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自転車をカッコよく撮りたい 前編

前の記事で、自転車の撮り方にはセオリーがあるようだけれど、そこを攻めつつ心を撮れるようにしたいと書きました。


自転車撮影のセオリー



自転車の撮り方のセオリーを誰かから教わったことはないですが、日本と海外の雑誌、あとは有名バイクブランドの広告などを見て想像すると、守らなきゃいけない順に
・正面はあくまで右
・ギアはアウタートップ
・クランクはシートチューブの延長
(海外ブランドはチェーンステーの延長が多い)
・ホイールはバルブが真下、ロゴが真っ直ぐに
(ということはタイヤをはめるときそこを意識しておく必要がある)

これらを頭に置いておいて、まだ疑問があります。
自転車はモデルの撮り方、つまりはポートレートのように撮るほうがいいのか、ブツ撮り、つまりは製品撮影のように撮るほうがいいのか。



カメラに置き換えて考えてみる



ちょっと話は逸れますが大事なことなので、まずカメラの写真を見てください。
詳しくない人のためにいちおう書いておくと、このLEICA Q3は百万円くらいする高級機。Qシリーズの第三世代。
最新テクノロジーを搭載して、ライカの伝統と格式、品質を最高レベルで楽しむことができる、レンズ固定式カメラ。

製品の写真の典型がこれ

間違いはないです。
真正面から必要な情報は全て見えるし、ライカのシンボルである赤い丸がオレンジっぽくなるような色の転がりもありません。
でもこれカメラに対する愛がないし、このカメラをどんな気持ちで見つめているのか、まったく感じられないですよね。百万円にも見えない。
それが感じられるようだと製品写真として問題あるのだけれど。

そこで上の写真はまず撮っておいて、セオリーから離れてカッコいい撮り方にチャレンジするとします。
前機種 LEICA Q2との外観での決定的な違いはチルト液晶なので、そこを強調してみましょう。
「ついにベールを脱いだ LEICA Q3が登場」ならこれ。正面は想像できるし、あちこちで見られるはずだから。特徴的なところを撮るほうがいい。

工夫と個性が見られる

でも個人的にQシリーズの美学が最も凝縮されているのは、カメラ背面のグリップ部分だと思ってます。
普通のカメラはグリップを盛り上げてあります。不格好になるけれど使いやすさのほうが大切だから、その形状や大きさに工夫する。
でもライカは、プラスするのではなくマイナスにすることで持ちやすくするという、ミニマリズムの極地といってもいいデザイン処理をしました。画期的。

そこを強調したいと思います。もっとも美しい部分を凝縮して切り取るのも写真の役割だから。
そこで二枚の写真を見てください。どっちが「正しい撮り方」に見えますか?

クリックすると大きくなります
クリックすると大きくなります


さっきも書いたように今機種からチルト液晶が搭載されたので、上のように撮るのは基本としてアリ。
液晶を少し起こして、そこにグレーの反射を加えて光らせて、構図とライティングによって特徴的なグリップ部分が際立つようにしてあります。
けれどもこの写真はライカの誇りと言っていいGERMANYにピントが合っていません。
そこで液晶を犠牲にして文字とグリップだけで構成したのが下の写真。

どちらが正解でどちらが間違いというのでもないです。この中間もある。
何を伝えたいか、どこを強調したいか、どんな思いを抱いているかで、撮り方は工夫することができるわけです。写真が選択の芸術と言われる所以。




自転車で実践


サイクリングロードの休憩地などにいると、ロードバイクをスマホで撮っている人を多く見るので、みんなライドの記念として愛車のかっこいい姿を撮っておきたいと思うのでしょう。
だとしたらカタログみたいな写真ではなく自分なりの思い入れを撮りたいはず。「ここから見たときがいちばん好きなんだよな」という気持ちが入った写真にしたいのでは。
写真の世界では親より可愛く子どもは撮れない、飼い主よりも可愛くペットは撮れないとされていて、技術を超えて愛情が大切なんですね。

これはうちの四号車。

オークションで買ってイタリアから個人輸入しました。
けっこう汚かったけれど、ディレイラーのビスまで外せるものはすべてバラバラにして、洗浄して組み直しました。おそらくは70年代のビンテージ。

僕の自転車としては唯一カンパでヌーボレコード搭載。
性能では現代のディレイラーと比べ物にならないけれど、金属の質感や無駄とも思える装飾の細かさ、加工は素晴らしい。
ツノが出ていて、ダブルレバーで、チューブラーという、ヴィンテージの基本は抑えてあります。

