伊坂幸太郎の備忘録 「シーソーモンスター」
はじめに:
伊坂幸太郎の作品を読むたびに「伊坂幸太郎の備忘録」なるものをブログに書いてました。理由はシンプル。作品数が多いので「どんな内容だったのか」「どんな印象だったのか」自分であやふやになった時に確認するためです。
今回「シーソーモンスター」ではnoteでも「伊坂幸太郎の備忘録」を描きます。
「シーソーモンスター」:
本書には「シーソーモンスター」と「スピンモンスター」の2編が収録。最初はまったく「繋がりのない作品」と思って読んでたけれど「え!こんなところで繋がってたの? え〜! そうだったんだ」とびっくり! 伊坂幸太郎ならではの「リンクの妙」を味わえる作品でした。
「シーソーモンスター」は昭和〜平成の嫁姑問題の話。綿貫さんの妻、宮子さんは、未亡人の姑と同居するものの、暮らしていくうちに「姑は徹底的に合わない人間」だと感じる。ちなみに綿貫宮子さんは(元)女性情報員。
製薬会社に勤める綿貫(夫)さんが、取引先の病院の深刻かつ危ないトラブルに巻き込まれたり、不思議な保険外交員が来たりと、短い中に事件はてんこもり、そして意外な結末が用意されている。
嫁姑という立場以前に絶対に合わない2人。その2人がかなりハードな事件に巻き込まれるうちに「合わないものの、なんとなくの距離感」を持って居続ける感覚が、ふふふと微笑ましい作品でした。
「スピンモンスター」:
そして「スピンモンスター」。こちらは未来の設定。主人公水戸直正の職業は「配達人」。デジタルではないものを直接配達する職業。
人工知能「ウェレカセリ」の暴走と、それに関わる人々の話。もう、次から次に事件が起こって何がなんだかわからなくなってしまって、え? ここでこうなの!的なものにびっくり!
なんて言ってもわかりませんよね。すみません。中途半端にネタバレするよりか、この疾走感と回転とストリー性を感じて楽しんでみてください、という他ありません。
ええ、個人的にはかなり素敵なラストでした。好きです。
螺旋プロジェクト「海族」「山族」:
ふたつの作品には「徹底的に合わない2人の人間」が登場します。「海族」「山族」です。
作品の中に登場する保険外交員「石黒市夫」がこう言います。
「どうしても対立せずにはいられない相性があるんです。海の血を引く人間は、山の血を引く人間と出会ってはいけません。否応なく、ぶつかりあうことになるんですから。けっしてわかりあえません」
このセリフを聞いて誰かを思い浮かべる。そういう人も多いだろうし、わたしもまたそのひとりです。
しかしそれでも、せまい国のせまい社会の中で「けっして関わらない」で生きることはできない。その「距離感」や「答え」はそれぞれだけど、それぞれを物語を通して出し合う叡智が、この螺旋プロジェクトなのかもしれません。
螺旋プロジェクト。様々な時代設定で、いろんな作家さんが描いています。
こちらをご参照ください。
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