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2021松本山雅FC選手総括【FW&監督編】

この記事では現実を受け止めて来季へ向けて歩みを進めるために、まずは今シーズンを総括していく。

GK編、DF編、MF編①、MF編②、FW編と5回に分けて各選手の短評を書いていく予定(MF編は長いので分割)。夏に移籍していった選手は含めるが、他クラブに期限付き移籍している面々は僕が直接プレーを見れていないので割愛する。

ではいってみよう!

GK編・DF編・MF編①・MF編②はこちら!


凡例

#背番号 選手名
リーグ戦出場試合数(うち先発試合数)出場時間 得点 アシスト


FW編

#9 ルカオ

4試合出場(先発3試合)216分 0得点 0アシスト

オフの補強の目玉にして、松本に不足していた物理で殴れるFW。金沢では139分出場で10得点、ほぼ3試合に2点のペースでネットを揺らした助っ人に心躍ったサポーターも多かったはずだ。僕も例に違わずその一人。
ただ、今年は怪我に悩まされたシーズンとなってしまった。金沢時代から細かな負傷で離脱していたのは知っていたが、今年は8月に右膝蓋骨骨折という重症を負ってしまい、手術を決断。本格的に稼働できたのはラスト2試合だけだった。
たった4試合しか見れていないがはっきりしたことがある。彼はポストプレーヤーではなく、重戦車。誰だってあの分厚い胸板を見たら「とりあえずDF背負ってみ?」と言いたくなるものだが、見ている限りだと背負ってのプレーは得意ではなさそう。モンスターの片鱗を見せたのは、むしろドリブル突破。テクニカルではないけれど、中途半端に寄せるDFは弾き飛ばしながらゴールへ突進する。彼、スピードも結構あるので、J2の守備ラインなら一人で破壊できてしまう。これこそが彼の一番のストロングポイントだった。
第17節の町田戦ではひたすらにロングボールを放り込んでた気がするし、復帰戦となった第41節相模原戦も最初は競り合いを挑ませていた。だが、途中でぱったり放り込みをやめて、榎本樹というターゲットを相棒に据えたあたり、首脳陣も彼の活かし方を十分に把握できていなかったのかもしれない。まあ負傷で長い間離脱していたのだから仕方ない部分もある。
1995年生まれの彼はまだ26歳。キャリアを考えるとそれほど年俸は高くないだろうし慰留するだろうが、J2クラブから引き抜きの話は来るはずだ。コンディションを整えてJ3へ放り出したら生態系をぶっ壊すくらいの活躍を見せる確信はあるんだけどなあ。

大胸筋パツパツ。
ただ、意図的にワンサイズ小さいウェアを着ている可能性もある。


#11 阪野豊史

33試合出場(先発20試合)1862分 3得点1アシスト

松本のエースも今年は厳しい1年を過ごすことに。ルカオ・鈴木国友・山口一真とライバルが多く加入した中でも、変わらずにFWのファーストチョイスを守り続けた点はさすが(他の選手が負傷離脱で稼働できなかった期間が長かったとはいえ)。ただ、33試合に出場したFWが3得点という結果は寂しい。
2016年以降、毎年コンスタントに10%以上のシュート決定率を残してきた。2016年の愛媛在籍時と2019年の山形在籍時は、20%を超える数字を残しているのだから驚異的。しかし今年は、7%に留まってしまった。そもそものシュート数も少ないので、チームとして阪野までボールを届けられなかったのは事実だろう。決定率が下がってしまったという点に関しては、彼が守備のタスクを多くこなしていたことと無関係ではないと思っている。
前線からのプレスを基軸にゲームプランを組み立てていた柴田監督にとって、守備のトリガーを引ける阪野豊史は最も重要なピースだった。試合状況、選手の立ち位置、相手選手の特性などを考慮しながら、プレスに行く・行かないの正しいジャッジを下せる選手。むやみに突っ込むと守備陣形に穴を開けてしまうし、行くべきタイミングで寄せないと縦パスを許してしまう。なかなか数字には現れないが、彼が出場した試合とそれ以外を見比べると段違いにプレスのハマり具合が異なる。強度の高い守備をこなす代償となってしまったのが本来最もパワーを必要とするフィニッシュの局面。あれダケ守備で走っていたら、ヘトヘトになってしまうのも仕方ない気がする。
後半戦で出番を減らしたのは、伊藤翔の加入とチームがプレッシングからリトリートへ方針転換をした影響が大きそう。ロングカウンター主体でスプリントを要求されると、伊藤翔に分があったかなと。それでも空中戦の強さは買われていたようで、得点がほしい場面では必ず投入されていた。
果たして来年32歳を迎えるがJ3で満足してくれるだろうか。金沢とかハマりそうなのでちょっと怖い。


