見出し画像

「いつもあなたらしくいて」6歳の誕生日に贈る言葉。

次男の誕生日が近づいている。

幼稚園の誕生会で読むメッセージカードに、彼へ贈る言葉を書き込んだ。

伝えたいことはたくさんあるけれど、長くなると彼の集中力がもたないだろう。考えて、以下の4点に絞った。

まず、家族があなたの誕生を楽しみに待っていたこと。

次に、今まで本当にたくさんの人があなたに愛情を注いでくれたこと。

そして、毎晩寝る前に言っている「大好きだよ」の言葉。

最後に「いつもあなたらしくいてね」と書き込んだ。


「いつもあなたらしくいて」というのは、ある曲の歌詞からとったものだ。

いつもあなたらしくいて
共に歩み寄ることも
一人ぼっちじゃないんだ
二人手を重ねていこう

德永英明「You and me」より


德永英明さんの「You and me」。初めて聴いたのは6月頃だったと思う。テレビの音楽番組で德永英明さんが歌うのを聴いて、ひとり大泣きした。発達障害のある次男のことと自分のことで、頭がごちゃごちゃになった。

德永英明さんは私がいちばん好きなアーティストだ。だが、30年近いファン歴の中で、初めて聴いた曲に対してこれほど涙を流したことは記憶にない。

他人に非難されないことを最優先に考えてしまう私にとって、「あなたらしくいて」は地雷のような言葉。その言葉が、愛してやまない德永さんの声とメロディーに乗って、強烈な破壊力を持って私に届いたのだ。


独特の感性ととびきりの愛嬌。発達障害の特性といってしまえばそれまでだが、私にはとてもキラキラしたものに見える。彼がこの先生きていく上で大事な武器であり財産だと思っている。彼には彼らしくいてほしいと本気で思っている。

なのに、一歩外へ出ると、その思いはどこかへ行ってしまう。余計なことをしないでほしい、目立つことはしないでほしい、普通にしていてほしい。それしか考えられなくなる。彼が知らない人に絡み出すと、笑顔がこわばる。早くこの場を離れたいと、祈る気持ちで彼をうながす。

幼稚園児の今はまだ、なんとかごまかせたり、「かわいいね」と言ってもらえたりして済む場合も多い。だがこれから成長するにつれて、その言動は世間の中でどんどん目立つようになるのだろう。特性のことを知らない人も、少し話せば違和感を抱くようになるのだろう。


「あなたらしくいて」と本心から言おうとするとき、ふたつの覚悟が問われると思っている。

ひとつめは、特性のある次男の「あなたらしく」を受け入れて、社会の目の中で共に生きる覚悟。

もうひとつは、私自身が「わたしらしく」ある覚悟。他人のことばかり気にして「わたしらしく」いられない人が言う「あなたらしくいて」になんて、何の説得力も伴わないだろうから。


誕生会の場で、私は覚悟を持って「いつもあなたらしくいてね」とあなたに伝えるよ。

意味はわからなくていいよ。お守りの呪文だとでも思ってくれればいい。

ただ、どうか聞いていてね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?