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京都国際マンガミュージアム┃線と言葉 楠本まきの仕事 展

直前まで悩んだのだけれど、有給をいただいて平日にひとり京都へ、国際マンガミュージアムで開催中の楠本まきの仕事展を堪能してまいりました。

わたしはこの世の漫画の中で最も楠本まき作品が好きで、たくさんの影響を受けて育ちました。今でも度々読み返しています。

《KISSxxxx》と出会ったのは中学生くらいの時、当時のわたしは自分の好きな世界みたいなものが確立しかけていて、この作品はぼんやりしていたその世界をはっきり認識させてくれたような作品でした。かめのちゃんにもカノンにもなりたかった。一日中植物園や水族館ですごしたり、まだ明るいうちから公園で花火をしたり、ライブハウスの隅っこに座ってじっとしていたかった。

エッセイも大好きで《耽美生活百科》は本当にすり減るほど読んでいます。楠本先生が《ロンドンAtoZ》などでイギリスについてとても魅力的に綴るように、わたしも大好きなチェコのことをもっとうまく書けたら良いのになあと常々感じています。

そうそう。楠本先生に憧れてお茶の水女子大に入りたくてオープンキャンパスに行くも、ものすごく浮いてしまい心が折れた思い出もあります。笑 (そもそも偏差値という壁があった) 

京都国際マンガミュージアムを訪れるのは初めてだったのですが、古い学校をリノベーションしているようで、雰囲気がとても良いところだなあと思いました。軋む木の床と、壁一面の本棚、ステージのある大ホール。そして広くて青々とした芝生の庭、もとは校庭だったんだろうな。学校というものにあんまり良い思い出はないけれど。マンガ好きなら一日中過ごせそうなところだった。心の底からご近所さんがうらやましい!

展示は、原画をはじめ校正紙やデザイン原案、作品中で描かれた小物やオブジェ、インスタレーションなど、多岐に渡る楠本先生の“仕事”をテーマにしたものでした。ほんとに手書きだよな、と疑いたくなるほど繊細でなめらかな美しい線と、身体の奥底に滲みてくる詩的な言葉。そして校正やメモにみられる細かい指定…

《赤白つるばみ》《致死量ドーリス》などの言葉が飾られ、《Kの葬列》や《KISSxxxx》の原稿が展示されていました。ベタにムラがなくって綺麗だな、とかここにホワイト入ってるんだ、とか、製本されたあとでは見られない部分が見れたのはファンとしてとても嬉しかった。貴重な機会でした。美しい原稿を前に感極まってしまった。

《戀愛譚》は、箱入りで布張りの装幀が美しくわたしもお気に入りの本なのだけど、タイトルの文字もいちから作られていると知って愛の詰まった本だな、とさらに好きになりました。

校正にも0.1ミリ単位の指定が入っていてただひたすらにすごいと思いました。色の指定も細かく書かれていて、ここまでされる作家さんがどれほどいるのだろう…見間違えていなければ八校とかまでされてたんだけど…!

カメラオブスキュラを思い起こさせるような暗い小部屋では、イメージビデオと、スクリーンにコマを映し出すインスタレーションが展示されていました。ずっといたくなるような空間だった。

大好きなKISSxxxxの様々な場面が次々とシャッター音にあわせて映し出され、物語の世界を思い出してじんわり。あ、この場面超好きだった、というのが永遠続いていくので動けなくなる。笑

ライブハウスを模した階段部分の展示。かめのちゃんとカノンのパネルと、細かなところまで作り上げられていて、遊びごころも感じるチラシたち。

本当に素敵空間だったな。

関東にも巡回してくれないかな、とずっと思っていたけれど、京都の地だからこその展示なのだと思います。会場の雰囲気とも相まっていての空間だった。

開館前に到着したので、併設の前田珈琲で限定ラテをいただきながら開館を待ちました。かめのちゃんとカノンだ…可愛いすぎる…うっとり…

お店のロゴの入った真っ赤なカップも可愛い〜。
壁一面に著名な先生方のイラストやサインがたくさん書かれていて、特別な時間をすごしているような気分になれるカフェだった。

ショップは規模が大きくてたくさんのグッズが揃っていました。学生服の女の子たちがずっとひとつのコーナーの前で迷っている様子が微笑ましかった。わたしはポストカードを購入しました。セットは4枚あわせて額装して飾ります。


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思えば《KISSxxxx》はわたしが生まれる前から連載されていた作品だし、致死量ドーリスやKの葬列も決して新しい作品ではないけれど、今読んでもずっと色褪せないまま存在している作品だと思います。

最新作の《赤白つるばみ》は、KISSxxxxの世界の心地よい空気感や間が感じられるなかにも、生きているなかで感じるもやもやを解いてくれるような、わたしにとってとても大切な作品になっています。特に下巻の中盤で恐怖について語られる場面は、初見からずっと忘れられずにわたしの心に刻まれています。

この作品、特に《赤白つるばみ・裏》には、何年か経った後に、こんな時代だったねえ、と思い返せるような良い色の褪せ方をしてほしいと思う。

祥伝社の磯本美穂さんが展覧会の関連書籍のなかで述べているように、登場人物たちが自分のためにお洒落をしている、というのもわたしが楠本作品に魅了されたひとつの要因だと思います。
作中で直接的に語られることはないのだけど、自己表現のためのファッション、誰かのためではなくて自分のため、好きだと思うものを好きなように、わたしもそんな感覚で好きな服を着ていきたい。かつてCUTiEやZipper、KERA!を愛読していた頃のことを思い出して。大げさかも知れないけれど、大好きな服を着るために努力する分、着ている時は元気になるし、無敵な気がしてしまうから。

楠本作品を好きすぎて影響されすぎているあまり、自分の半生とか生き方までいろいろと考えてしまった1日でした。このnoteも結局うまくまとめられなかったし…ここまでお付き合いくださってありがとうございました!

しかし素敵で貴重な展示を見ることができて本当によかった。いつかマンガミュージアムでひたすらにマンガを読んで1日をすごしてみたいです。

★追記★
京都のおさんぽnoteを書きました✏️

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