飼育のこだわり

さて、ここまで読んで、私も生き餌の飼育を始めよう!と思ってくれた方がいるだろうか。
いてくれた時のためにも、私が生き餌を飼育する上でこだわっている点について紹介する。


・清潔で生態に合った快適な住居
・新鮮な水と健康的で嗜好性の良い餌
・与える前のガットローディング
・自分のキャパシティに合った種類を選ぶ
・増えすぎた場合、辞める場合の対策を具体的に決めてから始める
・継続が難しくなったら無理せず辞める
・近隣住民や同居している家族への配慮

特筆すべきものはざっとこんな感じだろうか。
ひとつずつ紹介していこう。


・清潔で生態に合った快適な住居

言うまでもないが、生き物を飼育する以上、餌であってもこれは譲れないだろう。
飼育本を読み、実際に飼育している人から情報を仕入れ、野生での生態に合わせて過ごしやすいように工夫してみる。
群れで暮らす動物は複数で飼い、お互いのフェロモンに誘発されて繁殖をする動物は少し匂いを残す、オス同士は喧嘩するので1匹ずつに分ける、狭いところを好む動物にはシェルターを与える、掘るのが好きな動物は床材を深めに入れる、巣作りが好きな動物には巣材を与える、寒がりな動物には誤飲しない素材で温かいものをケージに入れる、エアコンや加湿器で温度湿度を調整する、齧り木・回し車・アスレチックを設置する等。
掃除の頻度や残す床材の量や飼育用品などはいろいろ試しているうちに自分と生体にあったものが見つかるだろう。


・新鮮な水

げっ歯類の給水器については、ボトルタイプのものが良いのか、皿に入れるのが良いのか、いろいろ試行錯誤してきた。
その上で出た結論は、給水ボトルは基本的にケージの外につけること、容量が少なくても飲み口が軽くて飲みやすいボトルと、容量がそれなりにあるボトルの二種類をつけること。
脱水はしばしば便秘や子食い、共食いを引き起こす。
それを防ぐために、飲むのが億劫にならない飲み口の軽いボトルに常に水が入っているようにしておき、それを切らしてしまった時の非常用として容量のあるボトルをつけておく。
そしてぬめりや汚れは菌が増殖している目安になるので定期的に洗浄や漂白をして清潔に保つこと。
給水ボトルをケージの外につけるのは、齧られて破壊されたり、給水器本体が汚れたりしないようにするためである。
世話の効率も上がるので基本的に外につけることをおすすめする。


・健康的で嗜好性の良い餌

健康的な餌を与えるのは当然のことだが、私は自分が毎日ペレットしか食べられなかったら人生がつまらないと思う。

なので健康に気を付けつつ、適度に嗜好性の良い餌を混ぜることを大切にしている。

繁殖には体力が必要なので、たくさん食べることはたくさん繁殖することや速く育つことに繋がる。

それに短い人生なら美味しいもの食べたいじゃん。


・与える前のガットローディング

爬虫類の餌にする場合の話だが、餌にする前の個体を集めたケージを作り、そこでカルシウム・ビタミン豊富な食べ物や爬虫類用の人工飼料など、いわば間接的に爬虫類に食べさせたいものを餌となる動物に食べさせ、リンの多い食材や直接摂取したら体調を崩す原因になるであろう食材を食べさせないようにする。
ガットローディングに使う前提でなくても、生き餌にあげる食材の栄養価やその効果については調べておいた方が良いだろう。



・自分のキャパシティに合った種類を選ぶ

生き餌の飼育を始めると、しばしば一部の個体を隔離しないといけないことが出てくる。
その時、ゴキブリ1匹・マウス1匹・ラット1匹では、手間も設備も使うスペースも全く異なってくる。
早く大きい餌を手に入れたいからとラットの繁殖を始めたは良いものの、隔離隔離で部屋中がケージで埋め尽くされてしまうのでは本末転倒である。
ケージが増えすぎて一部をエアコンの無い部屋に出さなければいけなくなったり、隔離する設備やスペースが無いからと隔離できず個体同士が殺し合いになったりするのは尚更避けなければいけない事態である。
飼育スペースと環境に合わせて、栄養価、成長速度、繁殖速度、大きさ、匂いなどを十分考慮して、自分のキャパシティに合った種類を選ぶことが肝心である。


・増えすぎた場合、辞める場合の対策を具体的に決めてから始める

生き餌は需要があるんだから誰か引き取ってくれるでしょ、取りに来てくれるでしょ、実際たくさん売り買いされてるんだし。といった甘い考えを持たないこと。
これは始める前に思っている以上に重要になってくる。
信用の無い素人が突然生き餌を手放したいと思った時、都合良く引き取ってくれる人は予想以上に少ない。
価値があるんだからと値段をつければ尚更である。
本来哺乳類の売り買いには第一種動物取扱業の資格が必要であり、素人では相手にされないことも多々あるからだ。
何かあった時に確実に引き取ってくれる人を用意し、何かあった時に無駄になるとわかっていても確実に自らの手で殺して処分する度胸を持ち合わせている人でなければ生き餌の飼育などしてはいけない。
最近強くそう思う。


・継続が難しくなったら無理せず辞める

これは私が生き餌を飼う上で「生体と同じように扱うべき」という考えを持っているから出てくる項目である。
もしこれが爬虫類だったら、猫だったら、この状況を人様に見せることができるのか?と自問自答し、それができない状態で無理に飼い続けるのはたとえ餌でも虐待・不適切飼育と見なす。
私の飼育スタンスの上ではこれが大切になってくる。



・近隣住民や同居している家族への配慮

これはどんな動物を飼育するにしても必要なことだが、生き餌、特に「虫」「ねずみ」に関しては慎重になるべきである。
世間的イメージを鑑み、自分のしていることを他人の立場に立って考えてみる。
自分のやりたいように勝手に飼育することもできなくはないが、自分勝手な行動は爬虫類、爬虫類飼育者、生き餌(ねすみ・虫)、生き餌飼育者のイメージダウンに繋がり軋轢を生み、下手したら規制が進んで結局飼育者として自分の首を絞めることになるだろう。
外来種である爬虫類や生き餌の扱いは常に慎重でなければならない。
強行突破して軋轢を生んで、同居の家族が「お前がいない間に外に放った」なんてことになったらシャレにならない。
「都内で迷惑ご近所トラブル…ヘビ10匹にねずみとゴキブリ」なんて報道されたら飼育者の立場はどうなるだろうか?
ここでも自分の置かれた環境→キャパシティを理解し、常に他人から見た自分を意識して生活するべきだと私は思う。

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