みみがよろこぶ秋

いつの間にか10月が半分以上、過ぎている。
季節はめぐって、空気はひんやり。秋も深まりつつあるというのに。
私はといえば、安定の猛省続き。

そんな日々の合間に。
今日の夕焼け、なんかきれいだね。
って帰り道に子どもたちとうっとりため息をつくだけでも。
東の空に揺れる赤い星を見つけただけでも、じわっと泣けてくる。
秋は何をしてたって切なくなるから、大好きな季節。
寂しくて、かなしくて。
結局は、うすっぺらい自己嫌悪も季節の移り変わりのせいにしてしまう。

今日、仕事の前にふと入ったローソンで。
金字塔のときの中村一義かしら、という印象の音楽が店内に流れてて。
いや、ホフディランっぽさもある。でも違う。なになに、誰なの。
どうしても、どーうしても気になって。調べて辿り着いた声。
え、どうしよう。どうしよう。ひとめぼれ。ならぬ、ひとみみぼれ。

その名は田中ヤコブ。
(ローソンCSほっとステーションより。今日知ったばかりで彼については何も詳細が分からない。一度聞いたら忘れられない名前と家主というバンドのメンバーであるということ以外は。)

【BIKE】
立ち止まる時もきっと いくつか理由はあるのさ


初めてなのにこんなに懐かしいのはなぜなんだろう?
MVも素敵。旅に出たくなる。
このまま勢いで、続けて検索。


【LOVE SONG】
ギアをニュートラルに

そこからしばし駐車場でむさぼるように聞く。
MVに出てくるツーリングの人々のすれ違いざまのハンズアップ。
とにかく心に染みこむような高音とサウンド。

【THE FOG】
しょうがないのさ、情けなくてもいいよ
だって今も自分がどこに居るのかわからないからね

BIKEとLOVE SONGと比べてお声がまあるく感じる。
ここで時間がきて、ちょっと晴れやかな気持ちで仕事をこなす。
仕事中はまるで小さな宝物をポケットの中にこっそり忍ばせているような気持ちだった。
業務が終了して、帰宅。
満を持してもう一度、かさかさと包み紙を開いてみた。やっぱり、良い。
そうしてやがて、家主に辿り着く。

【家主のテーマ】
早く見つけて、早く見つけて

今日ようやく見つけることができたので、合掌。
そこから当然の流れで。

【お湯の中にナイフ】
変わるために、変わることをやめた

ああ、素敵。空気が澄んで、くっきり届いてくる音。
ローソンで立ち止まってよかった。今日はいい日だった。
知らなかった音楽に触れて、耳がよろこんでいる感じ。
秋の実りを収穫するような。うれしくて、切なくて、あったかい。

だめだめな私でも、こういう日があるから、今日も明日も息ができる。
疾風怒涛の9月も、疲労困憊の10月も。大丈夫。忘れよう。そして深呼吸。

11月もゆるく、これでいいんだって。
おずおずとでいいから。音楽の力を借りて。
耳をよろこばせながら一歩ずつ。秋を歩いていくのだ。

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