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#104 インボイス登録して課税事業者になりました


2023年10月からスタートするインボイス制度。当初、私はインボイス対応せずに免税事業者のままでいく予定でしたが、諸々検討した結果、2023年9月のギリギリのタイミングでインボイス登録することにしました。
(登録は、2023年8月下旬にe-Taxから申請し、3週間程度で完了しました。)
そうした一連の検討の中で、ポイントになったところを簡単にまとめておきたいと思います。

※本記事は2023年9月時点での最新情報に基づいて書いています。制度に関する最新の情報は、必要に応じて関連機関のWebサイトなどを参照するようにお願いします。


私のプロファイル

まず、参考まで、私のプロファイルをまとめておきます。

・普段は企業に勤務してサラリーマンとして働いています。
・副業で、フリーランスとしてコンサルティング業務(セミナー講師、伴走支援、補助金申請など)を行い、複数の取引先から対価をいただいています。勤務先の企業には副業申請を提出して許可をとっています。
・開業届は出していません。開業届を出していると、本業の会社を辞めたときに失業保険がもらえなくなる可能性があると聞いたことがあるため。

インボイス制度とは

フリーランスの視点で見たインボイス制度を一言で説明すると、「これまで納めなくて良かった消費税を納めることになりそうな制度」ということになるかと思います。
これまでは、前々年の売上高が1000万円以下の場合、「免税事業者」として扱われるため、取引先から受け取った消費税は自分の懐にいれてしまってOKでした。
例えば、20万円でセミナー講師の仕事を請け負った場合、取引先からは 20万円 + 消費税2万円の、合計22万円を受け取っていたはずです。(簡単のため源泉徴収は省きます)
これが、2023年10月からは、受け取った消費税2万円分(※)を、国に対して納める必要が出てきます。
(※ 実際には2万円全額を納める必要はありません。後述。)

課税事業者と免税事業者

インボイス制度をわかりにくくしている理由の一つが、インボイス制度導入以降も、これまでどおり「免税事業者」のままでいるか、それとも「課税事業者」になるかを、自分で選べるところだと思います。
「免税事業者」のままでいる場合、これまでどおり受け取った消費税を国に納める必要はありません。
一方、「課税事業者」の場合、毎年、消費税を申告・納付する必要があります。その際、取引先への請求書には、フリーランス自らが取得した、自分の「インボイス番号」を記入する必要があります。

免税事業者のままでいることのデメリット

…とすると、じゃあ免税事業者のままでいいや、ということになるかもしれませんが、インボイス制度導入以降も免税事業者のままでいることに対するデメリットもあります。
それは、「免税事業者との取引の場合、取引先が、その取引に係わる仕入税額控除を行う事ができない」という点です。

言い換えると、フリーランス側から見た場合、これまで支払われていた消費税分の金額を請求するのは難しくなりそう、ということです。もしくは、消費税分の値引を要求されるかもしれません。
例えば、これまでセミナー代金として20万円+消費税2万円の合計22万円もらえていたものが、2023年10月以降は、消費税無しの20万円のみ、もしくは、セミナー代18万円+消費税1.8万円のように減額されるかもしれません。
一方、インボイス登録して課税事業者になった場合、取引先はこれまでどおり仕入税額控除ができるため、20万円+消費税2万円を支払ってくれるでしょう。

結局いくら消費税を納めないといけないの?

インボイス登録して課税事業者になった場合、取引先から受け取った消費税を国に納めないといけないのですが、その全額を納めるわけではありません。
一般的には、以下の2つの制度を活用して、納める税金を少なくすることになると思います。

(1) 2026年9月までは、受け取った消費税のうち2割納付すればOK → 「2割特例」
今回のインボイス制度の導入を機に課税事業者になった場合、2026年9月までの3年間は、受け取った消費税のうち、2割のみを納めれば良いという軽減措置があります。ほとんどの事業者さんはこの制度を活用するものと思われます。
この制度を使うには事前申請の必要は無く、消費税を納める際に「2割特例を使います」と申告すれば良いようです。

参考: 2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要|国税庁 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/kaisei/202304/01.htm

(2) 2026年10月以降は、受け取った消費税のうち5割(コンサル業の場合)納付すればOK → 「簡易課税制度」
2割特例が終了した後は、「簡易課税」という制度を使うことで、受け取った消費税のうち何割かは、仕入(たとえば、コンサルの場合、業務に必要なPCや本を購入する取引が該当します)の際に支払った消費税と相殺することができ、その分の消費税は納めなくてよいことになっています。
その相殺額を計算するにあたり、業種によりいくらくらい相殺できるかの割合が決まっていて、コンサル業(サービス業)の場合は、50%を納める消費税額から控除できることになっています。
結果、取引先から受け取った消費税のうち、50%の金額だけを国に納めれば良いということになります。

参考: No.6505 簡易課税制度|国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6505.htm

自分が課税事業者になろうと思った理由

(1) ある取引先からの支払額が、インボイスあり・なしで異なることが判明した
私がお仕事をいただいているある取引先から、インボイス制度導入後の報酬支払について、以下の連絡がありました(※)。
・インボイス登録がある場合、これまでどおり報酬金額に消費税分10%を加えた金額を支払う。
・インボイス登録がない場合、消費税分は省いて報酬金額のみを支払う。
(いずれも源泉徴収は別途)

つまり、課税事業者になって2割特例や簡易課税を使用した方が、それぞれ消費税分の8割・5割が私の手元に残るため、私の手取りが増えることになります。
消費税を納税する手間は増えますが、手元に残る金額がそれなりに大きくなりそうなので、課税事業者になることにしました。
(※ こうした対応が一般的かどうかは不明です。インボイス対応の有無にかかわらず、同じ金額を支払うような対応を行う事業者さんもいらっしゃるかと思われます。)

(2) なんとなく「きちんと」しておきたかった
こちらの方が気持ち的に大きい感じもあるのですが、本来納めるべき消費税を納めないままでいるのがなんとなく気持ち悪かった、というのもあります。また、インボイス対応しないことで、取引先に対して迷惑をかけるのもなんか嫌だな、とも感じていました。
この機会に、課税事業者になって、すっきり消費税を納めるのも悪くないかなと思っているところです。

まとめ。

(1) 2023年10月からインボイス制度がスタートします。フリーランスとしては、今後も免税事業者のままでいるか、インボイス登録して課税事業者になるかを選択しなければなりません。

(2) 課税事業者になった場合、取引先から受け取った消費税の何%かを国に対して納めなければなりません。一方、免税事業者のままでいる場合、これまでどおり消費税を納める必要はありませんが、取引先から消費税分の支払減額を求められる可能性が出てきます。

(3) 私の場合、2割特例や簡易課税制度を利用することで、手元に残る金額が多くなることがわかったため、インボイス登録して課税事業者になることにしました。加えて、この機会に課税事業者になることできちんと消費税を納めるのも、気持ち的に悪くないかなと思っています。

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(ここに書かれている内容はいずれも筆者の経験に基づくものではありますが、特定の会社・組織・個人を指しているものではありません。)

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