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[読書記録] フランス組曲 あとがき 

作者: イレーヌ・ネミロフスキー
訳: 野崎歓・平岡敦
出版:白水社

作者のイレーヌ・ネミロフスキーはロシア革命後にフランスへ移住したユダヤ人。第二次世界大戦下ドイツに侵略されゆくフランスを背景に、個人の運命と共同体の運命の間で闘う人々の性を壮大な2部構成で描く。


この作品は、実は本来は4部で構成されるはずだった。しかし、前半を書き上げたところで、ネミロフスキーはナチスに連行され消息を絶ってしまう。本書の原稿はトランクに詰めて、作者の長女によって戦時中守り続けられた。60年の時を経て2004年に出版にいたる。

本書には、ネミロフスキーの執筆計画に関するメモ、そして、彼女と周りの人たちの最後の書簡が付録されている。本作品が今後どんな展開を迎える予定だったのかが垣間見えて興味深い。

彼女がいなくなってからの、夫と出版関係者による必死の捜索を伝える一連の手紙の内容は緊迫していて、容赦ない世の中が生々しく伝わってくる。そして、家族の愛が哀しく全体に響いている。彼女のその後の人生の一部を垣間見ることが、本作の3部以降を読むだけの心の揺れを引き起こしているような気がする。

音楽の代わり、映画でテンポと呼ばれるものをモデルにしよう。それは結局、多様性と調和への配慮だ。

p.493

あとがきによると、この物語で「本当の意味で高貴な唯一の人々」はミショー夫妻。なんだか、レ・ミゼラブルの前書きを思い出す。登場人物が皆哀れな運命をたどる中、マリユスとコゼットだけは小さな幸せを手に入れた。

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