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【何度目の黒星か】J2 第36節 松本山雅×ザスパクサツ群馬 マッチレビュー

スタメン

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ホームの群馬は直近5試合勝利なし(2分3敗)。前節の山形戦からは4人の変更。後半戦に入ってから出番を増やしている青木がエースの大前と2トップを組む。岩上、久保田は古巣対戦。

対する松本は大胆なメンバーチェンジを敢行。村山智彦・大野佑哉・橋内優也・外山凌・佐藤和弘・平川怜が外れて、圍謙太朗・宮部大己・星キョーワァン・表原玄太・安東輝・小手川宏基が先発に名を連ねている。安東は11試合ぶり、小手川は9試合ぶり、表原は8試合ぶり、圍は7試合ぶりと非常に新鮮なメンバー構成となっている。各々起用された背景は様々だが、悪い流れを断ち切るためにあえて変化を付けているのは間違いない。できることはすべてやる姿勢で直接対決に臨む。


前向きな立ち上がり

僕が見ている限り直近5試合ではベストに近い立ち上がり。3-4-1-2をベースにしながらも5-4-1で守備ブロックを構えるのは前節と同じ。ただ、人が入れ替わっている分だけ、チームとしての動きにも変化があった。特に特徴的だったのは安東と小手川が組んだダブルボランチ。ブロックを組んで構えていると受け身になりがちだが、この日は二人とも積極的に群馬の選手を捕まえに行く姿勢を見せる。狙い所は岩上と中山のボランチで、ロングボールの供給源となっている彼らを早い段階で潰すことで群馬の攻撃を分断することに成功していた。

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伊藤翔が群馬のセンターバックへプレスを掛ける動きと連動する小手川と安東の反応が良かったので、序盤は群馬のビルドアップを引っ掛けてそのままカウンターへ持ち込むシーンも作れていた。勇気を持って飛び出してくるボランチの判断も良かったし、その決断を促していた伊藤のコースを限定するプレッシャーの掛け方もさすが。ボランチに限らず、全体的に前向きなプレーができているかどうかは今季松本のバロメーターになっている部分。受け身の守備よりも主体的な守備のほうが得意な選手を揃えているからと言う理由が大きそう。

追い込まれて奮い立った側面もあるだろうし、この試合への気持ちを見せてくれた立ち上がりだったと思う。


松本の狙いを外すロングボール

ところが、松本の時間帯は長くは続かない。前半20分くらいから徐々に群馬がボールを持つ時間が多くなり、松本は自陣に押し込まれていく。

名波監督や選手は試合後のコメントで、相手のセンターバックに対してプレッシャーを十分に掛けられなくなったと言っていたが、個人的には群馬の変化に対応した結果として生まれた事象だと思っている。

①松本のプレスが弱まる
②群馬の最終ラインに時間とスペースを与えて自由にさせてしまう

こうではなくて、

①群馬が変化をつける
②警戒した松本の足が重くなり、プレスが弱まる
③群馬の最終ラインに時間とスペースを与えて自由にさせてしまう

まず最初に群馬の変化があったという見方をしている。単なる疲れとか、意識の問題だけではない側面に目を向けてみる。

群馬が行った変化は何かというと、松本最終ラインの背後へロングボールを多用したこと。特に狙っていたのは3バックの脇、すなわちウィングバックの背後である。前述の通り、松本は守備ブロックを組みつつも意識は前方に向いており、自分たちから積極的にボールを狩りに行く姿勢で試合に入っていた。人を捕まえに行ったのはウィングバックも同様で、相手のサイドバックとやや内側に入るサイドハーフをマークするために本来のポジションを離れて前に出ていく。逆に群馬はセンターバックからのロングボールで一気にひっくり返そうとしたというわけだ。

ここでキーマンになったのは右センターバックに入った大武。正確なロングフィードを蹴れる彼をフリーにしてしまったことで、右に左にパスが飛んでくる。これを警戒した松本は最終ラインが思い切ってラインを上げられなくなり、間延びした中盤のスペースを気にしたボランチも序盤ほど前に出られない。後方支援がない状態でプレスを掛ければあっさり剥がされるのは目に見えているので、前線も前プレを躊躇するというスパイラルに陥っていく。こうしてパスの出どころである大武を抑えられないまま、裏抜け攻勢に対してなんとか最終ラインが踏ん張るという構図に持ち込まれることに。

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30分までに上記の形で少なくとも3回ロングボールを供給されており、これがPK献上の伏線。あの場面でも、たしかにゴール方向を向いていない青木に対してスライディングに行った星は軽率な対応だったと思うけど、それ以前にやられている形がよろしくない。川崎のジェジエウや横浜FMのチアゴ・マルチンスがいるわけではないので、DFが無理して止めなければいけないシチュエーションを作られている時点で負けだと思ったほうがいい。

