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生産性の高いサービス産業が誕生しないと、日本の賃金は上昇しない

 産業別の現金給与総額を見ると、下表のとおりだ。
 調査産業計では27.7 万円だが、製造業が32.3 万円と、これより高くなっている。
 これに対して卸売業、小売業は24.8万円、医療、福祉は20.9万円と、平均より低くなっている

調 査 産 業 計      276,663
鉱業,採石業等     310,578
建  設  業     346,269
製  造  業     323,133
電気 ・ ガス業     448,084
情 報 通 信 業      407,074
運輸業,郵便業     312,124
卸売業,小売業      247,648
金融業,保険業     387,972
不動産・物品賃貸業   318,597
学 術 研 究 等      400,467
飲食サービス業等    121,151
生活関連サービス等   193,944
教育,学習支援業     310,372
医 療,福 祉      257,865
複合サービス事業     316,959
その他のサービス業    233,029
(「毎月勤労統計調査」、2018年4月、従業員規模5人以上)

 ところで時間的に見ると、製造業が縮小し、卸売業、小売業や医療、福祉が拡大している。
 全就業者に占める各産業の比率を見ると、2002年においては、下図のとおり、製造業が18.99%であり最大の産業であった。卸売業、小売業は17.50%だった。医療、福祉は7.49%でしかなかった

 ところが、製造業はその後縮小した。2017年では、下図のとおり、全就業者に占める製造業の比率は16.11%にまで低下した。それに対して、卸売業、小売業は16.46%であり、製造業を上回るにいたっている。さらに注目すべきは、医療、福祉が12.47%と製造業の比率に近づいたことだ。

 このように、賃金の高い製造業が縮小し、賃金が低い卸売業、小売業や医療、福祉が膨張するから名目賃金が上昇しないのである。

 安倍政権は、アベノミクスにおいて、春闘の賃金上昇率をあげることによって、全体の賃金を上げようとしている。しかし、いまや春闘で決まるのは、製造業などの大企業である。それは、いまや日本経済のごく1部分でしかない。

では、製造業が復活すれば良いのか?そうではない。
 アメリカの経済成長は、生産性の高い新しいサービス産業によって牽引されている。製造業に固執している地域は、デトロイトに見るように復活できない。目覚ましい成長をしているのは、新しい情報産業の集積地であるシリコンバレーだ。また、医療産業などに転換したかつての工業地帯であるラストベルトだ。

 アイルランドの経済成長が著しいことを述べた。これも、IT産業や金融業などの成長によってもたらされたものだ。

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