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【魔の6分間】J2第35節 松本山雅×FC琉球 マッチレビュー

スタメン

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連敗中の松本は前節から2枚スタメンを変更。星キョーワァンに代えて前節を直前で回避した橋内優也、前貴之に代えて下川陽太が入る。また、ベンチには久しぶりに田中パウロ淳一と表原玄太が帰ってきた。ともにトレーニングマッチでは好調を維持していたのは知っていたので、満を持してのメンバー入りとなる。一方で前々節に復帰した前貴之が再びメンバーから外れていたのは気になるところ。事前情報では特に負傷などは伝えられていなかったが、アクシデントではないとよいが。

対する琉球は目下7試合勝利がなく泥沼にハマっている状態。試合の直前に樋口監督の解任が発表され、後任としてコーチを務めていた喜名哲裕氏が監督に就任した。今季は序盤から一時首位に立つなど好調をキープしながら、中断期間明けから大失速。ここ数年の実績などを総合的に評価した上で決断に踏み切った格好だが、「責任を感じている」という旨のコメントを残していた選手が奮起できるか注目が集まる。


抑えるべきを明確に

試合に入る前に前回対戦を少し振り返っておこう。名波監督の初陣となったアウェイゲームでは清武にハットトリックを許すなど4失点で大敗。山田真夏斗と浜崎拓磨で組んだダブルボランチはロマンがあったが、蓋を開けてみると撤退守備での強度不足を露呈してしまう。琉球のパス回しに不用意に飛び出して背後を取られるシーンを繰り返してしまい、散々に振り回された試合だった。

この時と比べて琉球の調子が上がっていないのは明確だったが、基本的にやることは変わっていない。その上で個人的に焦点だと思ったのは3-1-4-2を継続するかどうか。佐藤和弘をアンカーに置く中盤逆三角形のシステムはハマった部分も一部あったが、守備面でスペースのマネジメントができずに中盤を制圧される試合が続いていた。琉球相手にどういった入りをするかは試合の大筋の流れを左右すると思っていたのは試合前の話。

結果的に松本は琉球の良さを消すことに重点を置いた戦い方で臨んだ。システム上は3-4-1-2と記せるが、実際の並びは最終ラインに5枚を並べて河合秀人と鈴木国友をブロックに組み込んだ5-4-1。5バックにしたメリットは、最初からハーフスペースにDFを配置できていること。さらに最終ラインの前に4枚の選手を並べて中盤のスペースを極限まで削ることで、琉球のサッカーの生命線である縦への楔のパスとダイレクトプレーを封じ込めることに成功する。

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とにかく守備での優先度は中央。トップ下や内側に絞ってくるサイドハーフが絡んでの中央突破を抑えることが何よりも大事で、琉球の最終ラインやサイドでボールを持たれるのはある程度許容していたように思う。その証拠に、伊藤や鈴木、河合が相手の最終ラインまでプレスを掛けることは稀。仮にプレスを掛ける際も伊藤が何度も後ろを振り返って味方が連動しているか確認する仕草が印象的だった。プレスの旗頭になれるのは伊藤の良いところだし、プレスに行く際も必ず内側→外側へ追い出すようにコースを限定していたのは流石のプレーだった。鈴木も焦れて単騎で突っ込むことがなかったのはシーズン序盤から明確に成長している点。伊藤が頻繁に指示を出してコントロールしていたのも大きかったと思うけれど、守備の部分では山口一真や横山歩夢と比べて頭一つ抜けた印象がある。

金井と沼田が構える琉球の攻撃的サイドバックも嫌な存在ではあったが、そこに対しては河合と鈴木が頑張ってスライドすることで対応。サイドハーフで外山凌と下川陽太をピン留めしてうまくサイドバックを浮かせる組み立てはお手の物だったが、この日はサイドバックから次のパスコースが見当たらずにバックパスを選択する場面が多かった。前半を通して松本の守備は機能していたし、琉球を苦しめていたと思う。


喉元にナイフを突きつける

ここまでは守備の話。とはいえブロックを組んで守るというのはここ数試合ずっと見慣れている光景であり、チームが抱える課題はどちらかというと攻撃面が大きい。自陣で奪った後に陣地回復する手段がなく、蹴っ飛ばすことで自らボールを捨ててしまい、相手のターンがずっと続くというものである。

この日違ったのは、守備だけではなく攻撃のフェーズもある程度設計されていたこと。いや、設計自体は毎試合されていたのかもしれないが、実行まで移せていた点で明確な違いを見せた。

主体となったのは鈴木国友。前述の通り守備の局面では5-4-1の4の一人として守備ブロックを構築しながらも、ボールを奪えば全力でスプリント。カウンターの急先鋒として琉球の最終ラインを脅かす。狙っていたのは高い位置を取るサイドバックの背後。特にどちらのサイドを狙うとかは決まっておらず、左右どちらのスペースにも頻繁に鈴木は顔を出していた。

これまでの数試合は”とりあえず前線に蹴る”という色合いが濃かったクリアに関しても、”クリア=攻撃に移るファーストプレー”という認識が揃っており、中央ではなくサイドに蹴り分けていたのは改善されたポイント。琉球の最終ラインが圧倒的に人に強いタイプを並べているわけではないのと、比較的高い位置をキープしようとする特性も松本のカウンターには追い風となった。それを差し引いても、明確な意図を持ったプレーが見られたのは間違いなく直近数試合と比べると好材料。

