半笑いポッキーゲーム #毎週ショートショートnote
華の金曜日。
僕は喧騒に包まれた居酒屋で、大学の同期と酒を飲み交わしていた。
「そういえばさー。半笑いポッキーゲームって覚えてる?」
同期が唐揚げをつまみながら言った。
「ん?なんだったっけ?」
僕はテキトーに相槌を打つ。
「覚えてないの!?ほら、サークルの飲み会の定番でさぁ…」
本当は鮮明に覚えてる。
僕が所属していた演劇サークルの飲み会にて行われてきた、演技指導という名の宴会ゲーム。
片方が目隠しをして行うポッキーゲーム。
このとき、目隠しをしている側の表情は半笑い。
もし、表情が崩れた場合は、残りのポッキーの長さに関わらず罰ゲーム。
テキトーにいちゃもんつけて、罰ゲームをやらせるってのが定番で、飲み会のたびにやっていた。
僕はこのゲームに、一つだけ強烈な記憶が残ってる。
定期的に鳴る『サクッ』っという音と、だんだん近くなる息遣い。
近づいてくる甘い香り。
「ねぇ!!聞いてるの!?」
気づけば、目の前に同期の顔があった。
「ごめんごめん…」
反射的に謝る僕。
「まったく…」
そう呟きながら、同期は座り直した。
ふと、僕の鼻腔をくすぐったのは、あのときと同じ甘い香りだった。
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