靴とベルトは同じ色にするとコーディネートが落ち着くというのはファッションの基本で、サドルとバーテープの色は白で揃えました。
赤には緑が映えるから、まずは茂った草木を背景に。
モデル撮影だったら「赤いワンピースが似合ってますね。じゃあ、そこの緑を背負って光が当たっているところに立って、正面を向いてください」的な一枚。

ちなみにこの日の天候は薄い雲がかかった晴れで、午後の早い時間。
ポートレートを撮るのに、最悪とは言わないまでもベストコンディションではないです。



クローズアップから撮り始めるプラン


天気や時間帯によって撮影プランを立てておくのは重要なこと。
必要なカットを撮り忘れたり、時間が足りなくなったり、同じ場所からなかなか移動できない、似た写真ばかりになってしまう、といったミスがなくなります。

まずは日陰で背景がすっきりしたところでヌーボレコードを。

オークションの落札価格に影響するレベルの写真にしたい

せっかくのモデルなのに靴ばかり撮っているみたいで怪しいですが、意外にこういうの忘れがちだから、ウォームアップを兼ねて早いタイミングで撮るほうがいいと思います。
それにしてもこの装飾すごい。スマホじゃなくちゃんとしたカメラで向き合いたいです。敬意を持って接したい。


Xシリーズに搭載されているエテルナ・ブリーチバイパスというトーンで、彩度が低くコントラストが高めな、ちょっと海外のハイブランドっぽい路線を意識しました。



引きから撮るか、寄りから撮るか



これが人物なら、寄りから始めるか、引きから始めるか、かなり重要。
カメラに慣れてなさそうだったら引きから撮って、最初のほうのカットは捨てるつもりで多めにシャッターを切り、リラックスしてきたら距離を詰めるといった駆け引きもあります。
逆に早い時間のほうがメイクの仕上がりがいいことが多いため、カメラに慣れている人なら先に寄りを撮ってしまって、だんだんポーズをつけて、バリエーションを広げていく作戦もあります。

今回は全身から。
人間だと関節の部分で切るのはよくないというセオリーがあって、首はもちろん、手首や肘や膝などで切っちゃうのはよくないです。
自転車も、ここで切ると中途半端に見えるっていう場所があるはず。
たぶんチェーンリングやタイヤを途中で切るのよくないと思うのだけれど、あえて挑戦してみました。

理由は、背景のことを書きたかったから。
アングル(カメラの高さ、視線の位置を決める)にもセオリーがあって、たぶんサドルよりちょっと下だけれどトップチューブよりは上だと思います。
モデルも基本があって、少し上から撮ると目が大きく可愛い感じがするけれど、スタイルはよく見えません。

けれどもそういうセオリーをみんな守っていくと、結局はどれも同じ写真になってしまいます。ばっちりセオリーを守っているけれど可愛く見えない写真があって、逆にセオリーは無視しているけれどその分だけインパクトがあって印象に残る写真があります。
ちょっとずつ挑戦してきたおかげで、セオリーに縛られる必要もなくなりました。見る側も慣れて、成長していくんですね。

自転車もクロモリ、ミニベロ、カーボンエアロで撮り方を変えてもいいような。
アングルを上げると背景がすっきり見えて、「これから走り出していく」感じがして、アングルを下げると「自転車は親密なパートナー」に見える代わりに少しうるさくなります。
ここはこだわりたいですね。



オジサンでも恥ずかしくない決めポーズ


ツイードランの写真を見ると「自転車より私のファッションのこだわりを見て!」という感じがあって楽しいです。こっちから撮って欲しい、このアイテムを見せたい、という意思が伝わってきます。
もしぼくがサイクルイベントで大人数のグループライドをするとか、自転車クラブが結成されて記念写真を撮るとか、そういう機会があったとして、どんなポーズをするのがいいでしょう?

サドルに跨ってしまうと、普通のポジションでは足がつかないからオートバイみたいにはいかないはず。
自転車を前にサドルに手を乗せて、もう一方の手で親指を立てるのが無難でしょうか。足を交差させるのもいいですね。
いつもそれだと個性がなくてつまらないからチャレンジしてみました。
これも研究していきたい。

YouTubeのバナーみたい


長くなったので続きは後編へ。


ローディーの休日 01



サイクルジャージにビブショーツ、ビンディングシューズがローディーのオンだとしたら、オフによく合うアイテムも模索していきたい。

今回のウエアはトップスはグレーのポケT、パンツは切りっぱなしのミリタリーカーゴ。そのままだとラフになり過ぎてしまうので、靴とサングラスにこだわりました。

靴はニューバランスが今ほど人気になる前から、ほとんど伝説を言っていいほど評価が高かった1300。履き心地は抜群。クロモリと相性がいいのでは。
サングラスはペルソール。自転車がイタリア製なので、ここにもイタリア製のアイテムを入れて遊び心を。

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