいます。しかし、絵ならその乖離を縮めることができるというわけです。下のような絵を描けとは言いませんが、フレームサイズなどを知る上で非常に役立ちます。

5. 絵コンテ

 私が使っている絵コンテのデータも一緒に貼り付けておきます。

 そして、私が実際に描いた絵コンテ。
(見た人:これ、オマエにしか分かんねぇよ・・・?)
 練習します

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まとめ

 以上が映画監督として知っておきたい基礎知識3選です。監督は作品の完成形に責任を持つわけですから編集のことまでを考えるのは当然なのですが、自分自身が基礎を忘れないために書かせていただきました。
 次は前述した編集のリズムについてお話をしようと思います。お楽しみに!

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