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【良い攻撃は良い守備から】J3 第24節 松本山雅×福島ユナイテッドFC マッチレビュー

スタメン

今季2度目のリーグ戦3連勝中。薄氷を踏む勝利の積み重ねではあるが、確実に勢いを取り戻しつつある松本。そんなチームに大きなアクシデント。前節に横山歩夢が肩を脱臼し離脱、U-19日本代表からも辞退となってしまった。チームトップスコアラーが抜けた穴は簡単に埋まるものではないし、戦術上のキーマンでもあるため、戦い方の見直しが急務となっている。
そんな中で迎えた一戦は、小松蓮をスタメンに抜擢した以外は同じメンバー。FW陣の奮起に期待したい。

一方の福島は、勝ったり負けたりが続く不安定なチーム状況。前半12試合では7つもクリーンシートを積み上げていたが、直近の12試合では1つのみ。得点数は伸びてきているものの、序盤の躍進のカギとなっていた堅守に陰りが見えている状況。守備は堅いが点が取れないので、少し攻撃面に手を入れたら、守備が崩れてしまう。本当にバランスが難しいのだろう。


リスクを負ってガンガンいこうぜ

前節と同じように、相手最終ラインへのプレッシングは2トップ+菊井悠介。目立った違いは、菊井悠介がトップ下ではなく左インサイドハーフに入っているので、プレッシング隊の並びが菊井・ルカオ・小松になっていること。

また、3バックに対して3枚での同数プレッシングということで、マンツーマン気味でハメに行った。福島で最も警戒すべきは、最終ライン+ボランチでの安定したビルドアップ。ここを破壊しようという見込みである。2トップ+菊井で3バックを監視し、ボランチには佐藤和弘とパウリーニョが出ていって潰す。時には、これくらいリスクを負った前がかりなプレッシングを見せていた。

前からハメるプレス

少しゲームが落ち着いてくると、パウリーニョや佐藤和弘が前に出ていくのは自重気味に。代わりに、2トップの一角がプレスバックしてボランチを牽制するという連動性のある守備ができていた。ルカオは大武の左側から寄せていくことで右サイドへの展開を誘導。雪江は菊井が抑え、ボランチは逆サイドのFWの小松が牽制しているので、近場のパスコースが消えている状態に。福島の最大の強みである、ボランチ・CB・ウィングバックでトライアングルを作りながらの組み立てを封じることができていた。
2トップの守備意識、特にプレスバックの意識が非常に高く、このあたりはルカオ・小松蓮というコンビを起用したときの明確なメリットになってくる。

特筆すべきは小松蓮だろう。
DAZNで11:32~13:00までをぜひ見返していただきたい。ずっと福島にボールを握られているのだが、この1分半の中で小松蓮が何度守備の動き直しをしているか。相手3バックを牽制しながら、常に首を振ってマーク対象の位置を把握し、ポジションを取り直す。福島がサイドチェンジを繰り返して攻撃の糸口を探る中で、彼の守備での貢献度は抜群だった。そして、結果的に焦れた相手はロングボールを選択し、タッチラインを割らせることに成功している。

小松蓮のプレスバック


福島の変化

最終ライン+ボランチのビルドアップが封じられたと見るや、福島は二の手を繰り出してきた。それはシャドーのサポート。新井と長野は、時間経過とともにスルスルと中盤に降りてくる動きが増えていった。松本もこの動きは想定内だったようで、常田克人・野々村鷹人がポジションを空けてでも付いていき、シャドーに楔のパスが入ったら確実に潰そうという狙いが見て取れた。

落ちるシャドーと付いていくCB

ただ、ここまで比較的良かった松本の守備に迷いが生じたのは、前半中盤~後半にかけて。シャドーが中盤では留まらず、相手ボランチの位置まで降りていくようになったのだ(昨季終盤のセルジーニョ、今季対戦した富山の川西みたいな)。前述の通り、常田・野々村が付いていくという原則は決まっていたものの、どこまで追いかけるのか?は定義されていなかった模様。深追いしすぎれば背後に広大なスペースを空けることになるし、迷いどころが生じてしまった。

結果的には、インサイドハーフの佐藤和弘・菊井悠介に受け渡すという決断になったようだが、中盤で列を複数移動するシャドーの動きは少し厄介だったかもしれない。

深追いするか迷う

とはいえ、全体が前がかりにプレッシングに出るということはリスクも抱えている。最も顕著なのは、最終ラインが非常に高く設定されること。背後の大きなスペースをマネジメントする必要が出てくる。

そして福島もこのスペースを幾度となく狙ってきた。大まかな流れとしては、松本の前線・中盤をプレッシングで引き出しておいて、ロングボールで一気に局面をひっくり返すというもの。FWにポストプレーも上手く、独力でフィニッシュまで辿り着けるストライカーを擁しているからこそ可能な戦術である。高橋とマッチアップすることになったのは大野佑哉で、福島はこのマッチアップで事故が起こることを期待していたように思った。