とはいえ、群馬の対抗手段が突拍子もないものだったかというとそうでもない。どちらかというと王道中の王道だ。最終ラインを下げさせるためのロングボールを真に受けてしまい、ズルズルと全体のラインを下げて対応してしまったのがナンセンス。序盤のアグレッシブさはどこかに消えてしまった。失点後に選手が円陣を組んでメンタルを立て直し、連続失点を喫しなかったのは成長を感じられた点だが、警戒していた中で先制点を奪われたのは痛かった。


掴みかけた主導権を手放す

後半頭からセルジーニョと野々村鷹人を投入し、流れを引き戻しにかかる松本。この選手交代が当たる。

トップ下に入ったセルジーニョは、ボランチの位置まで下りてきて最終ラインからボールを引き出して捌くタスクに注力。前半はカウンター一辺倒だった松本がボールを握れるようになり、群馬を自陣に押し込んでいく。平川と佐藤がボランチを組む際には、主に彼らが中盤でリズムを作る役割を担っているがこの日は不在。むしろ、ボールに触りたがるセルジーニョが中継地点となることで、チームの潤滑油として機能していたようにも見えた。

群馬としては守備が苦手な大前とボランチの間のスペースに下りてくるセルジーニョは厄介極まりない存在。大前がプレスバックするのかボランチが前に出るのか明確にできない時間帯が続き、前半に松本が大武を潰せなかったのと逆の立場を作り出す。ボールをしっかり握った流れから、常田のヘディングはDFに間一髪クリアされ、表原が放った決定的なシュートも枠の外。決定機を沈められずに時間だけが過ぎていく。

そうこうしていると、群馬が先に修正を施す。青木に代えて守備的なボランチの内田を投入して、システムを岩上をアンカーに据える4-3-3へ変更。セルジーニョと小手川へのマークを明確化して、守備の立て直しを図る。

対する松本は小手川を下げて山口一真をピッチに送り出す。こちらも安東をアンカーに置く3-1-4-2へシステムを変えて、インサイドハーフに河合と山口、2トップをセルジーニョと伊藤が組む。個人的にはこの配置変更は微妙だったかなと思っている。セルジーニョが入ってリズムが生まれていたのは、彼が中盤低い位置で多くボールに触れていたからこそ。2トップを組ませてしまうと物理的な距離ができる分、最終ラインには下りづらくなるし、群馬は中盤センターを厚くしてスペースを消しに来たのでなおさらだ。山口・河合・安東で組んだトライアングルは機動力に優れるが、組み立てという観点では△。列を降りる動きが減ってしまい、群馬のプレスの網に掛かるようになってしまう。せめてセルジーニョと山口の位置関係は逆でも良かったのではないかと思ったり。中央の守りを固められた中で、中央合体を促進するような面々を送り出したのは少し謎だった。

山口とセルジーニョのタスクやポジションが被ってしまって、最適解が見つからないのは今に始まった話ではない。し、多分シーズン終わるまで最適解は見つからない気もしている。どうしても飛び道具を並べてみました、という状況になってしまうのはスカッドとして仕方ないのだけど、ここを解決しないと交代策が当たることはなさそうだなとも思っている。

終盤は田中パウロ淳一を左ワイドに入れてクロス爆撃を仕掛けようとするも、5バックでスペースを消しに来た群馬の前に沈黙。敵地での直接対決を落とし、リーグ戦4連敗となった。


総括

今季何度目かわからないシックスポインターを落とし、得失点差で最下位に転落。まだ残留圏と勝点3差なので絶望的というわけではないが、厳しさが増しているのは間違いない。

こんな状況に追い込まれていて内容に目を向けるのは自分でもどうかと思うのだが、前を向けるのは立ち上がりの積極性くらいしか取り上げるポイントがない。あのアグレッシブさを90分とは言わずとも60分続けられていたらまだ違った試合ができると思うのだが、15分~20分が限界というところか。

それならば20分間で訪れる数少ないチャンスをモノにすればよい。というかモノにするしかない。今季複数得点を奪った試合が8試合しかないように、先に失点して追いかける展開になるとひっくり返すのは至難の業だ。出会い頭のチャンスを決めきって、先行逃げ切り。これが現実的な勝利へのプランになるはずだ。

幸いにも最近セットプレーが合い始めているのはポジティブな材料だ。コーナキックもフリーキックも、速いクロスを入れてニアで合わせる形へ統一されており、常田にはタイミングが合ってきている。

次節は中3日でアウェイ町田戦。ホームでは5失点大敗を喫し、柴田監督解任の引き金になったと思われる相手だ。3試合連続クリーンシート中と決してラクな相手ではないが、失うものはない。松本の魂を見せてくれ。


One Sou1


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