また、鈴木以上に琉球の驚異となっていたのは河合秀人だろう。特に前節、追い風になったにも関わらず決定機を作れなかった後半を名波監督はとても悔いていた。逆に向かい風の中でもゴラッソを沈めた上門に代表されるように、松本に足りていなかったのは”振る意識”。前半だけでシュートを3本放つなど自ら体現してみせた河合のプレーは印象的だったし、うち2本は決定機だっただけに決めたかったところ。

割と手応えを掴んだ状態で前半を終える。


狙い通りの先制点

珍しく特に変えるところはなく、我慢強くやり続けようという指示が飛んだハーフタイム明け。松本は幸先よく先制に成功する。左コーナキックを佐藤が蹴り込むと、ニアで常田克人が合わせる。GKが弾いたボールがゴール前にこぼれると、伊藤が泥臭く押し込んでネットを揺らす。

この場面、琉球はマンマークをゾーンの併用で守っている。空中戦に強い赤嶺とリヨンジをニアに立たせてストーンとしながら、それ以外の選手でマンマークに付く形。常田はマークに付いていた沼田を振り切って、その赤嶺とリヨンジの前でヘディングしたのがポイントだった。ニアのストーンより前で触られて無効化されてしまうのは今季松本が何度も苦い思いを味わってきた形でもある。やはりマンマーク+ゾーンを併用する相手に対してはニアが狙い目になると感じたと同時に、セットプレーを担当している三浦ヘッドコーチの分析と仕込みの賜物だとも思う。

この形を再現性を持って繰り出せるようになると、常田だけでなく阪野豊史、伊藤翔などニアでせることを得意とする選手も生きてくる。がっちりt守りながらセットプレー一発で仕留める。さながら昔の松本を思い出させるような試合展開だった。


受け身に回った代償

先制したところまではよかったが、60分すぎから松本に疲労の色が隠せなくなってくる。5-4-1で守備ブロックを敷くところまでは前半と変わらないのだが、全体的に後ろに重くなり、ブロックを敷く位置が低い。こうなると前半から許容していた琉球のサイド攻撃が牙をむきはじめる。

序盤に書いたように松本の守備は中央→サイドの優先度で守っており、空きがちなサイドバックに対しては河合と鈴木がスライドすることで対応してなんとかバランスを保っていた。時間経過とともにスライドが間に合わなくなってくると、サイドバックの位置で起点を作られるように。その様子を見た琉球は、ボランチを経由しながら横パスで松本の守備陣を揺さぶりながら、ズレを作り出していく。5バックのメリットは最初から5レーンに人を配置していることでスペースを消すことにあるが、人をずらされてしまっては根本の優位性を失ってしまう。

60分~70分にかけては特に松本は耐える時間帯が続き、ピッチで闘う選手は必死に守りながら、状況を打開するためのベンチからの修正を待っているような状態だった。試合後のコメントで名波監督は、飲水タイムに入りやすいように自分たちからプレーを切れなかったことが勝負の分かれ目だったと語っていたが、僕もこれには同意見。同点に追いつかれた直後に飲水タイムが設けられたことからも、その5分くらい前から主審はタイミングを見計らっていたと思う。完全にタラレバの話で恐縮だが、リードした状態で飲水タイムを迎えていたら逃げ切っていたと確信できるくらい、本当に運命を分けた時間帯だったなと。

飲水タイムを挟んでも嫌な流れは断ち切れず。77分、沼田のクロスをファーで上原慎が折り返してニアで風間宏希が触ると、ふわっと浮いたボールは逆サイドのサイドネットに吸い込まれて琉球が逆転。この場面でも、起点となっているのは左サイドバックの沼田で、フリーでクロスを上げさせてしまっている時点で守備としては厳しい局面だった。失点シーンの少し手前から見返してみると、選手も相当しんどそうで戻るので精一杯。リードしていて感じていなかった疲労感が同点に追いつかれたことでドッと押し寄せてきたのかもしれない。

その後は田中パウロ淳一、山口一真と攻撃的なカードを切って反撃に転じるも、ネットを揺らすことはできず敗戦。リーグ戦3連敗となってしまった。


総括

松本は今季初の逆転負け。昨季から続いていた先制すると無敗神話は14試合でストップとなった。

55分までは完全に松本ペースだっと言っていいだろう。守備で相手の強みを消しつつ、セットプレーで仕留めたところまではシナリオ通り。それだけに同点に追いつかれるまでの5分間が本当に悔やんでも悔やみきれない。苦しい時間帯で耐えきれないが故に現状の順位に甘んじているとも言えるが、ここで失点しないこと、失点してもバタバタと崩れずに立て直せるかどうかが問われてくる。今のチーム状況を考えると、立て直すというのはメンタル面の方が大事になってくるだろう。ピッチ内で下を向いてしまう選手が多い中で、チームを鼓舞して奮い立たせるのは誰か。リーダーの不在も改めて痛感させられる試合内容だった。

しかし、まだ運が尽きたわけではない。残留争いのライバルが尽く勝点を落としてくれたおかげで、かろうじて残留圏内とは勝点2差をキープできている。得失点差-31というのは重くのしかかってくるが、逆に言うと勝利しか許されないシンプルな状況とも捉えられる。ここまで追い詰められてまだ腹が括れていない人はいないと思う。

俺達の思いはひとつ。残り7試合、魂を込めて戦おう。


One Sou1


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