詩 : : ねむりぐすりのまえ
わたしにはずっとすきな人がいて
その人はわたしのことをすきではなくて
そのことに たまにかなしくなったりするけれど
わたしはそのひとのことを すきなままでいいと思っている
となりに座るはるくんは ゆきえちゃんとすき同士みたいだけど
あまり一緒にいるところをみない
「別々でいるほうが心地いいんだ。」
と彼はいう
でも 彼女のことを いつもどこかで想っているのはわかる
その「おもい」は はるくんの左側のあたまから
いつもきらきらと 金平糖のようにこぼれ落ちているから
すき はごまかすことができないのだ
すき はイロイロなかたちがあって
一緒にいてもいいし いなくてもいい
相手が生きていてもいいし 生きていなくてもいい
きらい もイロイロある
よくわかんない もイロイロある
そんなイロイロがごちゃまぜになって
脳やこころやからだを
血液と一緒にいっしょうけんめい
日々めぐっている
わたしはきょうも寝る前
すきなひとのことを考える
美術館の体験コーナーで作った
不格好なステンドグラスの置物が
照明を通して 淡く色づいている
「まだそんなことで悩んでいるの?
いろんなイロやかたちがあって当たり前でしょう?」
「でも わたしを生み出してくれて ありがとう」
ステンドグラスはいう
わたしはちょっとだけ泣いて
寝る前のくすりを飲んだ
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