高橋へのロングボール

そして絶好のチャンスが巡ってきたのは、61:55。なんでもないクリアボールだったが、大野が高橋と競り合った際に足を滑らせてしまい、カバーに入った常田もまさかの処理ミス。常田が下がりながらの守備を強いられての1on1という大ピンチを迎えてしまう。常田の身体の向き、ボールから目を切るようなターンといった守備対応はいかがなものかと思うが、結果として高橋のシュートは枠を捉えきれず。福島として後半最大の決定機をものにすることができなかった。


今季ベストなカウンター

試合の主導権を握れた理由は、守備にあったと思っているが、攻撃面でも特筆したい部分があった。

先制点に繋がった場面は、まさに選手起用と日頃からの意識改革が生んだゴールだったと思う。横山歩夢の欠場によって、2トップの人選はルカオと小松蓮という組み合わせに。これまでは横山の良さを引き出す脇役を演じてきたルカオだったけども、この試合は彼が主役。守備での貢献度が高い相棒がいてくれる分、多少は攻撃に専念することができていた。
また、2トップの関係性としても少し異なっていた。横山&ルカオの場合は、横山をカウンター要員として前線に残すことが多かったが、ルカオ&小松の場合はルカオが最前線である。

先制カウンターの起点となったのは、小松蓮のプレスバックから。自陣深くまで戻ってボランチを潰し、すぐさま前線で待つルカオへ縦パス。守備→攻撃への切り替えが早かったし、ずっとチームとしての課題だった”奪った後1本目のパス”が決まったので、攻撃のスイッチがバシッと入る。
ルカオは佐藤和弘へ落として、すぐさま右サイドの裏のスペースへランニング。佐藤和弘も迷わず縦パスを選択し、一気にカウンターがスピードアップ。追いすがるDFを引きずりながらボックス内に侵入したルカオは右足を一閃。シュートは惜しくも枠を外れていたが、猛烈なスプリントで逆サイドに詰めていた外山凌が押し込んでゲット。

小松蓮の守備意識の高さ
奪って1本目のパスの正確性
ルカオの繊細なポストプレー
佐藤和弘の前選択
ルカオの推進力
外山凌の圧倒的なスプリントと信じてエリア内まで走り込んできた勇気

その全てに拍手を送りたい。

まさに完璧なカウンターだった。

名波監督が就任してから口酸っぱく言い続けてきた”前選択の意識”。
アウェイYS横浜戦、ホーム沼津戦でこれは効いてるなあというゴールが生まれていたが、個人的には久しぶりな感覚。

このクオリティのカウンターを繰り出せるのであれば、横山歩夢不在という危機的状況にも光が差してくる。


総括

流れの中で取り上げることができなかったので、最後に書くけども、なんだかんだビクトルのPKストップはめちゃくちゃ大きかった。この試合のターニングポイントだったと言って間違いない。

松本のボランチ消しに苦戦して活路を見出したかった福島にとっては、ゲームの流れを手繰り寄せる絶好のチャンス。逆に松本としてテンション高くゲームに入っていた分、早い時間帯に追いつかれるとガックリ来てしまう危険性があった。そんな試合を左右する場面でも、コースを読み切って胆力はさすが。あと、PKストップした後に、すぐさま起き上がって次なるシュートに備えていた切り替えの早さも見逃せない。やはり神です。

翌日に行われた試合で、いわきも鹿児島も勝利したため、勝点差を詰めることはできなかったが昇格争いから脱落することもなかった。
両チームともかなり苦しいゲームになっていた印象で、24試合近くを戦い抜いてきてしんどいのは決して松本だけではない。

これからの最終盤に向けて、注意しなければいけないのは累積警告での出場停止。この試合で外山凌と常田克人が累積4枚のイエローカードをもらってしまったため、次節が出場停止となる。両者とも調子が良かっただけにチームとしては痛いが、シーズンフル稼働を続けてきていることを加味すれば、ちょうどよい休息と捉えたほうが前向きかも。
あと、菊井悠介も出場停止リーチなので、不用意な審判への煽りや手癖の悪さは抑えめに・・・笑

常田克人と外山凌という主力を欠く次節、誰がスタメンに名を連ねてくるかは興味深い。僕は前貴之が移籍してしまったことで4バックへの挑戦は頓挫してしまったと見ている。裏を返せば、3バックでシーズンを戦い抜く覚悟を決めたという感じ。

3バックに当てはめて軽くスタメン予想をしておくと、3バックは左から宮部大己・大野佑哉・野々村鷹人。中盤は変わらずパウリーニョ・佐藤和弘・菊井悠介で、ウィングバックは右に下川陽太、左に住田将。2トップにルカオと小松蓮。

いよいよチームの底力が試される時期になってきた感。

しびれる試合を楽しんでいきましょう!


俺達は常に挑戦者

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