#14 鈴木国友

37試合出場(先発28試合)2387分 6得点 0アシスト

開幕節からコンスタントに出場機会を得た眠れる怪物は、第6節に目覚める。秋田戦・磐田戦・甲府戦と3試合で5得点の固め取り。特にハットトリックの活躍で2点ビハインドからドローに持ち込んだ甲府戦はセンセーショナル。ヘディングでの先制点、こぼれ球を押し込んでの2点目、スルーパスに抜け出して流し込んだ3点目とバリエーションも豊富で、これは今季化けると確信したよね。

2試合空けて第11節の北九州戦でも決勝ゴールを叩き込んでキャリアハイの6点目。二桁間違いなし、もしかしたら夏に引き抜かれてしまうかも!?とか心配してた。
ところがどっこい、それ以降はノーゴール。出場すれば高い確率で決定機を迎えるのだが、枠に飛ばなかったりGKに当ててしまったり。シーズンが進むにつれて露骨に焦りも見え始め、ビハインドの状態で途中出場しながら、ドリブルで無理につっかけてロストしたりする場面も増えていった。そのエゴイスティックな部分を横山歩夢に分けてやってくれ!
まあ何で点が取れなくなったかと言われたら、単純に相手に分析されたから。前述の固め取りをしたあたりで警戒されるようになって、マークが厳しくなったり、相手の寄せが早くなったのを上回れなかった。シーズン2桁得点を目指すのであれば、コンスタントにネットを揺らし続けないと。良い選手ならば対策されるのは当たり前で、それを超えた時に本物の怪物になれるはず。
まだ若いし、今季の活躍を見て獲得に動くクラブも出てくるはず。古巣の湘南に戻るとかもアリかもしれない。一皮むけたら普通に15点とか取れる選手だと思うので頑張ってくれ!


#15 伊藤翔

18試合出場(先発13試合)1168分 4得点 0アシスト

かつて”和製アンリ”と呼ばれた逸材も気づけば33歳。横浜FCで定位置を掴めずにくすぶっていたところを、名波監督直々の声がけに応えて夏にやってきた。
スピードもあって、技術も標準装備しているので、器用に色々できてしまう。それは良い部分でもあるのだが、FWとしてはずっと足かせになっている気もしてならない。良い意味でエゴイスティックに点を取ることに尖っている方が案外ウケが良かったりするのだが、フィニッシュ以外のタスクを任されて便利屋的な使われ方をされてしまいがち。そんな彼の特性を見抜いていたのかは分からないが、名波監督は原則として点取り屋としてのタスクを任せることが多かった。
もちろん、状況によってポストプレーをしたり、サイドに流れて起点を作る動きも求めるのだが、エリア内で勝負してナンボの選手。その結果が、20本というシュートにも関わらず4得点という結果につながったと思う。北九州戦で決めたゴールなんかは、まるでボールがこぼれてくる位置が最初からわかっていたかのように、榎本樹がジャンプした時点で落下地点に走り込んでいる。ストライカーの嗅覚とでも表現すべきだろうか。

名波監督が来季も指揮を執ることが確定しているので、彼も残留が既定路線だと信じたい。キャリアで一度も到達できていないシーズン二桁得点を松本の地で達成した暁には、チームも最高の結果を手にできるのではないだろうか。


#18 戸島章

15試合出場(先発2試合)319分 0得点 1アシスト

なかなかどうして活かしどころが難しかった選手。191cmの身長は魅力的なのだが、空中戦の勝負は得意ではない。どちらかと言うと、繊細なボールタッチが武器。楔のパスを正確に落とすポストプレーだったり、時折見せるヒールキックなどのテクニカルなプレーは見た目からはギャップがある。柴田体制ではパワープレー要員として使われ続けていたが、一番輝いたのはアウェイ北九州戦で、鈴木国友へ優しく落としたポストプレーだったというのは皮肉。見た目だけで人を判断してはいけないんだと誰かが言っていたような気がする。
夏に東京Vへ移籍していったが、気づけば行方不明になっていた。情報が追えていなかったので負傷してしまったのか、純粋にメンバー外になってしまったのかはわからない。ただ、個人的には東京Vみたいなテクニカルなチームの方が合うんじゃないかと思っている。来年はいない気がするので先にお礼を。ありがとう!


