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【歯並び日記⓪】

一度は諦めていた歯列矯正。
しかし、その後もお口のトラブルは続いたのだった。

【2021年夏】
あごがおかしい。パキパキと口を開閉するたびに鳴る左あご。
痛みは地味に強い。8枚切りのトーストでさえ凶器になる。
どうしたっていうんだ、マイ左あご。
かかりつけの歯科医は予約待ち1か月。
いやいやいや!そんなに待っていられないの。
1日3食、痛みと戦う食事時間はもれなくやってくる。
柔らかい食べ物レパートリーにも限界がある。そしていついかなる時も腹は減る。
かけこんだ新規オープンの歯科医では、噛みしめ問題を指摘されマウスピースを作成することになった。その時のエピソードはこちら(『マウスピースは世界を救うかもしれない』)。
だがしかし。残念ながらいっこうに世界は救われなかった。
忘れていたが私は極度のズボラリアン・怠惰怠慢の申し子。
マウスピースの清潔を保つポリデントのひと手間に完全に心を折られてしまった。
そうして、洗面台のミラー収納内で透明のオブジェと化し、今も鎮座している。合掌。

【2021年12月】
にわかに下の前歯がきしみだした。これはいよいよ左右の親知らずが暴れ出しているのでは。
前へ前へと迫りくる圧力を一身に受け、前歯の痛みはさざ波のように大きくなったり小さくなったり。
よくみると歯並びのガタガタ具合に拍車がかかっているではないか。
解説すると、下の前列4本のうち中央左の一本が元々前に倒れていて、その両脇の歯はその背後で触れそうで触れない距離感で小首を傾げあっていた。
それなのに彼らは今や肩を寄せ合っている。彼らが押し合いへし合いすることで痛みが生じているようだった。親知らずの圧力こわい。
しばらく封印していた”歯列矯正”の4文字熟語が私の脳裏をかすめ始めた。

【2022年1月】
ついに決意した。「やりたいならやったら」と夫の賛同も得た。
かかりつけの定期歯科検診にて、その想いを吐露した。
歯科衛生士さんは、穏やかに「以前矯正相談を受けられてますので、お写真撮りからスタートできます」とほほ笑んだ。
私の胸は期待と不安で高鳴っていた。
これから始まる歯列矯正の奥深い世界。
見た目や痛みの悩みを抱えたままうじうじ考えても仕方ない。
思いきって飛び込もう。そしてその分しっかり働こう。
(春から新しい働き方に踏み出すことも歯列矯正のチャレンジには少し関係しているがそれはまた別のお話で)

目標が定まると、心はとても穏やかになった。
湖の水面が澱みなくぽっかりと青空を映している。本当にそんな具合だ。
写真撮影は前回の矯正相談の時に一度経験している。
楽勝だ。そう思っていた。
でもそれは単なる幻想に過ぎなかった。つづく。

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