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ナラティブをわかちあう 〜ケアマネnote

「わたしの死に場所はどこじゃろか?」
要介護5のばあちゃんが先日わたしに聞きました。
「どこで死にたいですか?」
「どこで死ぬとじゃろか?」
「入院はしたくないんでしたよね。今の主治医の先生は、訪問診療もされています。だからそのままおうちで診てくださいます。あとは訪問看護という看護師もおりまして、訪問もしてくれます。だから、そのときの状況にもよりますけれど、最期までおうちにおられてもいいかと思います」
「それなら、そういうことでよろしくお願いします」

車椅子の要介護1の女性。
「わたしはね、これ以上悪くなったら、老人ホームに行くようにしとって。夫に迷惑かけるの嫌やもん。今でもいろいろしてもらってるのに、これ以上はやっぱりしてもらえん。ね、そのときは老人ホームを探してね」

要介護1の男性の妻
「今、わたしがどうかなったら、この人はどうすればいいかが心配なんです」
「ご主人は散歩が好きで、1日部屋にいるのは嫌いでしたよね。だったら、自由に外出できるケアハウスがいいと思います。以前、奥様が旅行のとき一回泊まられましたよね」
「ああ!あそこだったらいいです。食事も出るし、外出もできるから」
「ところで奥様は? 今は元気だけど、自分に万一のことがあったら、どこで生活される予定ですか?」
「わたしですか? わたしは這ってでもこの家にしがみついて生活したいです。そのときはよろしくお願いします」

ACP(アドバンス ケア プランニング)と言います。
自分の変化に備えて将来のことを決めておくこと。
もちろん、その時になると心境も変わるし「あのときはああ言ったけれど」ということも多いです。
年の初めだったこともあり、今月はいろんな人が自分の将来のことについて話してくださいました。

こういう話は「さあ、先のことを話しましょう」なんて言ってもなかなか出てきません。ちょっとした雑談の中に、出てくることが多いものです。
だから、この話が出てきたら、わたしは「支援経過」に必ず記録します。
本人のACPについて。
「どこで過ごしたいか」だけではなくて、「どうしてそう思うのか」「どういう気持ちで今そう言っているのか」そういうことも聞けたら記録します。

その支援経過記録は「さながら小説を書いているよう」です。
その人にはその人のナラティブがあります。
それを記録すること。
これが、わたしの仕事の一番の根本です。

最近気づいたこと。

わたしのケアチームはみんなでこのナラティブをわかちあっています。
みんなが本人の気持ちを理解して、たとえ、それが叶わなかったりむつかしいことであっても「その人のナラティブが損なわれないように」ケアをしてくれています。

すごいなあと、心底思います。

ナラティブを持ったひとりの人として、その人の物語とともに生きられるようにしてくれる人。
いつのまにか、そういう人ばかりのケアチームになってました。

そうは言っても、答えはなかなか出ません。
医療と連携するときもそうです。
お互いのフィールドが違いすぎて、なかなかゴールが見えません。

わたしたちは、手をつないで円になってUFOが降りてくるのを待つように、その人のナラティブを見上げながら「なにかがおりてくる」のを待っています。

ケアマネージャーって、うまく言えないけれど、こんな感じの仕事です。


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