#25 榎本樹

13試合出場(先発3試合)498分 3得点 1アシスト

今季のサプライズその3。いやあマジでびっくりした。ぶっちゃけ昨季もほとんど試合に絡めていなかったし、練習試合で点は取っていたけど、前半戦はベンチ入りさえなかった選手。最終盤に救世主として登場するとは。これで残留決めていたら松本市内のどこかに銅像が立っていたかもしれない。
高校時代に選手権で得点王を取っている(しかも2年生で)なので、持っている能力はピカイチ。あとはフィジカルをプロ仕様に切り替えるのと、スピードや間合いなんかを慣れていければって感じだった。身長は高いけど線は細めだったので、少し苦労したのかも。
稲福卓がとあるトレーニングマッチで得点を決めたことで一気に自信を深め、良いプレーを続けていたら最終戦に呼ばれたって話があった。若い選手はひとつのきっかけで爆発的に伸びることがあるけど、榎本樹にとっては金沢戦のゴールがそれだったのかなと。自分の得意な形でプロ初ゴールを決めて、そこからは本当に自信たっぷりにプレーできていた。
186cmという身長も十分ハイスペックなのだけど、なぜ彼が空中戦で無双できるかというと、ジャンプのタイミングが良いのと落下地点の予測能力が高いから。バレーボールの解説者が話すには、垂直跳びの高さも大事だけど、もっと大事なのは最高到達点でボールを捉えられるかどうからしい。この技術が彼はめちゃ高い。だから、同じくらいの身長のDFと競っても先にボールに触れることができる。付随して、ボールの落下地点を予測するのも抜群にうまいなと。予測ができていれば、相手よりも先にジャンプモーションに入って、有利な態勢で競り合うことができる。もしDFがアフターで身体を当てに来たらファウル。先に跳べ!と言われるのはこれが理由。
おまけに町田戦で深い切り返しで相手を交わして冷静に流し込んだもんだから、こりゃすごいなと。シュートのレパートリーまで増えている。来季ブレイク候補の筆頭株。15点くらい荒稼ぎして得点王&チームを昇格に導いたら、今度こそ銅像待ったなしだと思うので頑張ってほしい。
(注:決して銅像建設業者からお金をもらっているわけではありません)


#32 横山歩夢

16試合出場(先発8試合)513分 0得点 0アシスト

次世代の前田大然枠。最初に見た時の印象は全く同じで、なんかよく分からんがとにかく速い。高卒ルーキーということを考えれば、16試合出場は立派だし、プロの舞台でやってみて収穫も課題も多く出たのではないだろうか。45分限定のプレス要員と化していた時期もあったのは少し可哀そうだった。
抱えている課題は前田大然の1年目とよく似ている。持っているスピードを持て余していて、効果的な使い方が身についていないというか。前田大然は水戸へ期限付き移籍した際に、そこらへんのイロハを叩き込まれてきた。その結果海外に行ってしまったけど。守備の基礎基本は阪野豊史という格好のお手本が居るので色々と吸収してほしい。
紆余曲折あったルーキーイヤーの最後の最後、長崎戦の前半終了間際に訪れた決定機でラストパスを選択したのは一生記憶に残るだろう。名波監督にも相当言われたみたいだし、実際にそのプレーが理由で交代させられている。すごく良い青年なんだけど、FWとしてはもっとエゴを出してもいいと思うし、まだ遠慮してしまっている部分が大きいと感じる。「チャレンジした上での失敗は俺が責任取る」くらいのことを名波監督は言いそうなので、その言葉を鵜呑みにして失敗しまくって「監督、責任とってくれるって言いましたよね?」と汚れのない目で訴えてほしい。


