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デザイン、テクノロジー、伝統

毎日が平坦になりがちなコロナ禍で、つい変化を求めたくなるところだけれど、逆にきちんとしたルーティンをつくることで、小さな喜びを再発見できるのではと、日課にしていることがあります。
南部鉄器の鉄瓶で湯を沸かし、サーモスのボトルにコーヒーを詰めて、イッタラのティーマという深皿でグラノーラを食べる。

南部鉄器はよく知られるように保温性が高く、使い込むと艶がでて、内側に白い膜が張って錆びづらくなり、しかもお湯が柔らかくなります。
使い終わったお湯は残さず捨てて蓋を開けておくだけで、予熱で乾くから手入れいらず。お茶で絞った布巾で拭くと鈍い輝きが出るとか、熱いうちに濡れ布巾で磨いてやるといいとか、硬水を沸かすと早く内側のコーティングができるとか、いろいろあって試してみましたが、とにかく使い続けることが何より。
これはもう伝統工芸の持っている素晴らしさだと思います。じつは機能的で無駄がなく、使っているうちに、さらに長く使える(使いたくなる)ように育ってくれて愛着が増す。
薬缶は、材質を変えてコストを下げたり、奇抜なデザインにしたり、火傷しないように持ち手に工夫したりしてあっても、基本的な機能は進化していないのでは。合羽橋の近くに古道具屋があり、そこで南部鉄器が売られているのを見て、専門店街だからきっと安いだろうと思ったら、新品と変わらぬ値段でした。使い込まれていて、でも手入れは欠かさなかったようで、とても美しかったです。

その鉄瓶で沸かしたお湯でコーヒーを入れ、保温しておくのはサーモスのボトルを選びました。パーティーのビンゴ大会でもらったタイガーのものも保温性は見事で気に入っていますが、それと比べて飲み口が広く香りが感じやすくて、そのわりに冷めないのは、さすが定番商品であり、テクノロジーの恩恵でしょう。
夏の遠足に持っていく冷たい飲み物、冬の釣りに持っていく温かい飲み物、どちらも実際に飲むときはかぎりなく常温に近くなっていました。でもサーモスなら、午後になってもやけどするくらい熱いまま。
大手町にサーモスが運営しているコーヒーショップがあって、マイボトルにコーヒーを入れてくれます。朝が早くて沸かす時間がなかったときや、たまには他の味を楽しみたいとき、空のボトルをかばんに入れて、ここでコーヒーを買うことにしています。気分がいい。

グラノーラを食べていて、メーカーや味を変えても食感が同じだから飽きちゃっていたのが、生のバナナを入れるだけでぐんと美味しくなることに気づき、でもバナナは痛むのが早く、そこで熟したところでスライスして、一回分ずつサランラップに包んで冷凍しておくことにしました。牛乳を入れると少しずつ溶けてシャーベットみたいな食感も楽しめるし、青臭いバナナ→完熟バナナ→腐りかけのバナナ、という負のサイクルも払拭。
これを食べるのにイッタラのティーマという深皿を使っていて、見た目もシンプルで大きさもちょうどよく、感心するのがスプーンの当たり方が皿の角度と喧嘩しないようになっていて、牛乳の最後の一滴まですくえます。洗うときもスポンジで拭きやすいから汚れも残らない。これはデザインの力だと思います。


そんなわけで南部鉄器からは伝統の持っている力を、サーモスからはテクノロジーによる恩恵を、イッタラからはデザインがもたらす利便性を、感じることができます。ささやかだけれど役に立つことって、こういうことかも。

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