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誰にでもわかるパソコン書はあるか

書店業務も9年目に突入しようとしています。9年も書店で働いているとさまざまなお客様と遭遇することがあり、また問い合わせの内容も実にさまざまなことが多いです。

その中でも印象に残ったエピソードを書きたいと思います。

ご年配のお客様がパソコン書について詳しい人はいないかということで、大学院でコンピュータを使った研究(本当は数値計算)をしていた私がご案内することになりました。
その方はガムを噛みながら来られたので(店内は原則飲食禁止です)、少々失礼な方だなと思っていたのですが、話を聞くと最近新しくパソコンを買ったということ。そこでパソコンを使うための操作方法が書かれた本が欲しいと。

パソコンに関する本はたくさんあります。また、当時Windows10になったこともあり売り場にはたくさんの関連本があります。

お客様曰く、「文字の入力の仕方、メールの使い方、写真の整理の仕方、地図の見方、インターネットの仕方、印刷の仕方が載ってればいいから」ということでした。

それならWordやExcelの本ではないと考え、一番初歩的な簡単なパソコン入門書を数冊お勧めしました。その数冊の中から、文字の大きさや画面の写真の大きさ見やすさなどがあると思い、どれがいいか選んでもらうことにしました。

お客様は、「この本が読みやすいかね?」と自分で判断はせずに私に何度も聞いてきました。
「この本がいいなら、もうこれでいいよ」と言われ、(この時も会話はガムを噛みながらなのでクチャクチャ言わせてます)私がそのままレジまで持っていきお会計を済ませて帰られました。

初めて見たお客様だったなと思いながら、わかりやすい本があってよかったなとその時は思ったのですが。

数日後、

突然レジに同じお客様が現れ、この前パソコン書を案内した店員を呼べと。
話を聞くと、「この本は分かりにくいし、同じ画面も出てこない、操作もわからんから本を返品して欲しい」と、おっしゃるのです。

これには私も参りました。確かにWindows10の操作が書いているので間違いないはずなのです。また、入力の仕方などもメモ帳を使うなのでどのパソコンでもほぼ同じ操作方法が書かれているのですが、その方が一人で使うには理解が足りなかったようなのです。

本を選んだあなたが悪いとも言われ色々と文句も言われました。こんなに言われるのは書店業務で初めての経験でした。お客様の期待に応えられなかったと反省しました。

では、今回限り返品いたしますのでということで書籍をお預かりしました。

しかし、本を開いてみると、

しっかり本に書き込みがしてあるじゃありませんか!しかもボールペンと蛍光ペンで書き込みしてある。

ということで書き込みされた書籍はご返品できかねますということで難なく、お客様はお帰りになりました。

そこで考えたのは、どんなお客様にも分かりやすいパソコン入門書はないのではないかということです。
書店に来ていただいて中を見て自分に合った書籍を選んでいただく。それが一番だと思います。

今ではパソコンやスマホを買っても説明書がないからと家電屋さんやショップは書店を案内しているみたいです。ほぼ、100%と言っていいほど、ご年配の人に限らずそのように言ってきています。

本屋に行けば操作方法の本がある

ということらしいです。

本当にそのようにご案内するのはやめて欲しいです。これはパソコン書を担当する書店員のほとんどの人が考えたことがあるのではないでしょうか。

誰にでも分かりやすいパソコン書ができればこのようなことは起きなかったかもしれませんが、これからシニア世代がデジタル機器を使っていくことを考えると、ご年配に向けた商品も必要かもしれません。

子どもプログラミングとも言ってはいるものの、シニアプログラミングの本も今後は増えていくのではないでしょうか。

出版社の方は大変だとは思いますが、今後はシニア世代に向けた商品も出版をして欲しいものです。

誰にもわかるパソコン書はたぶんないのでぜひ店頭で中を確認して、ご購入してくださいね。

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