#45 山口一真

13試合出場(先発4試合)410分 0得点 0アシスト

左膝前十字靱帯損傷、左膝外側側副靱帯損傷という選手生命を揺るがしかねない大怪我から復活を目指したシーズン。まずはピッチに帰ってこれただけでも十分に合格点をあげたいくらいである。思ったよりも復帰が早かったので、無理をしていないか心配しているくらいだ。
負傷したのが軸足の膝だったということで、復帰して間もない頃は「キックする際に力が入らない感覚がある」というようなコメントも残していた。ただ、試合前のシュート練習を一度でも見た人は、彼だけはモノが違うと感じたのではないか。膝下の振りの速さ、シュートスピード、狙っているコース、すべてがワンランク上の選手だなあと思った。水戸でゴールを量産したのも納得。
ちょうど前線の組み合わせを試行錯誤している時期だったこともあり、復帰してから13試合連続で出場機会を掴んだが、得点に絡むことは出来ず。伊藤翔と榎本樹という2トップが固まったことで、ぱったりとメンバーから外されてしまった。
彼を本気で活かそうと思ったら、王様としてチームの中心に君臨させるのが正解。王様として迎え入れてくれるチームに身を置くか、飛び道具として組織の中に溶け込んでいくか。どういったキャリアを選んでいくのか興味深い選手。怪我だけは気をつけてね。


監督 柴田峡

19試合 4勝7分8敗 勝点19 得点16 失点30

監督交代時に振り返った記事があるので詳しくはこちらで。

そもそも監督のやりたかったサッカーとスカッドが合ってなかった説とか、結局4-4-2はどこ行った問題とか、選手に言ったけど伝わってませんでしたはなんでなの問題とか色々あったけど、とりあえずお疲れ様でした!!!


監督 名波浩

23試合 3勝6分14敗 勝点15 得点20 失点41

まさか元日本代表の10番が松本に降り立つなんて夢にも思わなかった。磐田を去ってから札幌のミシャだったり、徳島時代のロドリゲスとかに師事していたらしく、どんなアップデートが施されているか楽しみにしていた。
結果だけを見れば惨敗。就任時に自身のことをリアリストだと言っていたが、率直に言わせてもらうとギリギリまで理想とするサッカーにこだわったなと。平川怜と佐藤和弘をボランチに並べて、3バックから右肩上がりの可変システムを使ってみたりしたのも、多少師事した監督の影響を受けているなーと思った。ただ、元々4-4-2でやろうとしていたスカッドなので、3バックにした時点でいびつだったし、ましてや可変システムには耐えられなかった。守備が崩壊してズルズルと負けが込んできた中でもパスを繋ぐことにこだわっていたが、町田戦に敗れたあたりで方向転換。おそらく三浦ヘッドコーチが主体となって3-5-2で守備ブロックを構築すると同時に、セットプレーに力を入れ始めた。しっかりと対戦相手を分析し、理にかなった采配をするようになったなーと思ったのも最終盤に入ってからだったので、コーチの影響が大きそうな気がしている。
個人的には、すべての監督が戦術的に優れている必要はないと思っている。横浜FMが優勝したときも、監督のポステコグルーはビジョンを描いてチームの進む方向を指し示す人で、実際に日々のトレーニングを見ていたのはヘッドコーチのクラモフスキー。海外でも監督とコーチの分業制は普通になってきているし。
名波監督はモチベーターとしては一流の部類に入ると思う。逆に言うと、優秀なブレイン(ヘッドコーチ)を付けてあげさえすれば、良いサイクルが回るのではないかなと。来季のスタッフ体制はまだ確定情報として出てきていないが、分析担当だったり、実際にトレーニングを指揮するヘッドコーチの存在がチームを左右しそう。
あとは名波監督の言葉を体現できる”ピッチ上の通訳”みたいな選手もほしい。それこそ愛弟子の選手の獲得リクエストを出していそうな気がしてたり。
その辺りを知りたい人は、この記事を読むと目星が付けられるかもしれないよ!!!|ω・)チラ
(特に賄賂をもらっているわけではありません)

まあいかんせん今年は仕込みの時間が足らなかったと思うので、キャンプを挟んで迎える来季には期待している。


以上!!!!

めちゃ多かった!!!!!

今年もお疲れ様でした!!!!


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